マガジンのカバー画像

古代の芝生をパレードする孔雀

9
【短編小説】
運営しているクリエイター

2022年5月の記事一覧

【ショートショート】デブエット

「月って、時々サボってる」 夜空を仰ぐミノルの言葉を、おれは半分聞き流していた。 「今夜は三日月なのに、昨日と同じ細さだもん。太るのをサボってるんだ」 じゃあ、お前と逆じゃないか。 つい意地の悪いことを言いたくなる。 先月始めると言ったダイエットはどうなった、脂肪の貯金箱。 「毎晩月を見てるけど時々そうなんだ」 おまけにお月サマが好きなロマンティストと来たものだ。 「ねえ、ちゃんと見て」 「ハイハイ」 仕方なしに空を見れば、細い月。だが昨夜の月と何が違うかなんて