マガジンのカバー画像

倒され、のこぎりで切られた木

32
【詩】
運営しているクリエイター

2022年2月の記事一覧

【詩】ぱりんの日

国道246号線 高架沿いのアスファルト 狭い郵便局と看板のはげたケーキ屋の間 ちいさな窪み 道の傷 アスファルト色の雨が溜まる 冬の朝、ついに氷になる この地区ではめずらしいけど 氷だよ。 急ぎ足のみなさん、氷ですね。 自分の靴の裏側を、とっくり見る人なんていないよね。 靴の裏っていうのは、むしゃくしゃさせる物の影を 踏むためにあるのだし。 氷かな? 氷ですか? キミ、氷? 男の子が立ち止まる 氷だと確かめたくて割ってみる  今年さいしょでさいごの氷 惜しげもなく、ぱり

【詩】春から、夏から、秋から、手紙

そのひとは旅を愛する人でした 白詰草色の風が吹いたら笑顔で見送ります 旅立つ時は、町外れのいつもの切株です そのひとは独りを愛する人でした 僕のとなりでさえ石造りの壁になる時 僕は気づかないふりしか出来ませんでした そのひとは思いやりの深い人でした 晩餐会の招待状にきみだけは行けと言いました ボクといるより仕合せになれるだろうと 城門の鉄柵は氷より冷たいけど 光り溢れる晩餐会にはもどりません 雪の上の足跡は弧を描いて城門へもどります その人の手紙は 桜やわらかな4月の