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Part 1:Fintechはどのような歴史を辿ってきたのか

日本一便利な法人向けオンラインバンクを目指すFinswer Bank(フィンサーバンク)を作っている、株式会社Finswer COOの田口です。

今回は、今日のFintechが人類の歴史の中でどういう位置付けにあるかを見ていきます。

Fintechのイメージ

Fintechという単語を耳にした時、皆さんはどういうイメージを持つでしょうか?
例えば経済産業省の「キャッシュレス関連用語集 」(2019年6月)では、Fintechを次のように定義しています。

金融(Finance:ファイナンス)と技術(Technology:テクノロジー)を組み合わせた言葉で新しい金融サービスが生まれる動きのこと。
【加えて】 Fintech によって生み出されたサービスには、スマートフォンを使った決済や送金サービス、銀行口座やクレジットカードをまとめて管理できるサービスなどがあり、キャッシュレス社会を後押しするものも登場している。

出典:経済産業省, キャッシュレス関連用語集,https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/cashless/image_pdf_movie/cashless_glossary_R1_06.pdf

言わずもがなかもしれませんが、Fintechという文字面からも明らかなように、金融(Finance)と技術(Technology)の掛け合わせがFintechです。

それでは、Fintechによって実現できることといえば何を思い浮かべますか?日常生活で身近なキャッシュレス決済を想起する方も多いのではないでしょうか?
Google Trendを見ても、Fintechという単語の人気が2015年あたりから増加していることがわかります。2015年前後は、政府におけるFintech関連の議論が集中して開始しており、かつ LINEPAYがサービス開始するなどした時期です。

2004年以降の「フィンテック」に関するGoogle Trendの状況

しかし、金融(Finance)と技術(Technology)の関係の繋がりは、そんなに歴史が浅く、範囲が狭いものなのでしょうか?
歴史を紐解いてみると、金融はその誕生から技術の進化と共にあったことがわかります。つまり、Fintechという言葉が民主化するずっと前から、Fintechは存在していたと考えています。

金融と技術の関係の歴史は文字の起源にも遡る

紀元前3200年ごろに発明されたとされる楔形文字。
メソポタミア文明でシュメール人により発明された、人類最初の文字と言われています。

出典:Wikipedia, 楔形文字, https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A5%94%E5%BD%A2%E6%96%87%E5%AD%97

実はこの楔形文字の原型は「会計」にあると言われています。

当時のシュメール人たちは、大規模な灌漑農業を開始していました(高校の世界史ですね…)。これにより大麦や小麦の生産量が伸び、家畜の生産なども始まります。
すると、誰がどれだけ穀物などを生産したかを管理する必要が出てきます。

そこで利用されたのが、粘土の塊でできたトークンだったと言われています。
トークンは1つ1つが異なる生産品を表現しています。細長いトークンは麦、平たいトークンはパン、といった具合です。1つのトークンは1つの数量を意味しており、まとまった個数になればエンべロップ(封筒)に入れられて、エンべロップの表面に個数や内容を刻印することで管理していました。

後ろの円形のものがエンべロップ。手前がトークン。
出典:The Pennsylvania State University, Mathematical Treasure: Mesopotamian Accounting Tokens,https://maa.org/press/periodicals/convergence/mathematical-treasure-mesopotamian-accounting-tokens

ところが、扱う生産品の種類や量が増えるにつれて、トークンで全てを管理することが困難になります。そこでシュメール人は、トークンの形を模した模様である楔形文字を、粘土板に記すようになった、と言われているのです。

5000年以上も前の人々が、金融を発展させるために文字という最新の情報技術を生み出したと考えると、これこそFintechの起源だとも言えるのではないでしょうか?

Fintech 1.0 ~ 3.0とは

時代を大きく遡りすぎました。何が言いたかったかというと、金融と情報技術は一体不可分の関係を持って発展してきたということです。そして金融とは、情報をどのように扱うのかということが本質にあるようにも思います。
(イーロン・マスクもこんなことを言っています)

「カネは情報システムの一種だ」とマスクは説明する。「ほとんどの人は、カネそのものに力があると思っている。だが実のところ、カネはただの情報システムだ。カネがあれば物々交換の必要がなくなるし、貸付や株式などのかたちで時間を超えて価値を交換できる」

出典:ジミー・ソニ. 創始者たち──イーロン・マスク、ピーター・ティールと世界一のリスクテイカーたちの薄氷の伝説 (Japanese Edition) (p. 481). ダイヤモンド社. Kindle Edition.

さて、ここからは時代を一気に駆け上がり、現代のFintechがいかに形成されてきたかの流れを見てみようと思います(※)。

Fintech 1.0 (1866年〜1967年)〜アナログからデジタルの時代〜

この段階は、デジタル化によって金融のグローバリゼーションのインフラが構築されてきた時代です。最初の大西洋横断ケーブルの敷設(1866年)やアメリカ合衆国内の電子決済ネットワークであるFedwire(1918年)などが、モールス信号による電信を利用した資金移動を可能としました。それまで資金のやり取りは現金や金(Gold)の直接的な受け渡しが必要だったところ、デジタルな情報のやり取りが可能となった時代です。
このほか1950年代にはクレジットカードが登場するなどして、消費者が決済のために現金を利用する負担を軽減するためのインフラもできつつありました。

Fintech2.0(1967年〜2008年)〜伝統的な金融業務のデジタルシフト〜

この時代は、1967年にバークレイズによって世界で初めてのATMがロンドンに設置されたことに端を発する、伝統的な銀行業務のデジタル化に象徴されます。

世界初のATMでお金を引き出す俳優のReg Varney
出典:Media storehouse, Memory Lane Photo Prints and Wall Art, https://www.mediastorehouse.com/memory-lane-prints/mirror/1000to1099-01018/worlds-first-atm-cash-machine-unveiled-barclays-21766073.html

1971年には世界初の電子株式市場であるNASDAQが登場したほか、1973年にはクロスボーダー取引を行うためのネットワークシステムであるSWIFTが誕生しました。そのほか、1980年代にはオンラインバンキングシステムが世界に広まった時代でもあります(ちなみに銀行の勘定系システムのオンライン化は、1965年に三井銀行(現:三井住友銀行)が世界で初めて導入しています)。

Fintech3.0(2008年〜)〜Fintechベンチャーの勃興と金融サービスの民主化〜

2008年の金融危機(リーマンショック)を受けた各国での規制改革や、広まりつつあったスマートフォンの普及(初代iphoneの発表は2007年)などにより、昨今耳にするようなFintechベンチャーが勃興し始めた時代です。また、2009年にはビットコインが登場しました。

(※)この章の内容は、以下を参考にしています。
Arner, Douglas W. and Barberis, Janos Nathan and Buckley, Ross P., The Evolution of Fintech: A New Post-Crisis Paradigm? (October 1, 2015). University of Hong Kong Faculty of Law Research Paper No. 2015/047, UNSW Law Research Paper No. 2016-62, Available at SSRN: https://ssrn.com/abstract=2676553 or http://dx.doi.org/10.2139/ssrn.2676553

まとめ

今回は、今日に至るまでのFintechの歴史を見てきました。長くなりましたがポイントは、金融とはお金の受け渡し(金銭の融通)であり、その本質は、太古の昔から情報のやりとりや記録、保管であるということです
それゆえ、金融はITとの親和性が非常に高い分野なのです。

次の記事では、現在のFintech、つまり上記の分類におけるFintech3.0が、どのように発展してきているかを深掘りをしていきたいと思います。


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