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課題図書『チーズはどこへ消えた?』~6月読書会後記~

2022年6月19日、毎月恒例のオンライン読書会が開催された。今回は課題図書設定型。課題図書は『チーズはどこへ消えた?』である。

今回は訳あって参加メンバーの意見を紹介したあと、最後に私の持論を綴ってまとめたい。前回(『ブルシット・ジョブの謎』)のように議論の様子をそのまま記述するのではなく、筆者自身の主観強め。理由は後述します。

以下、参加者の感想です。

参加者A
(読んだ感想として)まずは、どうリアクションすれば良いかわからないが…。チーズは「フロンティア」の意味と受け取った。この本にあるチーズを探すというのは、炭鉱を掘り当てるイメージに近い。そうなると、チーズを作り出す視点というのが欠けているのではないか。チーズがどこかにあるのだという考え方だけでなく、自分でチーズを作り上げる発想も必要。

参加者B
ビジネス書、自己啓発の本なので、こういう感じの本もあって良いんじゃないかな。人生で今どうするべきか迷っている人がこれを読んだとき、背中を押してくれる本だと思う。私自身変化は大事だと思っていて、身の回りの通信環境をいろいろと変えていったり、読書会の他にも趣味のサークルに顔を出したりして人間関係を拡げていったりしている。社会人もそうだが、とりわけ中高生などの若い人にも読んでもらいたい本。

参加者C
みんな読んだ方が良い本じゃないかと思う。営業をやっている立場としては、チーズは「顧客」かなと。この本に出てくるチーズの喩えは考え方として使い易いので、これだけ売れているのだと思う。ただ、変化することは良いことばかりなのかな、というところはちょっと気になる。

参加者D
自分は本書後半のディスカッションにおいて、「変化を恐れている人」が一人しかいなかったところが印象に残っている。みんな変化をしないといけないことは頭ではわかっているし、恐れてもいないつもりだが、実際は変化できていないとの指摘はその通りだと思う。それだけ変化をするのは難しいこと。変化をするためには、成功体験などが必要かもしれない。私も若い人が読むべき本だと思った。

参加者E
この本の物語の部分で、壁に格言のようなものを書き付ける描写は、正直しんどいというか要らないと思った。あとは、自分にとってのチーズが見えている人でないと、この本の内容は響かないと思った。チーズは人生の目標だったり、成功だったりするのだろうが、それが何なのかがわからないままでは…。変化することそのものが良いことなのは間違いない。ただ、変化がすべて良いことだとも思えず、変化至上主義では資本主義の良いカモになってしまうと思う。新しいものを次々出していかねばならない資本主義社会において、変化至上主義は都合が良いだけなのだから。

最後に、私の意見。
まず前置きさせてもらうと、私は学生時代、ビジネス書にどっぷり浸かった時期を経験している。我ながら、本当にたくさん読んだのだ。そこから導き出された答えは、「読めば気持ちは昂ぶるが、結局のところ行動しなければ意味がない」というごく自然な結論であった。それからというもの、自身の中に「ビジネス書アレルギー」のようなものができてしまい、ビジネス書と聞くだけで身構えるようになってしまった。もちろん、本書が「ビジネス書」なのかどうかという問題はあるし、ビジネス書とひと言で言えども千差万別あることは百も承知である。しかし、世間的に評価されている「役に立つ本」、「人生を変えてくれる本」といったものに私自身が大きな偏見を持っているのは事実であり、その上で以下の話を聞いていただきたい。

まずこの本を読んで感じたのは、物語としてあまり出来が良くないということだ。「チーズ」は人生における成功だったり、大切なものだったり、フロンティアだったりするのだろうが、あえて抽象的なものに置き換えてそう設定しているだけであり、喩えとしてそれほど巧いとは思えない。この本を通して言いたいのは「変化し続けよう」ということだろうし、その主張に異を唱えるつもりは全くないが、この物語からそれ以上の何かを感じることができず、ただ説教臭いのだ。

もうひとつ、これも私自身の経験が影響している。それは、抽象的なストーリーや思考に依拠することの危うさだ。これも学生時代の一時期、思想や哲学に心酔――とまではいかないが――惚れ込んでいた。自分ではそう思っていなくとも、間違いなくどこか浮世離れしていたと思う。具体的な実例のないままに、思考だけで練り上げた物語に依拠することは、宗教への信仰に近いものがある。私はその後、社会に適度に揉まれたおかげで正気を取り戻したが、言葉だけでできた世界に付いていくことの怖さを知った。だからこそ、反証可能性のない抽象的な物語には、過剰な嫌悪感を覚えるのである。

要するに『チーズはどこへ消えた?』にほとんど罪はなく、完全に私に合わない本だという結論であった。私自身、ここまで合わない本は珍しいし、その分そんな意見もあるのだくらいに受け取ってもらえたら幸いである。読書会のみなさん、せっかくの課題本に好き勝手言いまくって、本当にすみませんでした。

次回読書会は、再び各々の本紹介となる。次回はポジティブな発言ばかりとなるよう、きっちり準備して臨みたい。

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