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貸し借りされるかみさま  『たのかんさぁ』

鹿児島でみた田の神さまの話。田の神様と書いて「たのかんさぁ」と読む。
田の神信仰は日本中にあるけど、こうした像を作ってるのは旧薩摩藩の地域周辺のみ。

18世紀江戸時代の薩摩藩はとても貧乏で、財政危機を脱する為に農民へさらなる稲作を奨励。しかし、当時の農民もまた霧島の噴火ほか自然災害などで不作が続き困窮していた。
そんな中、薩摩藩は田んぼの近くにこの田の神さぁの像を田んぼ近くに建てる事を民衆に勧める(※自然発生説もあり)。財政危機を脱する為に、田の神さぁのお力を借りて米を沢山作ろう!というわけだ。

そんな官主導(?)として生み出された田の神さぁ像は、しかし、見事に農民の心の拠り所になった。
豊作になった田んぼの像は時に盗まれ、自分の田んぼに祀るなんてことも。だから、豊作になる田の神さぁ像は引っ張りだこになる。

この田の神さぁ像を盗むことを『オットイ田の神』と言って、不作だったり新しい田んぼを作った農民は、人気の像を盗んで自分の処に置く。盗まれた方は怒って取り返したりはせず返してもらうのを待つのだそう。

なぜなら、3年したら盛大にお礼して像を返すことになっており、盗まれた方も盛大に像をお迎えすることで丸く収まるというのだ。そんな一連の流れがワンセットの風習がかつてはこの地にあった。 「最近はコンクリートで固めて動かなくさせるところもありますけど」と地元の人。

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このオットイ、最初は盗むとか物騒だなとか思っていたけど、今では何か良いなと心に残ってる。

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