実用書の原稿ができるまで 〜まず構成を考える
本の原稿ができるまでの流れをご存じでしょうか?
大まかな流れとしては、「構成→執筆→修正→完成」という感じです。
今回は最初の「構成」を中心に紹介していきます。
「わかりやすい順番」というものがあります!
原稿を作るときに、まず考えるのは本の構成です。
本全体の構成を考えずに、執筆をスタートさせてしまったら、何度も書き直しが生じてしまうからです。
そのため、執筆を始める前に本全体の構成を考え、それをかためてから原稿を書いていきます。
実用書の構成は「わかりやすい順番」をベースにを考えていきます。
実用書は、ターゲットとなる読者にわかりやすく伝え、役に立つことが目的です。
このターゲット読者は、多くの場合、初心者や初級者。
つまり、その本のテーマについて、あまり深く知らない方を想定して本作りをしていくことになります。
初心者の方にわかりやすい本とするためには、簡単な内容からはじめ、徐々にむずかしい事柄を説明していくことが必要です。
しかし、一番知りたいこと(=メインの内容)までに時間がかかると読者は飽きてしまいます。
前置きが長いと、まどろっこしく感じられ、読み進められないという問題が出てくるのです。
でも、初心者には、基本的なことを理解してからでなければ、少しむずかしめの一番知りたいことが理解できない……。
これらのバランスをどうとっていくかが、実用書作りの重要なポイントの一つです。
私が編集者としてかかわった「行動経済学」の本を例に挙げてみましょう。
この本で伝えたいことのひとつに「プロスペクト理論」というものがありました。
これを大雑把にいうと、「人は得することよりも、損をすることを嫌がる」という理論です。
これを本の1章で解説したのでは、初心者はついていけません。
「人間は合理的ではない」という行動経済学の基本を伝えなければ「プロスペクト理論」を理解できませんし、解説に必要な「期待値」「志向」「効用」のような専門用語も初心者にはわかりません。
そこで、まず本書の1章で「人間は合理的ではない」という行動経済学の基本を説明し、その後、徐々ににむずかしい話題に触れ、「プロスペクト理論」につなげていきます。
「期待値」「志向」「効用」などの専門用語も、一度に解説したのでは、初心者はついてこれません。
少しずつ小出しにしていくことで、理解しやすくなるのです。
これらのようなことを総合的に考え、実用書の構成は決まっていきます。
「章→節→項」と考えていく
本の構成は、大きなテーマから「章→節→項」の順になります。
構成を考える上で、最初に考えるのは、大きな項目である「章」。
1章○○、2章○○、3章○○、4章○○、5章○○……ですね。
「章」の構成は、その本で何を一番伝えたいか、どこを特徴的に取り上げるのか、どのように類書と差別化していくかによって決めていきます。
これは、企画を考える時点でおおまかに決まっているケースが多いため、この部分はスムーズに進みます。
次に考えるのは「節」。
「1章でなにを伝えるか(1章のテーマ)」から、それぞれの「節」の項目を考え、2章のテーマから、それぞれの「節」の項目を考え……、となります。
もちろん、1章から考えるのではなく、たとえば3章でその本のメインテーマを取り上げるなら、3章から考えることもあります。
まだ、「節」だけでなく「項」も一緒に考えるケースも少なくありません。
どのように考えていくにしても、「初心者にわかりやすい順番」がベースです。
この軸をぶらさずに、構成を考えていきます。
「台割=ページ割」を作る
実用書の場合は、構成が固まった後、「台割(だいわり)」を考えます。
台割とは、「章」「節」「項」が何ページに入るかを明らかにした一覧表のことです。
1章:P9〜40、1章-1節:P10〜19、1章-1節-1項:P10〜11、1章-1節-2項:P11〜12……のように、どの項目が何ページ〜何ページに入るかを一覧にしたモノが台割です。
実用書の場合、見開き(2ページ)単位で考えるケースが多いため、構成を考えた直後に台割まで決めていきます。
そして、台割が決まった後に、その台割に沿って執筆がスタートされるのです。
もちろん、書き進めていく段階で、台割や構成が変わるケースがありますが、まずは台割を作ってから、原稿を書き始めるという流れになります。
その後、書き手と編集者で原稿をブラッシュアップしていき完成となります。
今回は、実用書の「構成の考え方」を中心に、原稿をさせていく流れを紹介いたしましたが、いかがでしたでしょうか?
文/ネバギブ編集ゴファン
最後に本記事にて取り上げた「行動経済学」の本の紹介です。
『サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学』
https://www.amazon.co.jp/dp/4405120110/
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