おぢさんが「地獄みたいなバイトした」話(天国編)
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・美味しいバイト!!地方ロケ初参戦!!旅行気分でウキウキ!!
・某県、某市はよいところ。一度はおいで
人生残りは散歩みち。寄り道だけが人生さ。
こんにちは散歩者の鉄 修理(くろがね しゅり)です。
バイト、、それはツラく悲しい。。しかし出会いの分だけ、少し楽しい。
今回の人生の寄り道は僕が最近、天国のような場所で体験した地獄のようなバイトの話。先ずは天国編からスタート!!
「花束みたいな恋をした」? No! No! 「天国みたいなバイトした」!?
バイト前日の夜遅く突如その連絡は来た。
「明日、現地前乗りで、明後日稼働できますか?」
詳細は先様にご迷惑が掛かるので控えるが、それは某映画のエキストラという、まぁ、あるっちゃ、ある、たまに誰かから耳にする(ん?でも実際はそれほどやっている人を僕は知らないけど)さして珍しくもないかも知れないバイトだった。但し、僕自身は今まで一度もやったことがない。もちろん、ナメテましたよ。だってエキストラでしょ?
その映画は全国方々でロケを敢行しているらしく、今回は避暑地として名高い某県での撮影とのこと。
今や地方各地にフィルムコミッションも増え、地元を盛り上げる一環としてロケ誘致にどこも積極的だという。
そして多くは地元の人達のボランティアという形でまぁ、ちょっとした記念品程度でエキストラとして参加してもらう事が多いようだ。
如何せん映画は巨額の制作費がかかるのだろうから、抑えられる費用は抑え、掛ける費用に少しでも多く回したいのが本音だろう。
その意味で主にロケ地から地元ボランティアを動員し、エキストラとして起用するのは地元、映画製作者双方にとってWin×Winだ。
今回声掛けしてもらったバイトはそんな映画ロケのエキストラにも拘わらず、なんとギャラが頂ける(!!)というではないか!?しかも、現地への前乗り手当、前泊のホテルが用意され極めつけは往復の新幹線代まで出して貰えるという!! 心は既に旅先にあり、現地に思いを馳せるおぢさんであった。。
え? なにこれ? いいの? 天国みたいなバイトじゃね?
おぢさんはその厚遇ぶりに年甲斐もなくひとり浮かれ、「稼働可能です!!」とふたつ返事で受けたのだった。だって、エキストラでしょ?まぁ、カメラに映るか映らないかの群衆のひとりか、せいぜい地元エキストラの代表としてカメラ映えしそうな誰かが選ばれ「あ、あれは、な?なんだ?(アワワワ、、)」的な地元サービスの一言セリフに回りで狼狽える誰かさんA、とか、そんな程度だろうとたかを括っていたのだ。もちろん、この時僕はまだ、遥か三途の川の向こうから餓鬼やもののけが手首をゆらゆら、地獄に手招きされていることなど知る由もない。
ウキウキ気分で出発進行!!大好きなあの町へ!!
昨年のダイヤモンドプリンセス号が横浜港に停泊し、巨大豪華客船のデッキから「HELP !! 薬をください」という衝撃の報道をテレビで見た頃以来、旅行は一切行っていない。てか、ほぼ通勤すらしていない。Go To トラベルも怖くて使えなかった。そんな気分にならなかったし。
あれからあっという間に1年が過ぎ、不要不急の外出を避け、どこに行くにもマスクをし、外食も控えるというNew Normalがすっかり暮らしに染み付き、「普通」になってしまった。新幹線に乗るのも、地方のホテルに泊まるのもおおよそ1年ぶりだ。
その日は他のエキストラご一行様が都内からマイクロバスで移動してやってくることになっており、某ホテルのロビーで夜一斉集合する段取りになっていた。僕は忘れかけていた「あの時の日常」が戻ってきたようでなんとも言えない嬉しさに満ちて用意もほどほどに、身軽な持ち物で家を出て、埼玉某駅から新幹線に飛び乗った。東京をはじめとする関東南部は数日前から25度になる日も出始め、天気予報では初夏の陽気で汗ばむ日が増えると言っていた。マンションの前の桜はもう6分程咲いており、春が全速力でダッシュしてくる感じだった。もちろん、ロケ地は埼玉よりはだいぶ北に位置しており、抜かりが無いよう携帯で現地の天気をチェックする。今日の天気はくもり。最高気温は22.7度。やはり、某所にも春は全力ダッシュで向かっているらしい。。
その週末から非常事態宣言がちょうど解除になるという。富山に向かう"はくたか"の車内は想像していたよりも遥かに混雑していた。
「みんなどんな用事で乗っているのかなぁ?」ふっとどうでもいい素朴な疑問がアタマをよぎる。が、少なくとも、バイト先に出向くなんて理由で新幹線に乗っている奴はそういるもんじゃない。
目的地の駅には僅か1時間ちょっとで着く。あまりの速さに旅情を味わっている暇もないほどだ。だけど、車窓から見える景色は確実に「それなりに遠くに来ている」感がある。
その場所は歴史のある城下町で賑わいがあるという程ではないけど、町自体の"気"が凛として、とてもよい素敵なところだ。因みに、"街"というより"町"という方がしっくりくる。そんな肩肘を張らない趣がここにはある。僕自身も何度か行き来するうちにとても好きになり、ぶらぶらと散策し、時間を潰すにも困らない程度には勝手を知っている。
少し早めの現地入りとなるから、新幹線がグングンとその駅に向かってゆく僅かな時間に、僕はアタマの中でいろいろと歩くルートを考えていた。
「旅は行く前から始まっている」とは誰が言っていただろうか。
あー、なんという至福のひと時。
もちろん、この時点でも僕の肩越しに悪魔がニヤニヤとした笑顔を浮かべ、天使たちがどんどん天高く、手を振りながら僕を置き去りにしている事などもちろん知る由もない。。
あとさ「旅は行く前が一番楽しい、、」定番はこっちか。
やっぱり、この町、大好きだーー!!
予定時刻ぴったりに"はくたか"はホームに滑り込み、僕はコロナ禍以来はじめて遠出した。なんだかその行動自体がとても懐かしくてね。
某駅の改札を出ると真っ先に目に飛び込んでくるのは、地方の小都市にありがちな"あの景色"だ。ビジネスホテルがいくつも軒を連ね、残念だけど当分は戻ってこないであろう観光客やインバウンドの客を待ちわびているようで何となく悲しげ。
僕は、19時30分の集合場所である某ビジネスホテルの場所を確認しつつ早速、町に繰り出した。いつもは車で来ていたこともあり、改めてゆっくりと町歩きをすると発見があって楽しい。この町は教育県として名高いだけあって、今でも駅前の目抜き通りに風格のある書店がきっちり残っている。
チェーン店の大型書店とは明らかに違う、"昔からある"本屋。入ってみると、古い建物と紙とインクが混ざった不思議と懐かしい匂いがする。心なしか、蛍光灯も若干だけど暗い、、というか、必要以上に明るくないという方が正解かもしれない。制服を着た学生さん達や、小さいこどもを連れたお母さん、リタイアしたらしき品のいい初老のご夫婦(?)らが、思い思いに時間を過ごしている。
この町はまた、近年Iターンや都心へのアクセスが抜群なこともありデュアルライフの場所としても注目されている。
そのせいかどうかわからないが、随分と洒落たCafeや、服のセレクトショップ、Bar等も表通りでチラホラ目に付く。と、いう事はきっと裏通りも素敵なお店が増えているはずだ。一方で、古い町だけあって駅前から1キロも歩くと、なんだか怪しげで入りづらい町中華や、前回いつ売れたのか想像できないような寝具屋(綿の半纏とか売ってるの)、時計と眼鏡、宝石の店等、いい具合に新旧が交じり合っている。
改めて「うん。僕はやっぱりこの街が大好きだーー!!」と心の中で叫んだ。歩いている僕はきっと一人でニヤニヤしていて、周りからは気味の悪いおぢさんだと思われていたに違いない。
天使たちのご加護が無くとも"至福"の時は確実にある。
地獄編につづく
(次回の予告)
美味しすぎる条件で急遽決まったバイト。しかも、それはおぢさんが大好きなあの城下町での地方ロケだった。「え?おぢさんなのにバイトかよ!?」って、そこはツッコまなくていい。人にはいろいろ事情があるのだ。
コロナ禍来の地方移動に心ウキウキのおぢさん。「天国みたいなバイトした」と終わってもいないのにみんなに話して回るつもり満々だった。エキストラ集合時間が迫ったその時、正に地獄の門が少しづづ、確実に開き始めていた。さて、おぢさんの運命は?!
次回「地獄みたいなバイトした」話(地獄編)お楽しみに!!
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