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元塾講師が語る、塾のお仕事

この仕事を始める前は某大手塾の教室運営を未熟ながら担っていました。

「塾の先生は授業以外に何してるのか?」

この仕事を始める前、私自身疑問を抱いていたことを、今回は私の塾講師の経験を元に、大体の年間の仕事の流れをまとめていきます。


社員が気にしていること

学校と違い、塾は教育と言えどもビジネス。お金を稼げなくては教室が潰れてしまいます。

ですから、年中気にしている数値は主に「売り上げ、在籍数、合格実績」の3つです。

売り上げ

一番は売り上げで、シンプルに黒字になっているかどうかです。ここで「赤字にならない限りは閉校しないのでは?」と考える方も多いと思いますが、黒字でも閉校するケースはあります。

ここ最近は講師不足による閉校もあるそうですが、他には会社の方針が変わったり、別事業や別教室にお金をかけたい場合、特に大きくて主要な駅周辺の教室が古くなっていて、予算をそっちに回してリノベーションしたい!とか、目に見えないところでお金が動いているわけですね。

真の理由は経営者のみ知るところですが、しっかり売り上げを上げて、利益を出していたとしても、納得のいかない形で閉校するケースもあるようで、熱意のある先生ほど、そこから独立して個人塾立ち上げたりします。

在籍数

売上に大きく影響するのは在籍数や講座数なので、営業電話や学校の前でチラシ配りなども行いますし、講習前に保護者と面談をして、追加の講座を提案したり、営業的なことは割とします。(それが嫌でやめる人も多い)

もう少し細かい話をすると、在籍数が多いから良い!というわけでもありません。例えば、在籍の半数以上が受験生(小6・中3・高3)の場合を考えてみましょう。

受験が終わればその大半は辞めていきますから、翌年の在籍数が一気に激減して売り上げが大きく下がってしまいます。なので、受験学年を辞めさせず、そのまま進級させなさい!と上からは口酸っぱく言われてます。

親からすれば、そんなこと知ったことではありませんし、学校を卒業して新しい学校に入学するのだから環境も変わります。とりあえずは辞めて様子をみよう!となるのが普通です。

そんな会社と保護者に板挟みされながら、なんとか数字のバランスを取っていくことが教室長の一番のお仕事と言っても、過言ではありません。

合格実績

最も重要な数値は、成績や合格実績でしょう。数値そのものが最大の広告になりますし、次年度の生徒の在籍数に影響したり、さらには社員の社内評価の指標にもなります。

教室ごとに「〇〇学校に〇〇人」と言った具合に目標数値も課せられたりします。この目標数値があると、やはりプレッシャーになりますが、ないと教室が衰退してしまうこともあります。良い意味でプレッシャーになっていれば問題ありませんが、これが精神的なストレスとなり辞めてしまう方も多いようです。

また、取り憑かれたように「合格実績主義」の教室運営をすると、親が引きます。「うちの子がビジネスに利用されようとしている!?」と感じて、良い気がする親はいません。

合格実績はさも当然!のような顔をしつつ「うちの教室は生徒を第一に考える生徒ファーストな塾です」と、ビジネスと教育の良いバランスを取っていくことも、腕の見せ所ですね。

塾講師の年間の流れ

これらを背景に、年間の業務の流れは以下の通りです。

4月 1年の振り返り

学校では新学期がスタートだが、塾業界は受験を終え、一区切りつく時期でもある。この1年の会社の社内評価もあって給与が決まったりします。この辺りで人事異動の発表があって、バタバタ引き継ぎしたり送別会したり。

5月 GW(年末年始)転勤

そしてゴールデンウィークはこの業界の言わば年末年始。1年の中で最もゆっくりできる時期なので旅行に行ったり帰省したりします。GW明けから異動、歓迎会があったり。比較的落ち着いた期間になります。

6月 定期テスト対策

学校説明会や夏に向けた保護者セミナーなど、少しずつ夏期講習に向けて準備を進めていく。中1は初めての定期テスト対策とかある。新しい学生講師の育成もやったりします。

7月 夏期講習の準備

夏期講習に向けて集客、過去の問い合わせの営業電話、通っている塾生の定期面談(ここで夏期講習の案内と講座提案もします)などなど、ほぼ夏期講習に向けた動きになる。この辺りから忙しくなってくる。

8月 夏期講習

ほぼ毎日朝から晩まで授業。お盆休みが唯一の休息。そこからまたほぼ授業。途中、夏の合宿イベントもあったり。授業の合間で講習生に9月以降も継続するかの面談したり。とにかく忙しい1ヶ月があります。

あとは受験生の成績管理。必要であれば生徒面談などなど。夏期講習期間は学校みたいに生徒が一日中教室にいるので問題も起こりやすいので、急なトラブル対応とかもあります。教室管理も普段より気をはって行うので基本的に息ができない。

9月 上半期の振り返り

この辺りで4月と比べて塾生がどれだけ増えていて、塾を辞める生徒がどのくらい出るかで忙しさが変わる。上半期の数値が良ければ息してる。悪いと上司から呼び出し会議。教室運営の見直しから冬に向けて集客だの営業だので息が詰まります。

10月 受験指導本格化

受験生がメインに本格的に受験に向かって動きだす。教室の雰囲気作りも大切。非受験学年にも意識づけさせつつ、来年のことも考えていたり。進路面談もこの辺りから本格スタート。3者面談したりする。

11月 冬期講習の準備

冬期講習に向けて集客、過去の問い合わせの営業電話、夏期講習に比べて受験生に費やす時間が多いので忙しい。推薦入試が始まって面接の練習とかしたり。

ほぼ受験生でかかりっきりになるが、ここで非受験生を疎かにすると来年痛い目を見ることになる。この時期に退塾者が多いと息が止まって、さらに肺の空気取られるみたいな状態になります。

12月 冬期講習

冬期講習と言っても2週間程度。しかしこの2週間が夏期講習以上にハードなのである。夏期講習の業務にプラスして受験業務が追加され、それを2週間で終える必要がある。年末年始も授業があったり。朝から夜まで休みはほぼなし。

1月 大学受験、小学生の進級準備

大学受験がスタートする。中学受験も地域によってはスタートする。大学受験が終わった高校3年生に「来年からうちでバイトしない?」と勧誘したり?小学生の非受験生の学年が2月で切り替わるので教材渡したり時間割作ったりと準備もある。

2月 中学受験、高校受験、中高生の進級準備、春期講習の準備

中学受験がスタートする。地域によっては高校受験もスタートする。一年間で最も忙しい時期である。受験結果の集計(これが大変)や受験後の進級面談(継続して続けましょうといった話)がある。

また、非受験の小学生が進級して、新学年としてカリキュラムがスタートする。生徒の入れ替わりが激しく、管理不足でトラブルになることも。3月からは中高生が進級するのでその準備もする。さらに、春期講習の準備もする必要がある。営業はほぼできない。

3月 春期講習

地域によっては高校受験がスタートする。4月の新学期に向けた進級業務と受験の諸々を片付けて、翌年の準備に入る。受験生の退塾で大幅に在籍が減った場合は、春期講習もゆっくりはしていられない。

まとめ

といった具合です。なんとなく一年間の流れはイメージ出来たでしょうか?上記の流れをもとに、1日のスケジュールが組まれていきます。

何もない平日の授業前は常時発生する業務(清掃したり教材整理したりお問い合わせ対応したり)を行います。1月〜3月の負担をなるべく集中させないように、早めに準備したり、業務を分散させるようにしてバランスをとります。

授業だけやっている訳ではなく、営業的なことや管理業務も行っているので、その辺りは普通のサラリーマンと同じ能力が求められると思います。

もちろん、塾によっては「全然違う!」というところもあると思いますので、あくまで参考程度に^^

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