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そして兄になる

はじめてのおつかい 夏の大冒険スペシャル!
http://www.ntv.co.jp/otsukai/
2014年7月21日(月) 19時00分~21時54分
『ハンバーグ』 長崎県・長崎市

・慶くん 4歳2か月
・幸くん 2歳10か月

異国情緒あふれる長崎は坂の多い街。おつかいに行くのは、いとこ同士の慶くんと幸くん。やんちゃ盛りの2人がハンバーグを作るために合い挽き肉1キロを買いに行くことに。リンゴも3つ頼まれました。家の前の長い階段を下りていく2人。仲良く歩いて行きます。まず八百屋さんでリンゴ、なぜか1個だけ買いました。次はお肉屋さん「ハンバーグちょうだい」って出てきたのは成形されたハンバーグのタネ。こちらも1個だけ買いました。「ただいま~」と帰ってきたふたりの荷物を見てびっくりしたのはお母さん。もう一度行かせることにします。次も八百屋さんから、今度はリンゴを3個買いました。次はいよいよ合い挽き肉。「ハンバーグ2つ下さい!」またまた成形されたハンバーグ。今度は2個。帰ってきたふたりにお母さんは・・・!

通行人Aが見た“昨日の自分”

何度行っても“合い挽き肉”ではなく“ハンバーグのたね”を買ってきてしまう慶くんと幸くん。次こそは、と3回目の買い物に出掛けた二人。またまた「あいびきちゃん1kg」の一言が出て来ず、結局家族分のハンバーグのたねが自宅に揃うことになる。それでもいい、おつかいに行って帰ってくるだけで立派なのだから。この回のメインクエスチョンは「果たして慶くんは兄になれるのか」ということ。
懲りずにハンバーグのたねを購入した彼らは、精肉店のお母さんからご褒美のアメをもらう。代表して慶くんがアメを受け取り、店を後にする。帰路、慶くんがアメを落としてしまう。地面に転がったのは赤色とピンク色のアメ。地面にアメが転がったことで二人の関心は“どちらがどっちのアメを手にするか”に変わる。咄嗟に赤色を取った慶くん。ここで喧嘩勃発。二人が赤色のアメを奪い合うのには理由があった。当時二人が夢中だった『魔法戦隊マジレンジャー』の主人公は“マジレッド”だからだ。

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そこに親子連れ(長男・母・次男)が歩いてきて、最後方を歩いていた少年が二人の喧嘩を一瞥する。

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この少年(通行人A)の視線に感動してしまった。慶くん幸くんよりはいくつか年上(推定小学校低学年)の少年の眼差しが、まるでかつての自分を見ているかのように感じられたのだ。こういうのをやられると弱い。仕込みでない偶然の通行人だが、さりげないエキストラの視線にウルってきてしまう。まだ遠くない過去にあの少年も(このとき先頭を歩いていた)兄とこういった喧嘩のひとつでもしたのだろう。この“まだ遠くない過去”というのが重要で、成人男性が彼らの喧嘩を一瞥しても問題が遠すぎる。彼らにとって人生最大の争点である“赤色かピンク色のアメをどっちが手にするか問題”から遠いのだ。


反復による差異

アメの取り合いシーンでもうひとつ。
この喧嘩シーン前後に配置された“手を繋ぐ”同ショットの反復に舌を巻いた。今日幾度となく幸くんの我が儘を受け入れては譲ってきた慶くん。押しボタン式信号だって譲ってやったが、マジレッド色のアメだけはどうしても譲れない。そんな慶くんがもうひとつ大人に、兄になる。同ショットなのに少し違った意味になる。何気なく見ていた「はじめてのおつかい」の中で、こういった映画的な繋ぎ・反復と差異が見られたので驚いた。

1. 喧嘩前
“買い物袋”→“繋ぐ手”(チルトアップ)
買い物シーンの直後、次はふたりの問題が発生することを予知させるように繋ぐ手に視点を誘導する。

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2. 喧嘩後
“繋ぐ手”→買い物袋(チルトダウン)
ふたりの問題が解決して、次は買い物袋を提げて無事に家まで帰ることができるのかという問題へ視点を誘導する。

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