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編集者が“紙”を選ぶときのポイント
周囲の編集者と比べて、私は“紙”に対するこだわりが弱いほうです。
そんな私でも、「なんでもいい」というわけではありません。
紙を選んでいます。
今回は、「実用書の本文に使う“紙”を選ぶ」ときのポイントをお伝えします。
用紙選びのポイントは5つ
実用書の本文用紙を選ぶときは、以下の5つを総合的に考えます。
①色数
②写真
③重さ
④厚さ
⑤予算
それぞれ見ていきましょう。
①色数 〜フルカラーか、そうでないか
紙を選ぶときの最初のポイントは、印刷する「色数」です。
黒インク(1色)だけで刷る本の場合は、「真っ白に近い紙」か、「少し黄色が混じった白い紙」かの、どちらかを選びます。
「黒+別の色(2色)」で刷る場合も、1色と同じで、真っ白い紙か黄みがかった紙かの、どちらかの選択です。
真っ白い紙は、文字がはっきり見えるというメリットがありますが、ページを読み進めると目が疲れるというデメリットがあります。
書籍は、百数十ページ〜二百ページくらいあるため、目を疲れさせないことを重視するときは、少し黄色が混じった用紙を使います。
4色のフルカラー印刷の場合は、基本的に真っ白に近い紙を使います。
(フルカラーは、CMYKという4つの色を組み合わせることで表現されます)
黄色が含まれた紙に印刷すると、色のイメージが変わってしまうからです。カラーをきれいに表現したいときは、真っ白がベターなのです。
②写真 〜カラー写真が入るかどうか
紙を選ぶときのポイントの2つめは、「フルカラーの写真が入るかどうか」です。
フルカラーの写真を、きれいな色で表現したいときは、表面がツルツルした紙を選びます。
写真は、たくさんの色で表現されていて、その微妙な違いを表現するには、紙の素材が問われます。表面がツルツルしている紙は、紙の目が細かく密度が濃いため、微妙な色の違いを表現するのに向いているのです。
表面がザラザラしていると、その凹凸により、精密な表現がむずかしくなります。
③重さ
紙を選ぶポイントの3つめは、「重さ」です。
じつは、表面がツルツルした紙は、重くなります。目が細かく密度が濃いため、必然的に重量が上がるのです。
10年以上前は、本の重さを考えている読者は、あまり多くありませんでした。編集者サイドも、表現のきれいさを重視するときは、重くなっても仕方ないと考えていました。
しかし、年々、軽い本が好まれるようになっています。
やはり、重い本は読むときに疲れますし、街の本屋さんが少なくなり、本を近所で買う機会が減り、持ち歩く時間が増えたからでしょう。
カバンに本を入れたとき、軽いに越したことはありません。
結果、軽い本が好まれ、増えてきているのです。
最近は、紙の質も上がり、印刷技術も向上しています。
その結果、表面がザラザラしている紙でも、フルカラー写真をはじめ、きれいに印刷できるようになってきています。
この技術の向上も、重量の軽い本が増えている要因のひとつでしょう。
④厚さ
4つめの紙を選ぶときのポイントは、「厚さ」です。
同じ素材の紙でも、厚さに違いがあります。
たとえば、150ページの本で、同じ素材の紙を使ったとしても、厚さ10ミリ、12ミリ、15ミリなどのように異なるのです。
紙1枚の厚さがほんの少しだけ違い、それが150ページとなると、数ミリの差が出るというわけです。
紙の世界では、これを斤量(きんりょう)といいます。
斤量とは重さのことですから、「厚くなる=重くなる」ため、斤量という単位で使われています。
厚さを考えるときの目的は、定価とのバランスをとることです。
たとえば、定価1500円のA5判の本が、厚さ10ミリしかないと、「高い」と感じる読者がいらっしゃいます。
本来は、ある程度、価格とマッチしたページ数にするのですが、現時点でのページ数で、読者に十分に内容を伝えることができるという場合、厚い紙を使い、本全体を厚くすることもあります。
実用書の場合、図版やイラストなどがたくさん入り、ページが増えると予算が大きく増えてしまうため、編集予算としてページ数を増やせないというケースもあります。
反対に、手軽に読んでほしい内容の本は、あまり本を厚くしたくありません。
たとえば、A5判で1000円のような定価をつけたい本です。
この本が250ページとなったときは、あえて紙を薄くして、本全体を厚くしないようにします。
薄くすることで、手軽さを感じてほしいという意図です。
このように、定価や本の内容、ターゲットによって、本の厚さを変えていきます。
⑤予算
紙を決めるときのポイントの最後は、「予算」です。
紙にもいろいろな種類があり、値段もさまざまです。
これまで紹介してきた①〜④のポイントを実現できる紙の中で、一番リーズナブルな価格の用紙を選ぶということになります。
ちなみに、「④厚さ」で触れた斤量によって、価格も変わります。
同じ質の紙を使った場合、重くなれば、値段も高くなるのです。
実用書の本文用紙を選ぶときは、上記の「①色数、②写真、③重さ、④厚さ、⑤予算」を総合的に考えていきます。
読者にとってベストと思える用紙を、さまざまな面から考えて決めているのです。
文/ネバギブ編集ゴファン
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