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視界を曇らせるもの

私は目が悪い。視力が落ちたのは小学5年生の頃のことで、寝転がってナルニア国物語を読み耽っていたことが原因だと考えられている(諸説ある)。
目が悪いので、眼鏡をかけている。吉祥寺のパリミキで買った丸眼鏡である。最近どうも右目の視界が曇るのだが、これには訳がある。

まずは眼鏡の歪みである。無論、眼鏡が歪んでいるといえるのは、顔との関係性に拠るものであるので、歪んでいるのは顔であるとも言えなくはない。人の顔はどれだけ均整のとれたものであったとしても、完全な左右対称ということはない。何にせよ、眼鏡を購入する際には、そうした顔面の凹凸に合わせてフィットするように、つるや鼻あてを調整してくれる。しかし、時間が経つと、鼻あての金具が緩んできたりして、微妙にズレてくる。ズレて、ズリ落ちてくる。そんな訳で、私の眼鏡は右目側がやや顔に近づいているのである。

次に、私はまつげが長い。別に自負している訳ではないし、誰かと比較したこともないから本当のところは分からないのだが、これまで度々言われてきた。2年に一回くらいは誰かに言われる。この2年に一回という頻度が私のまつげの長さを証明するだけの強度のある数字とは思えないが、それくらいしか裏付の手札がない。ともあれ、先に述べた眼鏡の歪みも相まって、どうも右目側のまつげが眼鏡のレンズに触れてしまっているようなのだ。

そして、私は乾燥肌である。冬であれ夏であれ、オイル的なサムシングを全身に塗っている。顔も例外でなく、今は私の乾燥肌を憂いた母親に貰ったホホバオイルを塗ることで、秋めいた風が水分を奪っていくことと闘っている。そうすると、長い(諸説ある)私のまつげにも油分が幾分かつく。こうしてまつげはホホバオイルをまとった絵筆となり、歪んで顔に接近した眼鏡の右レンズを、文字通り「瞬く間に」汚しているのだ。

以上が私の視界を曇らせるものたちである。

無論、視界を曇らせるものはそれだけではない。様々な出来事や情報やら心を惑わすものたちが私を取り巻いている。視界がひらけた感覚になることはそうそうあるものではない。たいていの場合先行きは見えず、逃げ水を追っているようなやるせなさを感じることも少なくない。それでもつかの間、見晴らしがいい場所に立つ時がある。あっちに進んだら良さそうだとか、ここにきて正解だった(あるいは間違いだった)とかが分かる瞬間である。

視界が曇ったら、眼鏡を拭く。眼鏡を直しにいくのもいい。
何が視界を曇らせているのか、点検してみることから始めたい。


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