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本と読者の“間”を埋める「マンガでわかる本」


 最近、書店の棚を眺めると、あらゆるジャンルで「マンガでわかる」系の本が増えていることに気づかれると思います。全編マンガで構成されているものもあれば、マンガと本文解説の組み合わせで構成されているもの、さまざまです。

実用・健康書ジャンルにも波及!

 そして、この「マンガでわかる」の手法は、実用・健康書のジャンルにも波及しています。

 池田書店さんの「IKEDA HEALTH BOOK」シリーズ。このジャンルにマンガを取り入れた元祖といえるシリーズです。元々池田書店さんには、教養ジャンルを軸としたA5判の「マンガでわかる」シリーズがありましたが、そのノウハウを健康書にも応用したのが四六判の同シリーズです。

シリーズ.001

なぜ、マンガにするのか?

 元々、実用書や健康書はわかりやすさを重視しているため、イラストや写真といったビジュアル表現に秀でたジャンルといえます。

 そこで、なぜマンガ表現をわざわざ取り入れる必要があるのか? 
これに対し、作り手側の視点で感じたことをお話ししてみます。

◎とっつきやすい!
 書籍で文章を読む習慣がない人にも親しみやすく感じてもらえます。実用・健康書の場合は特に普段は本を読まないという初心者層の取り込みも必須なので、マンガのとっつきやすさはとても有効に思います。

◎効果を擬似体験!
 通常、実用・健康書でメソッドを紹介する場合は、いわゆる情報発信者側の一方通行的な表現になります。

 例えば、「これをやれば健康になれる」みたいなメソッドを紹介したとして、その効果までは説明できますが、実際に読者がそれを体感するまでの詳細な過程はフォローできない作りになっています。

 しかし、マンガには主人公がいます。登場人物はもちろん想定する読者「ペルソナ」です。主人公が実際にメソッドを体験し、問題を解決していく過程を描くことで、メソッドを発信したその先(実践時)までイメージさせることができます。

 しかも、メソッドを実践する途中で発生する問題(できない、ちょっと痛い、面倒くさい、わからないなど)もストーリーで消化できるため、読者に対するきめ細かいフォローが可能になります。

 つまり、本と読者の「間」を埋める、なんとなく双方向っぽい表現になります。ストーリーを考える際は、この「間」を強く意識しています。著者や監修者に取材するときに、自分が感じたこと、ちょっとした雑談がリアルな擬似体験のネタになるわけです。

◎普通なら載せるほどでもない小ネタを拾える!
 これもマンガ表現ならではですね。普通の本なら「わざわざスペースを取って書くことでもない。言えることも少ない」という小ネタ(これが本当は面白かったりするんですが)。これをストーリーの小ネタに使えるのも大きいですね。

ランニング入門.001

 例えば、ランニング。長い距離を走れるようになると、乳首がウェアに擦れて痛くなるという「あるある」があるんですが、結構深刻な割に(めちゃ痛い)言えることも少ないので通常ならカットです。

 でも、「マンガでわかる新しいランニング入門」では、ストーリーのひとネタとして採用しています。この部分に共感する初心者ランナーも多いのではないかと思っています(笑)。こういう共感度を高める表現ができるのもマンガのメリットですね。

当然デメリットもあります!

情報量が少なくなる
 ストーリーを成立させるため、言いたいことだけを端的に伝えるということができません。つまり、ひとつの項目にボリュームを食います。そのため、発信する情報量は通常の本よりも少なくなるのはたしか。情報を絞って手厚く解説するということが必要になります。

本を読み慣れている人には邪魔
 書籍を読み慣れている読者には、「物足りない、情報が少ない」などの不満を持たれることも少なくありません。「マンガは邪魔」みたいなレビューもたまに見かけます。でも、マンガは邪魔とかいらないとかって、そもそも「マンガでわかる」ってタイトルなのに、なぜ買ったのかって思いますけどね(笑)。

セリフが説明的になりがち
 ページ数が少ない中でメソッド解説を入れ込む必要があるので、どうしてもセリフが説明的になりがち。マンガ表現としては面白みに欠ける一面もあります。ストーリー演出とのバランスが重要です。

 このように、マンガ表現は、ジャンルを超えて広く浸透してきました。特性をうまく活かすことができれば、書籍に関わらず色々なメディアで活用できる大きな可能性を秘めていると思います。

文/編プロのケーハク

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