組織が拡大することによって起きる居心地の悪さの要因

往々にして急拡大をするスタートアップ企業にとって、組織が大きくなることで生まれる課題にどう対処していくかは重要なテーマではないだろうか。特に初期に入った人は環境の変化に戸惑うことがあるかもしれない。先日の飲み会でとある初期入社の社員がこんなことを言っていた。「最近昔に比べて居心地の悪さを感じることがありますね」。社員の数が増えていくと組織は細分化され、仕事の役割が明確になったり、意志決定のために他部門との入念な調整が必要になったり、異なる価値観や熱量の人が入り混じる(理念/ビジョンには共感している前提)ため、初期のスタートアップ期に比べると良くも悪くも環境は変わっていくものだろう。彼が感じている居心地の悪さというのも、この環境の変化がもたらしているもので、その要因を考えてみた。

1つは、組織化が進んだことによる他部門とのコミュニケーション不足によるもの。コミュニケーションが不足すると、他部門の仕事への理解が弱くなり、チーム(会社全体を指す)として仕事をしている実感が薄くなっていく。20~30人規模くらいまでであれば、お互いの仕事の様子が常に見えているため、分からないことがあっても対面で直接コミュニケーションを取ることができる。全員が同じベクトルを向いていると感じやすい環境なので、自身のモチベーションも上がる。目には見えない大きな熱量の塊が一丸となって巨大な敵に果敢に挑んでいるイメージだろうか。手を抜いている訳では決してないのだが、他人の仕事が見えなくなっていることが原因だ。この問題を解決するために、ランチ補助や部活動など社内コミュニケーション機会の制度設計をしていくべきなのだろう。

2つ目は、業務が細分化されるから。サービス開始当初はとにかく人が足りない。伸びるか分からないサービスに人件費を投資することもできない。そのため、1人が開発をやり、マーケティングをやり、カスタマーサポートをやり、何役もこなす必要があった。とにかく目の前の事業の成功のために出来ることはなんでもやるという熱量が必要だ。しかし、ある程度事業が成長して軌道に乗ると、開発は開発、マーケティングはマーケティング専属のチームができ、さらにそのチーム内でも仕事が細分化されていく。事業の成長は組織としてはこれ以上ない喜びだし、役割が明確になっていくことはとても理にかなっているのだけれど、1人が行なっている仕事が会社にもたらす影響度が見えづらくなっていくのも事実だ。このフェーズになってくると、これまで以上に上司は部下へなぜこの仕事をお願いするのか、WHYの部分を丁寧に伝え納得してもらう必要がある。

3つ目は、意志決定に時間がかかるから。組織階層が増えていくと大きな施策レベルの意志決定をしようと思うと、他部門のマネージャー陣や経営メンバーの決裁を取る必要が出てくる。影響を及ぼす人の数が圧倒的に増えるのだ。スタートアップ期であれば、ユーザー数も少ないため多少問題が起きたとしても誰か1人が付きっきりで対応すれば解決できる場合がほとんどだったりする。しかし、ユーザー数が数十倍になり物理的に1人の力ではどうしようもなくなると、組織の力で問題を解決せざるを得なくなる。こうなると各チームのマネージャーだけが把握しているだけでなく、メンバーにまで施策の内容を落とし込む必要があるため、その分実行スピードが落ちる。マネージャー陣や経営メンバーの決裁を取るために、なぜやるのか、なぜ今なのか、どうやるのか、を簡潔にまとめて共有する「調整業務」が増えていく。

他にもたくさんあるのだけど、これらの要因の積み重ねが環境の変化を感じさせているのだろう。会社のフェーズによって働き方も変わっていく。良い悪いという話ではなく、どちらの働き方が好きかという話なのだと思う。一人が何役もこなす働き方をするのであれば、スタートアップで働くのが向いているし、大きな組織を動かして社会に大きな影響を与えることにやりがいを感じるのであれば、今のようなフェーズや成長期にある会社で働くことが向いている。スタートアップ期でなくとも限りなく前者のような働き方に近い働き方をするのであれば、新規事業を立ち上げたり、子会社を作ったりするやり方もある。渋谷の緑の会社などはその仕組みが上手く回っているなぁと外から見ている限りでは思う。とまあ殴り書きのような感じになってしまったが、最近ふと感じたことをまとめてみた。

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