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プライマリーヘルスケアにおける標準予防策と感染予防策に関する看護研修の革新的戦略: 無作為化比較試験

2023年11月の第58回感染管理抄読会で取り上げた論文の紹介です。

論文タイトル
An innovative strategy for nursing training on standard and transmission-based precautions in primary health care: A randomized controlled trial

書誌情報
American Journal of Infection Control
Published:November 15, 2021DOI:https://doi.org/10.1016/j.ajic.2021.10.043

この論文を選択した理由
感染予防のための標準予防策の遵守は不可欠ですが、遵守できていない状況があります。臨床現場でも様々な教育的介入が行われていますが、Webツールを用いた教育介入をしているということで、興味を引かれ、選択しました。

抄録
背景:医療関連感染のリスクを軽減するためには、標準予防策および感染予防策の遵守を向上させる戦略が不可欠である。本研究の目的は、プライマリーヘルスケア環境における看護職員に対する予防策に関する教育戦略の有効性を評価することである。
方法:28のプライマリ・ヘルスケア・ユニットに勤務する看護スタッフ100人を対象に、無作為化非盲検比較試験を実施した。グループは無作為に割り付けられた。介入群にはWebQuestの教育戦略が適用された。これは、参加者が5つの次元で構成された学習課題の開発に参加できるようにデザインされた、ガイド付きの創造的な方法である。対照群には教育は行われなかった。介入群では3時点、対照群では2時点で知識と自己申告によるアドヒアランスを評価した。データ解析は、カテゴリーデータについてはピアソンのカイ二乗またはフィッシャーの正確量を、定量データについてはマン・ホイットニーおよび反復測定分散分析を用いて行った。
結果:リスク評価、手指衛生、マスクの使用と咳エチケットの各項目について、介入後の方が高い知識レベルが確認された(すべてのP値はP<0.05)。自己報告によるアドヒアランスは、介入群(P = 0.008)と対照群(P = 0.005)で増加した。この差は6ヵ月後には減少した。
結論:教育的介入により、標準的予防策および感染予防策の知識と自己申告による遵守率が向上した。

ディスカッション内容
 論文タイトルに「革新的戦略」と書かれていることもあり、WebQuestを使用した教育によって、実際の現場でも活用できるのではないか、と期待してこの論文を選択しましたが、クリティークを進めていく内に、論文の一貫性のなさや真実性に欠ける内容であることがわかってきました。また、ブラジルで行われた研究であり、患者ケアを看護助手が中心に行っているなど、日本とは違った医療的背景があることも知ることができました。論文としても、本来記載が必要である内容がなかったり、文献検討の結果を考察で記載していたりと、書き方が問題であるということもわかりました。
 自分自身にクリティークする力が不足していることを改めて認識しましたが、ディスカッションした内容はたくさんの学びを得ることができました。論文の書き方という点に関しても、学びが多く、非常に勉強になりました。
 
(大学院生:H.T.)


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