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第3回 SAPの3大知識

「SAPって難しい!」そう感じたことはありませんか? 書籍『世界一わかりやすいSAPの教科書 入門編』はそんな皆様のご要望にお応えしたベストセラーです。本連載では全4回にわたって、書籍の内容をちょっとだけご紹介いたします。第3回は『第1章 SAPってなに?』から第3節「SAPを理解するために必要な3つの知識」を公開します。
※一部情報は2021年執筆時点のものです


第1章 SAPってなに?

※第1章 第1節「SAPとは」および第2節「SAP ERPが世界中で使われている理由」は前回記事をご覧ください

1-3 SAPを理解するために必要な3つの知識

SAP 3大知識

SAPを理解するためには、次の3つの知識が必要です。

  • 会社業務の知識

  • SAPの知識

  • ITの知識

必要な知識① 会社業務の知識

SAPは、グローバルスタンダードなERPシステムです。そのため、SAP導入プロジェクトはSAPに業務を合わせるための業務改革(Business Process Reengineering:BPR)プロジェクトでもあります。
それゆえ、業務改革を提案するためには、会社業務について詳しく知っておく必要があります。

会社業務は、みなさんのクライアントの業務ではなく、「世間一般的な顧客業務(あるべきの業務の姿)」のことです。特に日本企業は、カイゼン活動により、それぞれの会社ごとに、企業固有の業務になっていることが珍しくありません。そのため、SAP(グローバルスタンダード)と会社固有の業務にGapがあり、この差を埋めるためには「To-Be(あるべき姿)の業務」を知っておく必要があります。

会社業務には、会計や調達、生産、販売、物流などがあります。「そんな幅広い知識をつけられない!」というのが、SAPに関わったことのある人の本音だと思います。
でも大丈夫です! 本書では、みなさんがイメージしやすい宅配ピザ屋を例に、会社業務とSAPの関係について、この後に詳しくお話していきます。

必要な知識② SAPの知識

SAPを理解するには、もちろんSAPの知識が必要です。SAPの知識とは何かというとSAPの標準機能のことです。
SAPはERPパッケージシステムなので、パッケージとして標準で機能が備わっています。そのため、お客様の業務がSAPの標準機能で実現できるか、はたまた機能追加のために個別で開発しなければいけないのかを判断する必要があります。

SAPは世界一のERPと言われるだけあって、数多くの便利機能が標準で備わっています。しかし、これらの便利な機能も知らなければ、追加で開発をしましょう、という残念な提案しかできません。
また、SAPプロジェクトではお客様にSAPの使い方をトレーニングする必要があります。お客様にとって、みなさんはSAPの先生です。SAPの先生に「SAP ってどうやって動かすの?」と聞いても、回答がしどろもどろになっていたら信頼されませんよね。

SAPの知識は、

  • お客様の業務をSAPの標準機能で実行できるかを判別するため

  • ユーザートレーニングをするため

に必要なのです。

SAPの知識をつけるには、SAPの実機を多く触り、多種多様なプロジェクトに参画することが一番です。自動車の運転と同じで、机上で勉強するよりも、自動車に乗って路上を走りながら覚えるのが一番です。多種多様な道路・天候で自動車を運転することにより、自動車に標準で備わっている機能を自然と使えるようになります。
SAPも自動車運転と同様で、SAPの知識をつけるには、実践が一番効果的なのです。

必要な知識③ ITの知識

3つ目がITの知識です。ITの知識には、どういうものがあるかというと、

  • プログラミング

  • データベース

  • ネットワーク

  • ハードウェア

などなど、ITに必要な知識はアプリからインフラまで、多岐にわたります。

SAPコンサルやSAPエンジニアにとって、会社業務やSAPの知識は絶対に身につけないと仕事にならないという意識がある人は多いですが、実はこのITの知識が一番ないがしろにされがちな知識です。
なぜ、ITの知識が必要なのか。具体的には、次のようなケースでITの知識が必要とされます。

  • トラブルシューティングをするために、どういうロジックで、この機能が動いているのか確認する(プログラミングの知識)

  • パフォーマンスが悪いが、どこがボトル ネックになっているのか判別する(プログラミング、データベース、ハードウェアの知識)

  • SAPと周辺システムのデータ連携をしたいが、どのようにインターフェースを設けるか検討する(プログラミング、ネットワーク、ハードウェアの知識)

  • バックアップやメンテナンスのために、どれくらいのシステム停止時間が許容できるか検討する(データベース、ハードウェアの知識)

SAPは、ITシステムです。そのため、ITの知識がなければ、ロジックがバラバラな要件定義になったり、インフラを無視した無茶な設計になったりします。
SAPコンサルやSAPエンジニアにとって、会社業務やSAPの知識が最優先になりがちですが、ITシステムを導入するプロジェクトを進めていくためには、最低限のITの知識は必要不可欠です。
それでは次の章から、SAPの解説に加え、みなさんがイメージしやすいように会社業務を街の宅配ピザ屋の仕事に置き換えて、「SAP+会社業務」の話をしていきます。

SAPのコンセプトを理解するとともに、どのような会社業務で使われるのかも意識しながら読み進めてみてください。

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書籍目次

第1章 SAPってなに?
1-1 SAPとは
1-2 SAP ERPが世界中で使われている理由
1-3 SAPを理解するために必要な3つの知識
Column SAPコンサルあるある
第2章 会社の業務を知ろう!
2-1 宅配ピザ屋の設定
2-2 宅配ピザ屋の業務内容
2-3 宅配ピザ屋の業務の流れ
Column SAPとスポーツ
Column SAPコンサルが取るべき資格
第3章 SAPモジュールってなに?
3-1 SAPモジュール一覧
第4章 材料の仕入れとモノの管理をしよう
ー MM(調達・在庫管理)
4-1 MM(調達・在庫管理)モジュールの業務
4-2 MM(調達・在庫管理)モジュールで使う組織
4-3 MM(調達・在庫管理)モジュールで使うマスタ
Column ABAPのプログラミングスクールがほしい
第5章 ピザを作ろう ー PP(生産計画・管理)
5-1 PP(生産計画・管理)モジュールの業務
5-2 PP(生産計画・管理)モジュールで使う組織
5-3 PP(生産計画・管理)モジュールで使うマスタ
Column SAPと英語
第6章 ピザの注文受付とピザの配達をしよう
ー SD(販売管理)
6-1 SD(販売管理)モジュールの業務
6-2 SD(販売管理)モジュールで使う組織
6-3 SD(販売管理)モジュールで使うマスタ
Column SAPコンサルとリモートワーク
第7章 店舗のお金を管理しよう ー FI(財務会計)
7-1 FI(財務会計)モジュールの業務
7-2 FI(財務会計)モジュールで使う組織
7-3 FI(財務会計)モジュールで使うマスタ
Column SAPコンサルとTwitter
Column SAPとRPA
第8章 店舗の経営状況を分析しよう ー CO(管理会計)
8-1 CO(管理会計)モジュールの業務
8-2 CO(管理会計)モジュールで使う組織
8-3 CO(管理会計)モジュールで使うマスタ
Column SAP Basisの仕事
Column SAPフリーランス
第9章 モジュール間の業務のつながり
9-1 モジュール間のつながり
9-2 MM(調達・在庫管理) ⇔ SD(販売管理)
9-3 MM(調達・在庫管理) ⇔ PP(生産計画・管理)
9-4 MM(調達・在庫管理) ⇒ FI(財務会計)
9-5 MM(調達・在庫管理) ⇒ CO(管理会計)
9-6 PP(生産計画・管理) ⇔ SD(販売管理)
9-7 PP(生産計画・管理) ⇒ CO(管理会計)
9-8 SD(販売管理) ⇒ FI(財務会計)
9-9 SD(販売管理) ⇒ CO(管理会計)
9-10 FI(財務会計) ⇒ CO(管理会計)
Column SAPのオフショア開発
Column 優秀な人ほど転職しよう
Column SAPの便利機能
Column PMOのお仕事
第10章 SAP導入のポイント
10-1 SAP導入プロジェクトは業務改革プロジェクト
10-2 SAP標準機能とアドオン機能を使い分ける
10-3 周辺システムと連携することも考えよう
Column SAPコンサル vs 社内SE
どっちのほうがスキルが伸びる?
第11章 SAP導入プロジェクト
11-1 SAP導入プロジェクトのフェーズ概要
11-2 企画・構想
11-3 要件定義
11-4 設計と開発
11-5 テスト
11-6 移行
11-7 トレーニング
11-8 運用保守
第12章 SAPのこれからの展望
12-1 2027年まで
12-2 2027年から① 今後増えてくるデジタル案件
12-3 2027年から② SAP社の周辺システム
12-4 2027年から③ ユーザー企業のデジタル化推進
12-5 2027年から④ SAPコンサル・SAPエンジニアの
ポジション取り

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