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『割り箸』/400字エッセイ
カードキー忘れて水を買いに出て僕は世界に閉じ込められる/木下龍也
些細な出来事なのに、その人にとっては一大事という現象は多々ある。
昼食に弁当を頼んでいるのだが、いつものように食べようとしたら割り箸がない。弁当屋が弁当と共に持ってきて、ストックして置いておくコーナーがあるのだが、その日は0本。コンビニ派かマイ弁当派の誰かが使ったのだろう。
さあ、困った。自分の鞄にはない。流しに誰かのマイ箸でもあれば、洗って返そうかとも考えたが一膳もない。手で食べるわけにもいかず、弁当があって割り箸がないシチュエーションがこれほど悲惨なものだとは思いもしなかった。
事の顛末がどうなったかというと、いつかのイベントで使った割り箸のあまりが一膳、奇跡的に見つかった。割り箸を探して行ったり来たり。こんなこと誰にも言えず、あちこちの扉を開けている様は、周りから見たらさぞ滑稽だっただろう。
以来私は、鞄に割り箸を常備している。
(400字)
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