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倒され、のこぎりで切られた木

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【詩】
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#LGBTQ

【俳詩】アヲアラシ・初メテノ

     ✫ 俳句に詞書をそえました ✫ ――――――――――――――――――――――――――――――――――      青あらし情事始めに晒す腋 消えた手花火踏んづけて 裂かれた火薬に蘇生無理 昨夜のゴミはだれかの手紙 人目みたいにゴミだらけ 文字も書かずに爪先で 何をしたいかバレバレで ひょんな晴れ間に ハジメテみたい照れ笑い 経験ごとにハジメテ領域 なくなって 何をあげよう、何くれる? Tシャツ脱いで shower 浴びない流儀かい? (驚かないふり、ボクの流儀)

【詩】菖蒲咲く、黄色いハンマーとして

水ぐるま 烈しく水に回されて 烈しく水を蹴り返す 夢中に蹴れば いつしか 宙にあくがれ 水上0センチメートルでも そこは空 菖蒲 黄色いのが咲いた朝 一輪だけ迷い出た 水の激しさ 岩々に 崩され尽くした彼方には 紫紺に群れる 天の河の形象 あの宙はかんけいないさ 一歩一歩 その予感を踏み固める どこまで行っても一人 この径は それなのに 明日 会う 壊せるものなら壊してみろよ 挑発は ぼくのシルエットばかりが 巨大に映る姿見 明日 会う 明日と会う カーブを曲がる気楽さ

【詩】ロールシャッハに梢は萌え

ロールシャッハに梢は萌え 空に序楽の羽ばたきを     ❅   ❅   ❅   ❅ 指させば かならず 示したかった的から 数センチ逸れてしまう 指の先 青春の特権さ 紺色の寝台車は 蔦の葉末のそよぐ 白い駅に 泊まるから ブレザーと ネクタイと ワイシャツは いい相性で 生れた街から そういえば 遠くへ離れたことのない 十六歳のからだには 一方通行の抜け道は あってもいい ワイヤレスイヤホンが フレデリック・マーキュリーの 扉を立て付けるのは 片方ずつ の、 彼と彼

【詩】時計と花

ほんとうの時計の針を 見たことがあるかい そう訊かれて女は 水面にうかぶ花びらのように 男の影を眼球の端から端へと ゆるやかに流した この男に厭きない為に いつのまにか自身にほどこしていた 装飾だった ほんとうの時計の針は 左回りに回っているのさ ぼくたちには決して 追いつけないスピードでね そいつらが走り去る時 落して行った物を拾うため 針の影は 右回りに回っている ———それで今夜の貴方は わたくしになにを下さるの——— ぼくたちは、だから一度だって ほんとうの