日_____記
12月の日記祭に向けて、日記をまとめている。
日記と言いつつも、毎日は書いていない。こうして並べてみると、書いていない日付の方が多い。カレンダー上に並べてみたら、途中のビンゴみたいな歯抜けた顔が浮かびあがるだろう。
書いていない日は何もなかったのかというと、そうではない。日によって、書かれていない理由がそれぞれある。行間を読むように、日付と日付の間を眺めていると、それらの日々のことがぼんやりと思い出される。ページとページの間に透明の栞が挟み込まれている。目を凝らして、読み留まってみる。
書かれていない日に思いを馳せることができるのは、当然日記を書いているからだ。図と地の関係のように、それらは切り離すことができない。白と黒。ブランクとブラック。
英語のブランク(blank)は空白とか空隙を意味する言葉だが、語源としては「輝く白」を表すゲルマン系の古語 blanc から来ているらしい。この blanc は「輝く、閃く」という意味の bhel- という語根を有していて、同じ語根を持つ派生語として、炎を意味する flame や blaze があるらしい。
何も無い空白と閃光を放つ炎が同じ語根を持っているというのは面白い。
日常は空白にあふれている。無為な時間、いつか思い出せなくなる瞬間、ふとした感懐。ついさっき体験したことだって、時の流れに漂白されて、手元から零れ落ちていってしまう。全てをその通りに書き留めることはできない。
でも、それでもいい。少し目を閉じてみれば分かる。
日常のブランクは、炎のように光を放って閃いている。
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