ドゥームズデイクロック実況感想⑦『BLIND SPOT~盲点~』
※この記事にはネタバレが含まれます!※
まえがき
前回ドゥムクロを読んでいて、ふと感じたことがある。
単なる違和感なのかもしれないが、唖のヴィランであるマイムの顔が、どこかスーパーマンに似ている気がするのだ。特に前回はそれを強く感じた……。
これは気のせいなのか、はたまた意図的に仕掛けられた何かなのか……
メタヒューマン問題対策局ファイル
『工作員デイビッド・ドレイク:
別名タイフーン』
いやタイフーンお前……って思わずなりましたよ。だってあんだけ俺は違う!!って言ってたタイフーンがまんまエージェントだったんですもの。
しかも対策局のやりかたが子供をダシにしてるの控えめに言ってもクズでは……?
難点を踏まえつつも、なんて書かれてますがむしろよくドレイクはエージェント続けたなってレベルで扱いがひどい。こんなの実質的なスーサイドスクワッドじゃないかっていう。
それにしても、科学者が意図的にメタ遺伝子に干渉して能力を得るパターンが意外と多いように感じる。無論遺伝子が陽性である場合に限るのだろうけど、それにしたって普通に考えれば死の間際にそのまま死んでしまう人間も珍しくはないだろうと思われるのに、なぜこうもメタヒューマンは増えていくのか。
それこそ彼らが新世代の人間そのものとでも言うかのように、彼らの数が対応不可能なほど増していっているようにも感じる。
緑のランタン
さて、衝撃的な対策局のエージェントらの話はひとまず置いておいて、新たな章へと踏み込むとしよう。
画面いっぱいに拡がるのは、緑色に輝くランタン。それはわたしの知識には映画にもなったあのランタンにも感じるが、恐らくそれとは違うのだろう。
というのも、ここで語られている人物の名はアラン・スコット。その年代からして、彼は恐らく初代グリーンランタンだ。そんなランタンに触れる青い蛾がいるが、モノローグで語られる所業を行う人物とどうしても同一視してしまう。やはりというべきか、彼が過去に干渉しているのがとうとう明らかになった。
初代グリーンランタンが存在しない理由。それは、そもそも彼が、アラン・スコットがグリーンランタンとなるきっかけそのものを奪っていたことに起因していた。しかもそれだけではない。恐らくは、その前も、さらにその前も。彼の干渉によって悲劇が、惨劇が起きている。
これが彼のしたかったことなのか?
熱力学的奇跡を目の当たりにし、人類が滅ぶのを止めたはずの彼がしたかったことだとでもいうのか。
だがその可能性は示唆されていた。彼が選んだのは”人類の救済”ではないことは。恐らくだが、彼が選んだのは”人類の観察”なのだ。
ならばこの行為には何の意味がある?
────彼は、なぜ過去を|奪っていく《奪った》のだ────
ランタンを得て、友人を呼び出せると思い込んでいた……何もかも元に戻せると思っていたジョニー・サンダー。
彼は言う。
「これでみんなを守ってやれる!セイユー!」
……快哉を上げる彼だが、彼が守ろうとしている人物らは恐らくすでに……。
そして当然ではあるのだが、ランタンを手にしたところで五次元の妖精は現れない。恐らく原因はそこではないのだ。
そして彼が生き延びていることにも、何かの意味がある。
寂しげに、辛そうに顔をしかめる老人。そんな彼らを、アーチーの目が放つ激しい光が照らしだすのだった。
揺れる世界
世界はいつでも不安定だ。それは、安定は同時に破滅をもたらすことを意味しているからでもあると、わたしは考えている。安定し、止まった原子は凍てつくのみなのだから。
……さて、世界中でメタヒューマンの事件が話題沸騰である。レポーターが記事を読むことを拒絶するシーンはロボコップ3のワンシーンを思わせる。
何がメタヒューマンによるもので、何がメタヒューマンによるものでないのか。あまりにも増えすぎ、管理できていない超常能力者らは、その存在そのものが災厄ではないかという疑惑と不穏を抱え込んでしまったと言ってもいい。
特に、超人理論によって世間から注目されることとなってしまったファイヤーストームはひたすらに付け回されて辟易しているようだ。
今回のタイトルは盲点。果たしてそれは、誰にとっての盲点だというのか。前回のラストはコメディアンがジョーカーからの不意打ちを受けて気絶することとなった。あれこそは盲点だが、まだ気づいていない何かがあることを示しているのだろうか。
案外そのまま、過去から現在へ、今もなおこの世界に干渉し続けている青い彼のことを指しているのかもしれない。何故なら、彼は過去に干渉し現在を同時に見つめつつも、一か月後の自身の未来が見えなくなっているのだから。
アーカムアサイラムから来たサターンガールを名乗る少女を見て呆れかえるオジマンディアス。30世紀から来た人間で相手の心が読めると話した人間のやってきた場所が精神病院ならば、なるほどそう思っても不思議はないだろう。だが彼らは気づいていない。その言葉が本当であることに。
まさにこれもBLIND SPOTだろう。
物語は進む。コメディアンは捕らえられ、電動ドリルで拷問を受ける。だが彼の言うことは最もだ。Dr. マンハッタンの居場所を尋ねられた彼はこう答えた。
「あの野郎がいつどこにいるかなんて、知るわけねえだろ!」
全くもってその通りである。なにせこれに関してはむしろ本人がそれを確定してほしがっているのだから。彼は過去にもいるし、現在にもいる。そして当然未来にも。……一か月後を除いて。一か月後、何が待っているというのか。彼が死ぬのか? それとも全てを知覚する筈の彼が知覚できない何かが起きるとでも?
それにしても酷いジョークだ。たった一人の全裸の狂人が好き勝手動いたばかりに世界は均衡を失い、それを見つける手段はかつて分解されたものを再構築した子猫一匹なのだから。
そして子猫はランタンからエネルギーを吸収する。オジマンディアスはそれをジョンが苦しむ行為だと認識しているようだが、本当にそうなのだろうか。現れたその姿へのバットマンとジョーカーの対応が実に個性的で、かつ彼ららしくて笑ってしまう。
女性がシャワーを浴びていても平気で尋問するバットマンはDr. マンハッタンを最大限警戒し、稀代の狂人ジョーカーはパンツすら履かない目の前の狂人を自分に対して失礼だと言い切る。どちらの反応もごもっともなのだが、ここでは彼らは蚊帳の外に置かれているようだ。ジョンは床を切り裂き彼らをどこかへと連れ去っていく。
どうやら能力が格段に進化している……もとい安定しているようだ。かつて女性一人をテレポートさせた時に吐かせていた彼だが、今は誰一人体調の不安を訴えていない。
ジョンは……Dr. マンハッタンは淡々と語る。もう何度目だ、とでも言うように。実際彼は過去と未来の違いを忘れてしまうほど時間に没頭していたようだ。その行いが過去の改変でなければまだよかろうものを、今のところわたしには彼がダークサイドどころではない最悪の敵にしか見えていない。
彼はあちこちを巡りながら言う。
”彼らの中で最も希望に満ちた存在が向かってきた。希望を失って”
まさか、彼はスーパーマンによって自らが終わらせられるとでも思っているのだろうか……?
だが少なくとも、彼の言葉に該当するのは他に思い浮かばない。知識がないわたしだが、それだけは、最も希望に満ちた存在が誰かぐらいははっきりとわかる。そのスーパーマンが、彼を殺す、終わらせるとでも……?
それは、なんという最悪の日なのだろうか。到底、信じたくもない事柄だが。
彼はまた、別の場面へと飛ぶ。カーバー・コルマン。同時進行していた白黒の映画だ。どうやらジョンはこちらの世界で彼と知り合っている、あるいは知り合うらしい。そこに何の意味がある? 否、彼がやることによる意味は、目的はなんだというのか。さながら世界そのものをボトルに入れて弄ぶ壮大なブレイニアックだ。
残酷な真実という名のジョーク
ロールシャッハ二世────レジー……彼は絶望した。オジマンディアスは癌などではなかった。ではあの影は? 恐らくだが、プレートか何かを仕込んでおいたのだろうか。
彼はオジマンディアスを殺そうとする。
ジョーカーはそれを見て笑い、止めようとするバットマンを痺れさせる。
レジーはアドバイスと語り掛けたジョーカーを殴りつけ、自らの対称形のマスクに赤い笑顔を描いた。
かたやオジマンディアスは、驚くべきことに本気でジョンに世界を救ってもらうつもりでいたらしい。自らの行いで追放しておいて、よくもまあ言えたものだ。しかもその理由が愛情にあると一方的に上から判断して。
彼が真に愛情を理解しているのなら、妊婦への殺害をその命の尊さから止めたと言うのなら、なぜ彼はベトナムであの女性が死ぬのを止めなかったというのか。
オジマンディアスを名乗る裸の王────ヴェイトは、”計画ならもう考えた”と自信満々に語る。特攻野郎Aチームのハンニバルさながらだが、その笑みは実に邪悪なモノに満ちていた。
────全ては終わったのか? 否、これが始まりとも言えるのだろう。役者が揃った、といったところだ。
そしてやはり、一か月後ジョンと対峙するのはスーパーマンだった。彼はそれを境に未来視を失う。そして何も見えなくなると。
”明日が見えない”
そう独白するジョンは、どこか嬉しそうにも、虚無に満ちているようにも、それでいて何かを諦めたように、どことなくわたしはそう感じた。
彼からしたらやはり全てがどうでもいいのだろう。彼の人生は未だ過去にあること。そのことが、彼が転移した先に現れる白黒の写真が物語っている。
彼はスーパーマンが自らを倒すか、それとも自らが世界を破壊するのかと考えている。
そんな究極の二択など、もう選ばせてはいけないのだ。
世界はかつて希望を失った筈である。
ならば為すべきことは、その希望の灯火を再び消さぬことなのだから。
わたしは、スーパーマンを信じている。
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