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キャベツ、バラ、ズリ、皮、つくね、ハツ、ネギ/短歌のある日々

ざく切りのキャベツちり敷く受け皿にまづバラが来てズリ、皮、つくね来/山下翔

短歌のひとつの特徴として、普通の人が当たり前過ぎて気にもしないことをわざわざ書き留めるというのがある。

その意味で、この作品はすごい。一人で飲みに来て、焼鳥が一本一本運ばれてくるのを歌にしている。そんなものを歌にするのか、と。

これは『孤独のグルメ』の世界観に近いのかもしれない。いや、井之頭五郎は酒を飲まないので、『ワカコ酒』のほうが正確か。

一本一本運ばれてくるのを、キタキタと脳内で呟くようなわくわくが歌になったら、こんな感じになったということだろう。

ハツ、ネギを食らひて酒を飲みゐたり五十代多欲にて生きゆかむ/高野公彦

こちらも焼き鳥の歌。ハツ、ネギを食べて酒を飲んでいるだけで多欲とは、歌人とはなんと普通のことを有り難がるセンスに長けたことか。

この感覚が、歌人を歌人たらしめているのかもしれない。

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