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集わせるも集わせないも、デザイン次第、というアメリカの寮の話

引き続き、米国からのお届けです。HLABは、現在Residential Collegeと称して、都内に共に学び合い共に成長しあえる環境を来年オープンに向けて尽力しています。我々はこれまでのネットワークを活用しながら、世界中の寮事情を常にアップデートしています。HLABの創りたい「学び」の根幹とも言える「人」。その中で、今日は、逆に「人を集わせない」仕掛けを目にしてきたので、お届けします。

学生運動の反省から、大学が人を集わせないようにした!?

ご存知ない方も多いかもしれませんが、実はアメリカでも学生運動が活発だった時代がありました。それが1960年代です。特に後半の活動が激しく、全米の名門大学を中心に学長部屋占拠など、日本に匹敵する学生運動が繰り広げられました。この時期は実は全世界的に学生運動が激しかった時期なんですよね。参考リンクです:

今回の米国訪問で訪れたBrown大学とHarvard大学には、学生運動直後の70年代前半に建設された学生寮が存在します。大学側が正式に建築デザイン思想を述べてはいないものの、いずれの寮でも「あ、これは当局サイドが学生が集わないように設計したのかな?」と思う設計が目立ちました。さらに、実際にそのように設計された、という噂も学生の間でHarvard、Brown共に飛び交っているくらいです(笑)

実際、ウェブにもいくつか、その寮に関する噂が書いてあります。例えばHarvardの寮のWikipediaには...

Canaday's construction immediately followed the 1969 student takeover of University Hall, and certain features of its design were meant to confound student organizing.
「Canaday寮の建設は、1969年のUniversity Hallの学生による占拠の直後だったため、デザインの特徴は学生の組織的な活動を阻止することを意図していた」 ※粗訳

BrownのGraduate Centerという寮でも、サイトで正式に大学が否定してはいますが...

Rumors circulate that the lack of common space and convoluted spatial interior of the towers was intended as a form of riot-proofing, though the University nor the firm has never officially acknowledged this suspicion.
「コモンスペースの欠如や、寮のタワー内の複雑な空間が暴動を阻止する意図で造られた、という噂が広がってしまっています。大学やデザイン事務所は決してこの疑惑を公式に認めたことがないにも関わらず、です。」※粗訳

まぁ、こんな噂があるくらいです。(認めてない、というだけで本当かどうかわからない書き方をしているところがずるいですね笑)

人を集わせない仕掛けポイントを4つ見つけた。

具体的に、私が実際に寮を目にして感じた「人を集わせない仕掛け」は以下の通りです。

1.  長い直線通路を減らし、たくさんの短い通路によって見通しを悪くする
2.  コモンスペース(共用リビング等)を地下に配置し、「いちいち」移動が必要な導線上に配置する
3. やたらと扉をつくる
4. 建物自体が冷たい印象(ブルータリズム的建築)

上記の引用にもあるHarvardのCanaday寮は、下の写真の通り、まず、全体の構造が横にしたクエスチョンマークのような少々複雑な形になっています。

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BrownのGraduate Centerに至っては、もう上からみるとすごいです。スパイラル。全部で4棟あります。なかは迷ってしまいそうです(笑)

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(いずれも、公式サイト/公式facebookから画像を引用)

これによって、長い通路を極力減らし、見通しを悪くすることで学生同士がそもそも出会わないようにすること、そして閉塞感も強いために狭い廊下でたむろしないようにする、というデザインの意図を感じます。いや、あくまで噂ですけどね。

両者のコモンスペースが地下にあるなど、人に会える場所が自室に向かうための導線上に存在しないこともポイントです。偶然誰かと出会う、という確率がガッと下がります。(※あくまで噂)加えて、そこに向かうまでに、扉も何回か開閉せねばならず、面倒くさいと共に見通しも悪いそうです。

冷たい印象を与えるブルターリズム的な建築スタイルも影響しているのではないでしょうか。(これは相当な主観が入っていますが。)建築業界の当時の流行もあった、と思いますが、コンクリート打ちっぱなしなどを多用するブルータリズムにより、くつろぐ場というよりは、なんとなく堅苦しく閉塞な場、冷たい場、として住人に対して与える印象がきつくなっている、ということも、デザインの力を感じざるを得ません。

と、人が集うソフト面の仕掛け(以下のリンク、前回のポストをご覧ください)と、人が集わない今回のハード面の仕掛け、両方を目にすることができたのは非常に勉強になりました。また、今回のような寮に関する学びを、今後もnoteにまとめていきたいと思っています!スキが増えるときっとがんばります。


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