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月刊 編プロのケーハク

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シュッパン前夜メンバー、編プロのケーハクの記事まとめ。出版界のあるある、新人ライター&編集者向けのスキル解説、出版界の問題や課題について。
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#編集

発信者目線で「面白いだろう」と捻り出した本は売れず、こんな本が「必要だよね?」とユーザー目線でふんわり生まれた本ほど売れる問題

今宵、本の深みへ。 編プロのケーハクです。 主に実用のジャンルですが、これまでたくさんの本を企画したり、つくったりしてきました。 出版社からのオーダーを受け、企画立案から制作までマルっと一式請け負うわけですが、最近は「とにかくヒットする本をよろしく!」的な恐るべき依頼が増えてきました……。 特にはじめて取引をする出版社の場合は期待が大いに膨らんでいるようで、「すでに成功する気満々」で依頼してくることがほとんど。 こちらも継続的な受注がかかっているため、失敗が許されない

新人ライターや編集者に教えている「文章は“リズムと通り”で読みやすく」

今宵、本の深みへ。 編プロのケーハクです。 先日、とある大物の某先生が、某通信社との修正のやりとりで交渉決裂したという文章を、SNS上に公開するといった出来事がありました。 なにやら担当編集が「体言止めが美しい」という理由で、20ヶ所以上の赤字を入れてきたことが原因なのだとか。 「なるほど」 この展開からすると、完全に編集者が悪者になる感じだな〜と思っていたら、やはり「直す箇所がない!」といった執筆者擁護の反応がほとんどを占めていました。 そもそも、寄稿文なのだから

出版社の「冒険しない」問題

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 今回は、本の顔「カバーデザイン」の話です。シュッパン前夜chでも、ブックデザイナーの鈴木大輔さんをゲストに、いろいろと意見を交わしたのですが、その中で意気投合した話題が「出版社は冒険を避けがち」ということでした。 私のような編プロの編集者や、デザイナーさんは、提案するけれど、決定権がありません。カバーデザインは、最終的に出版社の意向で決まっていくのが普通です。 で、我々のような作り手側としては、ライバルである類書に勝ちたいし、面

本と読者の“間”を埋める「マンガでわかる本」

 最近、書店の棚を眺めると、あらゆるジャンルで「マンガでわかる」系の本が増えていることに気づかれると思います。全編マンガで構成されているものもあれば、マンガと本文解説の組み合わせで構成されているもの、さまざまです。 実用・健康書ジャンルにも波及! そして、この「マンガでわかる」の手法は、実用・健康書のジャンルにも波及しています。  池田書店さんの「IKEDA HEALTH BOOK」シリーズ。このジャンルにマンガを取り入れた元祖といえるシリーズです。元々池田書店さんには、

編集者の至福のとき? 本に命が吹き込まれる「あの瞬間」

本づくりの工程で一番ワクワクする瞬間は? 以前の記事「本が企画されて読者に届くまでに編集者がかかわること」でも解説しましたが、一冊の本が読者に届くまでには、さまざまな工程があります。  編集者といっても、タイプは人それぞれ。一人ひとり多様な嗜好を持っているわけですが、編集作業のなかで、誰しも好きな作業工程というものがあります。  企画を考えるのが好きな編集者、原稿を書くのが好きな編集者、はたまた、紙面のラフを切る、取材に行く、撮影をディレクションする、制作チームで話し合う

本の編集って、どんな仕事なの? たとえるなら「本の監督さん」です。

 「本の編集者」のイメージって、ありますか?   誰もが知っているレベルでいえば、国民的アニメ「サザエさん」に登場するノリスケさんの職業が出版社に勤める編集者。普通の人であれば、作家の伊佐坂先生の家に「原稿を受け取りに行く人」くらいのイメージしかないですよね?  プロの編集者である私も、最初は「先生、原稿まだですか?」くらいのイメージしかありませんでした……。  でも、編集者といっても、扱う媒体によって仕事の内容は大きく異なります。ノリスケさんの場合は、いわゆる「文芸編集

今宵、編(へん)な人たちと、本の深みへ。 『シュッパン前夜』立ち上げのご挨拶

あるとき、ふと思ったんです。 「このままだと、10年後も同じことをしながら、ぼやいているだけだな」と。 出版不況が叫ばれて早10数年。たしかに、出版各社においては時々大ヒットこそ出るものの、業界を全体的に見ればいい話は聞きません。 複数の出版社とつながりを持つ編プロに所属する私からすると、こんな状況なのに、出版各社が小競り合いみたいにちまちまとベストセラーの奪い合いをしていても、業界全体は尻すぼみになるだけではないか? と感じていたのです。  「いずれ誰かが変えて