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物事を前に進める力

 日々色々なことが起こっている。何もない一日というのがあると感じるなら、それはただ単に起こっている出来事に気が付いていないだけかもしれない。あるいは起こっている出来事がパターン化していて気に留めるほどではなくなっているのかもしれない。でも、そんな一日を過ごすことが出来ているとしたら日常が平穏だということでもあると思う。だから決して悪いことではないと思う。


 困難というのは、あぁ、多分起こるだろうなぁとある程度予測出来る範囲内で起こることもあるだろうし、よくよく考えてみたら、あれがこうなったから起こったというように予定調和的に起こっている場合もあるだろうし、まったく思いがけず不意に起こる場合もある。いずれにしても、事の大小に関わらず困難というのは起こるし、それは自分の言動が関係している場合もあれば、自分とは無関係に一方的に降りかかってくる場合もある。


 問題は、それがどんな困難か⁉ということではない。だから、直面した困難をただ嘆き憂いていても仕方がない。そんなことでは物事は前に進んで行くことはない。もちろん、時間と共に何かしら状況が変化していくわけだから、自然消滅していくものもあるだろうし、放っておいても何の実害もないということもあるだろうし、何もせずとも解決しちゃうこともあるだろうと思う。


 でも多くの場合、困難というのは積極的に、主体的に向かっていかなければいつまでも目の前に立ちふさがり続けてスムーズに前に進むのを邪魔し続けるものでる場合が多い。だから、困難に直面した時の問題は、それがどんな困難か⁉ということではなくて、それがどんなものであれ、自分がどう向き合って、どう前に進んで行くか⁉ということであり、つまり、自分自身の問題なのだと思う。


 僕自身の考えは、困難に向き合って、前に進む力を持っていない人は、まず立ち上がるまでに時間がかかる人ではないだろうか。腰の重たい人、フットワークの悪い人、よっこらせと動き出すまでに時間がかかる人。あるいは、いつも困難が起こると目をそらす人、無視を決め込んだり、人のせいにしたり、思考を停止させたりする。とにかく自分でその責任を背負おうとしない人ではないだろうか。


 困難に向き合って、前に進む力を持っている人は、その逆で、さっと立ち上がって、すべきことをし始めることが出来る人。目をそらさず、自分の責任を自覚して、よく考えて行動する人ではないだろうか。どんなことでもその一歩には意味があると信じることが出来る人でもあると思う。そういう意味で言えば、希望を失うことがない人であり、勇気を持っている人だとも言えると思う。


 つまり、物事を前に進める力というのは「希望」と「勇気」の力だと言えるのではないだろうか。このことは僕が好きなアルフレッド・アドラーという心理学者が言っていることに通じている。ご存じの方も多いのではないかと思うが、アドラー心理学における「勇気」というのは、人間的な精神力の「強さ」のことではない。そのような「強さ」はフロイト心理学的な過去の経験によるものであって、アドラー心理学においては将来に対する「希望」に起因したものだということが出来る。


 林修先生が「今でしょ!」とおっしゃる言葉は、僕にはアドラー心理学的な意味での「勇気」を与える言葉に聞こえる。今まで積み重ねて来たものがどういうものであるかによるのではなくて、たとえ積み重ねてきたものが何もなかったとしても「今でしょ!」とその一歩を踏み出すことが大切だとおっしゃっているように聞こえる。


 物事を進める力を持つため(あるいは発揮するため)に必要なのは、そういう「強さ」を持つこと、つまり「希望」と「勇気」を持つことだと思うし、それは今までどうだったかとは何の関係もなく、誰でも「今」という時に持ち得るものだと思う。もっと言えば、もうすでに持っているものをただ使うだけなのだということも出来る。「ない」のではなくて「もう持っている」ものなのであって、それをどう使うか、発揮するかだけなのだと思う。


 では、どうしたら良いのか?まず自分を信じることが大切ではないだろうか。自分を過大に評価することではない。自己陶酔的に、あるいは自己中心的に、独善的にオレスゲー!ということではない。自分を信じるということは、たとえ立ち止まったままであったとしても、何か小さなことを始めてみたとしても、大きな方向転換を試みたとしても、何かを起こしているのだと、アクションしているのだと、それ自体に意味があることを信じることだと思う。


 少し変な言い方かもしれないけれど、困難に服従する僕になってしまうのではなく、困難を従える主人になることが大切だと思う。人生の主人公は自分なのだと信じることが大切だと思う。自分の人生のストーリーを自分で描いて、ハッピーエンドに向かって進んでいることを信じて生きる方が、人生の物語が大団円として幕を降ろすことを信じて生きる方が幸せであることは言うまでもないことだと思う。

 

 

 


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