愛馬が教えてくれた【愛と思いやりの力】
これは、中国の戦国時代の話。
各地に豪族が群雄割拠し、互いに天下を取ろうと鎬(しのぎ)を削っておりました。
君が仕えていた国の王は、わずか数千の兵士で、大国を相手に戦っておりました。
しかし、多勢に無勢。
やがて補給尽き、食料が底を尽き、援軍を頼まねば、味方は全滅してしまう、
そのような状況に追い込まれてまいります。
激闘の最中、王は君に大河の対岸にいる、友好国に助けを求めてくるよう、
君に願いを託しました。
君は、小雨の降りしきる中、早馬を飛ばします。
さて、河のどこを突っ切ればよいか。
浅瀬であれば、簡単に渡れますが、もし深い淵でもあれば、人馬諸とも、
河底に沈んでしまいます。
それは、即ち自国の滅亡を意味する。
狙いを定めるのですが、なかなか狙いは定まりません。
どこか適当に、河の中に馬諸とも足を踏み入れ、
不可能なら愛馬をそのまま置き去りにして自分で泳ぐしかありません。
迷っている内に、時々刻々と時は過ぎてまいります。
いかん。
また優柔不断の癖が出てしまった。
戦に負ける前に、自分の弱気に負けてしまうのだ。
しかし、王はこの私に全ての望みを託された。
馬を走らせながら、どんなに危険な場所でも、勇気と知恵があれば乗り切れるのか?それとも予め、安全な場所を、見切って突っ走るのが良いのか?
己の決断の無さに、馬上で号泣してしまいます。
するとそれを察知したかのように、馬が突然、河の真ん中で立ち止まってしまいました。
しかし一向に、馬は動く気配がありません。
河の水はいよいよ、水嵩を増してまいります。
ふいに自分の愛馬は、鋭くいななきました。
十年以上も付き添った愛馬でしたが、こんな鳴き声をするのは初めてでした。
馬は勢いよく進みます。
しかし、次第に水嵩は増してまいります。
馬は鬣を震わすと、どうとばかり河底に自ら進み、馬上にいた君を思い切り前へ押しました。迷っている暇はありませんでした。
必死の思いで命からがら、君は泳ぎます。
たった一度だけ、後ろを振り向きました。
すると今にも溺れそうな馬が、悲しそうな眼をして、首を横に振りました。
と言うと、馬は鋭く再び叫び声を発しました。
驚いて馬を助けようと、戻ろうとした瞬間、自分の足が河底に立つことに気が付いたんです。
馬は、さあ行けと、あなたに合図をしているようでした。
その時初めて、愛馬の気持ちがわかりました。
と、愛馬に向かって合図をすると、馬は悲しそうにもう一度叫び声をあげ、
大きく頭を振ると、そのまま水中に没しました。
泣きながら君は、向こう岸へと河底に足をつけて、必死の思いで対岸へと、
歩きました。
すると丁度、そこに待っていたかのように、一頭の馬が目に入りました。
迷わず馬に乗ると、馬は全てを知っているかのように、かの国に向かって全力疾走いたします。
狂ったように走る馬の背中で、君は悟りました。
こうして無事交渉がまとまり、見事三日以内に、友軍とともに引き返し、
既の所で滅亡を免れたのであります。
君は前世において、このように劇的に心の視野を広げ、無数の存在の自分を生かす力に目覚め、それから大活躍をしていきました。
しっかり心に、刻みこんでください。
大活躍する者は
自分の思いの中で生きているのではありません。
自分に頑張って欲しい、もっと大切にしてあげよう、生きて生きて生き抜いて欲しいという、自分以外のものの人間を超えたものの無数の生の思いが、自分を生かし、今でも働いているということを。
もっと大きく言えば、この地球も、様々な星も山川草木の生命すら持たないと思われるあの星も、「君を生かそう、伸ばしてあげよう、助けよう」と、私たちが知らない時に、知らないところで私たちを応援してくれています。
君は今、この働きに目覚めようとしている。
自分を越えたより大いなるものが、自分を生かそうとしている。
それは宇宙の創造主というより、自分を取り巻く無数の人間の、君の知らない人の思いかもしれないし、君の良く知っている人の、君の知らない気遣いかもしれません。
だから、祈る時はこう祈ろう。
魂の気付きとは、何と深淵な、無限の意味合いを持つものであろうか
神よ
生きている間に
この理に気付くことができたら
その無限の幸せに手を合わせ
心から感謝申し上げます。
END
Dr.Shu 五島秀一
(使用画像)
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