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なにをみていても当事者性を感じ取ってしまう

2月の下旬〜3月上旬にかけて、映画を見るたびに当事者性を感じてつらくなったり、怒ったり、感情が揺さぶられすぎてしまう時期があった。

2024/02/24

『くれなずめ』を見た。自分にとっては高校の友人を想像しながら見たせいでぼろぼろと泣いた。6人組のうちの一人が死にそれに名残りを惜しみ幽霊としてその一人を存在させる5人の話だったが、5人が均等に6人でいたころやよしおの不在に悲しんでいる感じだった。その時は涙腺がやられたし、いま見てもやられるとは思うが、人間の反射的な反応に思えた。唯一無二性を感じないというか。男同士でいつも一緒にいた一人が死んだらそうなるわな的な(男同士というのは大事だなと思うわけだが)。映画としては、もっと他の5人の内面を描いてほしかった。倍以上時間をかけてもいいので。

2024/02/25

午後は京都シネマで『PERFECT DAYS』を見た。映像や写真の美しさ。主人公が浸ってきたカルチャー。日々の何気ない一瞬にニヤつく姿。ただ評判がよかったせいで、「これはなんでウケるんだ」という気持ちにもなった。これ、十三にあるよ?といいたくなる感覚。美しくなっていないと人はいいと思えないのか。教養がないと、文化度が高くないといいと思えないのか。それで共感した気になってんじゃねえよ、という気持ちになる。そういえば主人公は、出自が金持ちだったことを思い出す。まあ今の生き方を選んでいるということかという気持ちになったので、自分が抱いた感情は筋違いだなと思った。

2024/02/26

友人の起業家と会い、自分にとっての幸せとは何かという真っ直ぐな問いについて話した。自分は常に自分が知らなかった場所に身を置き続けることが重要だと思った。それが苦しくても、視点が拡張される体験が得られること。そういう環境に身を置いているといつのまに、豊かになっている。見方が増えるほど楽しいから。PEAFECT DAYSの主人公もそうだろう。視点を増やしていることで何気ない日々が楽しくなる。ここに豊かさがある。そう考えると、この主人公のように裕福な家庭だったり、自分のようにそういう人と関わったり身を置いてきたりすることも特権的なのかもしれない。

いや、自分は子供の頃からそうだったし、そうでもないか。簡単な話、側溝の蓋を一歩ずつ歩くだけで楽しかったし、野球カードを自分の考える法則性に基づき並べるだけでも楽しかった。あと、視点を増やすことには痛みを伴う。自分の場合は視点を増やそうとしてきた側面もあれど、偶然ここに辿り着いているだけだ。PEAFECT DAYS的な日々の楽しさは誰でもというわけではないが、自閉的であれば満たせる。おそらく耳たぶの少年も、主人公と同列であるのだろう。やはりあの映画のエンパシー感へのもやもやは拭えないが、筋違いで抱いた感情だと思うのでしばらく置いておこう。

2024/03/06

役所浩司が主演の『すばらしき世界』を見た。怒れる出所者が主人公の物語だったが、怒って罪が重くなるシーンがつらくて見ていられなかった。自分でしかないなと思った。これを見ている人は「かわいそう」「こういう立場の人の境遇もわかる自分」みたいな感情を抱いているのかと思うと、余計に自分がかわいそうに思えたり、憤りを感じてしまう。被害妄想だと思うけど、当事者性が高いと見てられないというのは事実で、多数の見方と異なる感じ方をするのは一定自然な反応に思える。PEAFECTDAYSは、結局主人公の出自が裕福だったので、トイレ掃除などに象徴される生活を選び取ったという意味ではあったが、観衆の心境としては通じるものを感じてしまい、連続でこういったぬるい共感みたいなものを勝手に被害妄想的に感じ取り、怒ってしまった。

2024/03/10

子どもと片親の1:1の時間が続く。この状況が自分としてはたまらなく好きだが、片親の弱さが出てるのが関係性の美しさに繋がっていると思う。自分も片親だったからか1:1の時間に自然さを感じるのもある。

2024/03/11

夫が妻に拒否されるところでつらくなってしまった。最近は、自分が愛する人と引き裂かれたり、嫌われたりするところでトラウマレベルにつらくなる。投影というものでもないか。投影というのはその人になりきって考えるニュアンス。自分はその人には成り切ってない。3月に入って見た映画では、自分が社会不適合的なムーブをして嫌われたり、怒ってコントロールを失った結果社会的に処罰されて妻を失うなど、抽象化して理解してつらくなっている。

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その前後も月数本は映画を見ているが、ここまでつらくなってなかったので、なんだっけこの時期?と思った。よく考えたら、2月がけっこうしんどくて、落ち込んでいる時期だった。その時は自分の不調は自覚していたが、映画への反応に表れているとは思わなかった。


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