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手書きESは企業の多様性を映す鏡?!『最高の集い方』に見るほんものの多様性の話

話題の新刊、『最高の集い方』を読みました。TEDでも話題のスピーカー、プリヤ・パーカー氏の著書であり、翻訳は多くのベストセラービジネス書を担当なさっているHLABでもお世話になっている関美和さん。発売以降気になっていたこの本をやっと読むことができました。

タイトルどおり、「人が集う」ノウハウや考え方を詰め込んだ本。帯には「"神イベント"への道」なんて煽り文句もあるくらいです。誕生日会からフェス、会議にまで使える、読み応えのある本です。

人が集う、ということで言えば、先日のポストでも私自身がそれをテーマに寮を分析していますし、何より私自身が熱を込めて取り組んでいるプロジェクトである「世界中から高校生と大学生が集まる」HLAB自体が、集いの場です。そのため、これまで考えたことない観点から自己分析するよい機会になりました。ちょっと今日はその一端をご紹介。キーワードは、「多様性」です。

猫も杓子も「多様性」っていうけど、あなたのそれはホントに多様性?

「多様性」。もはやバズワードで、企業や組織がこぞって「多様性」だとか「ダイバーシティ」が大事と主張します。もう、耳にタコができちゃうくらい、言い張ります。

HLABも、言ってます。企業のタグラインが、"where diversity meets learning"(「多様性と学びの交差点」)です。このフレーズは、2011年の創業以来から3年目に、改めて自分たちの提供している価値が何か?ということを議論した際に生まれたフレーズで、それ以降とても大事に使ってきているものです。でも、ここでいうdiversity(多様性)って、本当に多様なんですか?というのが今日の問です。

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弊社のサマースクールを例に挙げて、この問を掘り下げてみましょう。とある年のHLABのサマースクールに参加する学生の内訳は、だいたい以下の通りです。

A. 高校生:240名
B. 国内大学生:約120名
C. 海外大学生:約60名

高校生は大半が日本国内の高校からの参加ではありますが、海外の高校からも一部参加者がいますし、首都圏や地方の高校からも、国公立私立もばらばらなど、本当に多様です。海外大学も世界各国(珍しいところだと、マルタやガーナなど)から学生が日本に集います。日本国内の大学に通う学生のみんなも、北から南まで様々な大学から参加してサマースクールを創り上げてくれています。むちゃくちゃ多様に聞こえます。

でも考えてみてください。本当に多様でしょうか?この高校生や大学生は、(定員の関係上)選考をくぐり抜けてきた人たちです。ということは、これって本質的にはフィルタリングを伴っているために多様ではないのでは?という疑問が生まれてきます。

極論を言ってしまえば、日本中の高校生や大学生をランダムにサンプリングしたら非常にバックグラウンドも多様な学生が集まるはずです。なぜこうしないのか?はたまた、多様性を大事にする!という企業や組織たちが、会社の採用にランダムサンプリングを採用しないのはなぜか?と疑問が湧いてきませんか?

その答えは、私達は、無意識のうちに「多様性」に暗黙の共通項を見出しているからです。それが、実は「排除」なんです。

多様性とは排除することでもある

ここでやっと、今回の『最高の集い方』の本をご紹介。本の中で、「賢く排除すれば多様性が生まれる」という章があります。ここでは、神イベントとなるために、言い換えると意義ある対話や熱量が生まれるイベントとするためは、集団において適切な排除が必要だ、ということが述べられています。印象的な一文が、ここです。

雑多な人々のなかに多様性を埋もれさせず、むしろ違いを際立たせ、多様性を活かす手法にほかならない。(『最高の集い方』p.64)

ここでは、高齢者と大学生アーティストの共同生活コミュニティや、異なる人種間の対話の機会など、様々なケースが紹介されています。いずれも、適切に排除した結果うまくいったケースです。(例えば、高齢者と学生に限定する、アーティストに限定する、など)

例えば、HLABのサマースクールに大学生と高校生だけでなく小学生もいれたらどうなるか?これは多様性の過大解釈で、意義ある多様性とは言えない、と今の私は考えています。ちょっと年上のお兄さんお姉さんと高校生が交流することで、進路について考えたり、自分の大事にしたいことを考えたりする機会を共に活かして成長できる場を創りたい、と考えているからです。

また、「学びたい」という意欲が強い学生の皆さんを選考で選ばせていただくことも、大事なプロセスです。その後、出身や通う学校も違う多様な学生同士が交流し、同じ「高校生」あるいは「大学生」という共通項を持ちながら異なる経験や考え方をする人たちでお互い学び合う(ピア・メンターシップ)ことを目指しています。

選考課題は組織の目指す多様性を映す鏡

今回この本を読んだ上で改めて言語化をしたいことがあります。集団や組織、企業における目指したい「意義ある多様性」を創り出すためには、適切な排除、いうなれば「選考」が求められます。この「選考」を実施するための選考課題やプロセス、選考基準は、まさに組織が目指す多様性を映した鏡だ、ということです。

手書きエントリーシート(ES)を新卒希望者に課する企業は、例えば「これだけ理不尽なこと言われてでも言うことを聞く従順な社員で組織を創り上げたい」とか「手書きという本質的に付加価値が低いことに時間を使う人たちで組織を創りたい」というメッセージに聞こえないこともありません。真意はわかりませんが(笑)(※適切な理由がある企業があるのも知っています笑)

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「最高の集い」、企業の場合は「最強の組織」をつくるための入り口でもあるこれらの選考課題やプロセスは、企業が学生を見抜くという側面があると同時に、学生からすれば組織側の多様性に関する考え方や理念を見抜く側面もある、ということを忘れてはいけないですね。人事担当者の方がこのブログを見ることはほぼないと思いますが、人事の方にもおすすめの本です。

また、ハーバード大学が学生の人種の多様性を確保するためののアファーマティブ・アクション(特定人種などを積極的に採用するなどの是正措置)について、訴訟が起きていたことが記憶に新しいですね。(下記参照)結果、大学側の措置は適正である、という判断となりましたが、ハーバードが考える多様性は、そのようにして創られている、ということです。

さて、皆さんの組織や何かの集まりでの「多様性」で目指したいものって、なんでしょうか?

読んで面白かったら、是非サポートしていただけると嬉しいです!大学生との食べ語り代にします笑