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「手土産、何にしよう?」先輩編集者から学んだこと

最近、人と会う機会が減っていましたが、徐々に打ち合わせ、取材、撮影、お世話になった方への挨拶など、人と会う場面が増えてきました。そんなときに、出てくるのが「手土産、何にしよう?」という悩み。

こんにちは、高橋ピクトです。
池田書店という出版社で実用書の編集をしています。
今回のお話は、手土産についてです。

といっても、私も勉強中。先輩編集者たちのふるまいを見て真似をしています。ここでは、先輩たちの気遣いと手土産をご紹介したいと思います。

「このお店のスイーツが喜ばれる!」というお話ではないのですが、「こういうときはこんな手土産が喜ばれる」という参考情報になればうれしいです。

頑張っているスタッフへの応援手土産

これは、私が編集プロダクションで新人だった頃に受けた、ベテラン編集者の気遣いです。
ある本の校了(本づくりの作業終了)直前に、トラブルがあり、修正作業に没頭しているときでした。夕方までに修正データを出版社にもっていかなければ…、そんな緊迫感をもって仕事をしていたんです(今のようにデータをメールで送ることはできないので、当時のデータの入稿は本づくりにおける一大イベントでした)。

本当に夕方までに間に合うか…、いや無理じゃないか…? そんなときに私の会社に現れたのが出版社の担当者さん。

 「データができるまで、待っていますよ」。

出版社で待っているはずの人が、わざわざ編プロまで出向いてくれたんです。まさかのサプライズに涙がでるほどうれしかったのを覚えていますが、その手には、あたたかいたい焼きが。修正対応をしながら、食べたあんこの味は忘れません。モチベーションが上がったのは言うまでもありませんし、この仕事の後もその担当さんの依頼なら!と特別対応でした(その方が素晴らしい方だったからですが、手土産の印象の力は本当にすごい)。

 頑張っているスタッフには、お腹と心に響く応援手土産を。
このときに身をもって学びました。

 

撮影では、テンションが上がる生菓子を

料理書やエクササイズ本など、実用書の撮影の現場は長時間になることが多く、編集者、著者、料理家さん、モデルさん、カメラマンさん、スタイリストさんや、メイクさん。スタッフ全員が集中して作業を行います。

あるエクササイズ本の撮影現場で、モデルさんが思うようにポーズができず、撮影時間が押してしまうことがありました。皆さんプロですから、イライラしたりはしませんが、やはり現場にはどんよりとした空気が漂います。

そんな中で、一番年長の編集者さんが休憩中にふらりとスタジオを抜け出したんです。電話かな、それとも、自分なりのリセットほうがあるのかな…と思っていたら、帰ってきて人数分のケーキを買ってきてくれました。スタジオには誇張ではなく、「キャー!」という歓声が響きました。

その編集者に話を聞くと、「事前に撮影スタジオの近くのケーキ屋さんを調べといたんだよね~、チャンスがあれば買いに行こうと思ってて。戻るの遅くなってごめんなさい!」という、なんとかっこいい言葉。

そこから現場の空気は一転。なごやかな雰囲気の中で、どうすれば、モデルさんがうまく動けるか、撮影できるかを相談しながら徐々にテンポを上げることができました。時間は少し押してしまいましたが、撮影が終わったときの一体感は、あのケーキブレイクの時間がなければ得られなかったと思います。

撮影現場では、テンションの上がるお菓子を。周辺情報も調べておく。

撮影など、手土産をその場ですぐに食べる場合、生菓子を選ぶとみんなのテンションの上がることを学びました。また、撮影現場ではなにが起こるかわからないもの。周辺情報を調べておけば、ピンチを切り抜ける一手を打てるかもしれないということも。 

著者への手土産は、手間を惜しまない

最後に紹介するのは、池田書店に入社してまだ1年目の話。
上司と、ある著者の先生にご挨拶に伺うときでした。

池田書店は地下鉄東西線の神楽坂駅にあり、先生の事務所は同じ路線の飯田橋駅にあります。電車で一駅ですから、通常ならば30分前に会社を出ればいい距離です。しかし、上司は1時間以上前に「いくぞ、高橋」と声をかけてきます。さすが、長年お世話になっている先生の元には、こんなに時間に余裕をもって向かうのかと驚いていると、ついたのは飯田橋駅で通り越して市ヶ谷駅。

 「先生、ここのせんべいが好きなんだよ」
“ここ”とは、市ヶ谷にある「さかぐち」という老舗のおせんべい屋さんでした。そこで上等なおせんべいを購入し、今度は飯田橋の著者の先生の事務所へ。

 「池田さん、いつもありがとうございます」
「いえいえ」

 長い付き合いの著者と上司が手土産について交わした会話はこれだけ。
でも、その信頼関係は横にいるだけで伝わってきました。

手土産には手間暇をかけるものなんだ。
今ならば、著者のために回り道をして準備をするのは当たり前だと思います。しかし、この頃20代で経験が浅かった私にとって、上司の行動は驚きでした。

手土産はしょせん物です。
物では人の気持ちをつかむことはできません。
でも、物を手に入れるための気遣いが、人のためを思うものならば、その人の気持ちをつかむことができる。

そんなことを私にはじめて教えてくれたのは、この上司のふるまいでした。

#はたらいて笑顔になれた瞬間  #編集者 #手土産

文 高橋ピクト
生活実用書の編集者。『新しい腸の教科書』『コリと痛みの地図帳』などの健康書を中心に担当。「生活は冒険」がモットーで、楽しく生活することが趣味。ペンネームは街中のピクトグラムが好きなので。
最近の神楽坂オススメ手土産は、「オー・メルベイユ・ドゥ・フレッド」のラム酒の香りがするワッフルです。

Twitter @rytk84

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