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6月第4週:久しぶりのいつもどおり

  やらなくてはいけないタスクは終わったが、やった方がいいタスクは大量に残っている。私がやっているしがないIT屋の仕事はこういうことが多い。

  時刻は18時15分、定時を15分超えている。ここ最近のこの時刻は「やった方がいいタスク」をどれほどやっていくかを決める時間になっている。だが、この日の私は何も迷わずにパソコンの電源を落とした。

  鞄に荷物をまとめると「お疲れ様です」と軽く上司と同僚に挨拶し、競歩でも始めそうな勢いの速歩きでオフィスを出た。地下鉄で新宿三丁目まで行き歌舞伎町方面へと向かう。

  歌舞伎町の中心街を歩く。キャバ嬢、ホスト、スカウト、謎の外国人。多種多様な人間がこの街にはいるが、どことなくみんな他人に期待していない雰囲気がある。私はこの街のそんな雰囲気を気に入っている。なぜこの街の人間は他人に期待していない雰囲気があるのか、考えたい気もするし考えたくない気もする。   

  目的の場所は歌舞伎町の中心街から脇道に少し入った雑居ビルの地下にある。薄暗い階段を降りて店内に入るとkitchen&barいのせんと。の店主は「おうぃ〜す」といつもどおりの調子で言った。



小説ならこの後、店主が「面白い話があるんだ」と話を始めて、私が「それは面白そうだね。ちょっと調べてみるよ」などと返して、調べ始めたら何かの事件につながっていく……みたいな展開になりそうだけど、そうはならねえっす。これはこの前の水曜日の私の行動を書いただけっす。

この後はいのせんと。で美味いご飯をモリモリと食べて、顔馴染みの常連とくだらないバカ話をいつもどおりやって、居合わせた友人と近所のコンセプトカフェに出向き、そこでもくだらない話をグダグダとして帰りました。(友人に「今度コンカフェ奢るよ」と言われてたので、お言葉に甘えました。その節はありがとうございました。) 

緊急事態宣言が明けて、いのせんと。が店内営業を再開した。まだマンボウなんちゃら?があるので営業時間は20時まで。そのため仕事を早めに切りあげて出張った。

コロナ前まではいのせんと。で仕事終わりに、こんな夜を「いつもどおりの夜」といった具合でやっていた。久しぶりの「いつもどおり」はやっぱりいつもどおりなんだけど、でもだからこそ楽しくて。

この辺りの感情を上手く言語化できないんだけど、「何でもない日常が幸せだと気づいた」とか「失って初めて大切さに気付く」とかJPOPの歌詞みたいなことは言いたくはないんだよな。

斜に構えてんじゃねえよ!ってツッコミが入りそうなのでこの辺りで失礼。


◆今週の一曲
MILABO
ずっと真夜中でいいのに。

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