マガジンのカバー画像

月刊 編プロのケーハク

34
シュッパン前夜メンバー、編プロのケーハクの記事まとめ。出版界のあるある、新人ライター&編集者向けのスキル解説、出版界の問題や課題について。
運営しているクリエイター

#書店

出版業界が「改革前夜」っぽい雰囲気になり始めているような気がする件

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 なんとも歯切れの悪いタイトルですよね? 今回は、出版業界にまつわる“ポツラポツラ”とした最近の話題にふれ、なんとなく感じた「変革の雰囲気」について、極めて個人的かつ、正直な思いを綴りたいと思います(笑)。 無人書店「ほんたす」がオープン東京メトロと取次大手の日販、そしてディスプレイ業界大手の丹青社が組んで、溜池山王駅に9月にオープンした無人書店。 冷凍餃子とかの無人店舗はよく見かけますが、ついに無人の書店が登場。店舗面積は約1

今の出版界に必要な人材は「優れた編集者」より「最強の商人」!?

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 正直、日本のコンテンツ制作力は、すごいと思います。 日本の書籍は、中国や台湾をはじめとするアジアでも人気。たとえば、日本で重版していないのに中国版のオファーが来たり、東洋医学の翻訳本をそっちが本場であろうはずの中国からオファーされたりします。 これは一例に過ぎませんが、とにかく、書店に並ぶ多彩なラインアップを眺めていると、きめ細かいこだわりが詰まった日本の書籍編集力はすごいな〜と、同業ながら感心しています。 書籍に限らず、漫画

出版編集の「売れる感覚が狂い始めている」問題

今宵、本の深みへ。編プロのケーハクです。 本が売れなくなってきた……! もう何十年も言われてきたことです。 とはいえ、「正直、そこそこ売れてたし」などと、こっそり他人事っぽく思っていた編集者も少なからずいたと思います。 重版に恵まれた幸せな編集者たちが……。 実際、出版社所属の編集者の多くは、年間の新刊ノルマ●冊をリリースするわけで、一冊も当たらないということは、あまり見かけたことがありません。まあ、たしかにハズレも多いということで、担当本がヒットしてもあまり吹聴せず、

出版社の「自社本を分析しない」問題

今宵、本の深みへ。 編プロのケーハクです。 今回は賛否があるかもしれないと、少しビビりながらも勇気を出して思ったことを書きます(笑)。 先日、前夜メンバーたちとこのようなテーマを話し合いました。 「売れる本と売れない本」の違いとは?まあ、経験則での話になるので、こうじゃないかという個人的な仮説を述べつつ、実際にうまくいかないことのほうが多いという事実に打ちひしがれ、どんどん声量を失っていくざんねんな展開に……(笑)。 結局のところ、企画に対する熱量を込め、あとは時の運

本の編集って、どんな仕事なの? たとえるなら「本の監督さん」です。

 「本の編集者」のイメージって、ありますか?   誰もが知っているレベルでいえば、国民的アニメ「サザエさん」に登場するノリスケさんの職業が出版社に勤める編集者。普通の人であれば、作家の伊佐坂先生の家に「原稿を受け取りに行く人」くらいのイメージしかないですよね?  プロの編集者である私も、最初は「先生、原稿まだですか?」くらいのイメージしかありませんでした……。  でも、編集者といっても、扱う媒体によって仕事の内容は大きく異なります。ノリスケさんの場合は、いわゆる「文芸編集

今宵、編(へん)な人たちと、本の深みへ。 『シュッパン前夜』立ち上げのご挨拶

あるとき、ふと思ったんです。 「このままだと、10年後も同じことをしながら、ぼやいているだけだな」と。 出版不況が叫ばれて早10数年。たしかに、出版各社においては時々大ヒットこそ出るものの、業界を全体的に見ればいい話は聞きません。 複数の出版社とつながりを持つ編プロに所属する私からすると、こんな状況なのに、出版各社が小競り合いみたいにちまちまとベストセラーの奪い合いをしていても、業界全体は尻すぼみになるだけではないか? と感じていたのです。  「いずれ誰かが変えて