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きんからきん日記 6/28から7/5


大学の帰りに神田で乗り換え、吉祥寺で降りる。今週はまた一段と湿度が高く、けっこう嫌な気持ちのする暑さだから、身体に熱がこもって変な汗をかく。黒い文字で吉祥寺駅、と書かれた高架のある交差点で信号を待っていると、七階建てのユニクロから太い冷気が町中へ漏れ出ていた。この時間の吉祥寺は、歩いている人がほとんど笑っているように見える。

改札へ向かう途中、バス通り前で何かを配っている自分と同じ歳くらいの女の人がいた。その人は少し恥ずかしそうに声高に何かの宣伝をしながら、透明なフィルムに包装された小物を時々配ろうとしていた、声を出したり手を差し出したりしているけれど、できれば誰の耳にも入ってほしくないし、もらってほしくないという感じの存在の仕方で、歩道の角に立っていた。そのせいで彼女の気配は駅前の記号的な雑踏の中で、やたらと目立つようなのだった。

近所に暮らすキジバトが、玄関のそばの砂利の上へ羽を広げて休んでいた。体全体にくまなく日光を当てることで、虫や細菌が付くのを予防しているのだという。こちらの視線に気がつくと、立ち上がって木陰の下へ歩いていった。このハトはよく家の前の電線にとまっている。日が沈むと、裏手の山のどこかで眠っているのだと思う。

真鶴出版に置いたままの荷物を引き取りに行き、週末に書店へ発送する新刊『海のまちに暮らす』にサインを書いた。今回の本には、サインと一緒に何か絵を描くことにした。この絵はあるものを指し示すために描いたものなのだが、線がゆるいので、完成をみると一体何を表しているのかよくわからなくなってしまった。でも丸みがあって個人的には気に入っている。実際に本を手に取った人に確認してもらえたらうれしい。

眠りが浅いせいなのか、最近は目が覚めても夢の内容を覚えている。昨日はハリネズミが行列をつくって建設予定地の草むらを奥のほうへ進んでいくのを、アパートのベランダから見下ろしている夢だった。






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