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魂のダンス〜満ちることのない月vol.5

希望の窓

私、霊界に行って希望の窓というところに連れて行かれたことがあるの。

その窓は、本当に小さな窓なんだけど、手のひらで押したら、そこから自分がなりたい自分が映って見えるの。

そう、紙芝居よりも、もっと生き生きしてる。

それで私、その希望の窓から、ずーっと眺めていたわけ。
そうしたらね、突然私の着ている衣装が変わったの。

私は、どちらかというとキラキラ輝くラメが入ったような、薄い刺繍が入った白い絹のような服が好きで、それがヒラヒラ揺れているのを見て、希望の窓って本当にあるんだ!と思って、ウットリとして眺めていたわけ。

それが突然、チャコールグレーのヒラヒラしたフリルがついた、子どもが着るような服に変わったのよ。

で、驚いて、違う違う! 

私が着たいのはこんな服じゃない って叫んだの。

それで一生懸命気持ちを集中してね。

そのチャコールグレーの洋服を変えようとイメージしたら、突然私のそばに小さな栗毛をした女の子が飛んできてね。

やめてよ! って言うわけ。

どうして? って聞くと、

この服は私が着たかったの! って言うじゃない。

とっても驚いたわ。

だって希望の窓って自分がなりたいものに出会うことができるわけでしょ。どうしてそれが途中で変わったりするの?

揺れるカーテン

そのとき、翼をつけたエンジェルがやってきてね。
私にこうやって諭したわ。

時々、あなたの思念の中に、他人の思念が紛れ込むことがあります。

あなたの人生が突然思っ切り方向転換したことがあったのはそのためです。

私、びっくりしたわ。

じゃあ、時々、自分の願いじゃない願いがわき起こるってわけ?

と聞くと、そうだって答えるわけよ。

そして、あなたの願いが、逆に誰かの中に宿ることもあるって。

いい? 考えてみて。

私が欲したわけじゃないのに、ある欲望や思いが私の中に突然わく。
本人は自覚してないわけよ。

なんでこんなことを考えちゃうんだろうって。
それってまるで、風もないのに揺れてるカーテンみたいよね。

霊的個人主義

それで私はハタと考え込んでしまったわ。

私は、生きてるときも、死んでからも、ある種の個人主義者なわけ。
自分のことは自分で決めたいしね。

自分も相手に侵入しないし、相手も自分の中にドカドカと素足で入って来てほしくないわけ。

今では肉体を失ったから、霊的個人主義とでも呼べばいいのかしら。

だから私はずいぶん悩んだ。
私ってなんなの?
欲しいものも自分で決められないなんて。

これって意味があるの?

それでね、私、宇宙を創ったものに最初は深い信頼を持ってたんだけど、そのときだけ深い深い懐疑主義に陥って、

死ななきゃよかった、なーんてことも考えたわけ。

なりたいものになれない。
なりたいという思いすら、自分でコントロールできないなんて、いったい宇宙の創り主が創ったこの魂ってなんなの?

不完全なわけ?
ずっと悩み続けたわけよ。

それで何もする気が無くなって、火星に行ったり木星に行ったりして、できるだけ美しい光景を見て心を紛らわせようとした。

もう死ぬこともできないのよ。

一つひとつのマス目が私たち

そのときだった。
私ね、生きてるときによく道玄坂の近くに行ってね。
ビル一面に張り巡らされた大きなテレビ画面を見て、なんだか知らないけど、心がときめいたことを思い出したわけ。

あれっていったい、どんな風にできてると思う?

生きてるときはそこまで考えなかったけど、こっちに来るとね、妙に頭脳が明晰になるの。

一つひとつ小さなマス目があってね。
そのマス目の色が、それこそ瞬間にコロコロ変わるわけよ。

そこで思ったの。

一つひとつのマス目が、私たち一人ひとりなんだって。

もし、自分がなりたいものだけになったら
例えばね、赤い色が好きだったら、おそらくずっと赤いままだと思うのよ。

そうしたら、遠くから見たら、一枚の絵にしか過ぎないでしょ。
全体の画面は、いつまでも止まったままよ。

それが不意に半ば強制的に違う色に変えられて、一つひとつのマス目は不満だらけだけど、遠くから見たらそれで初めて映像が動いて見えるわけよね。

流れるような魂のダンス

私、宇宙の創り主に完敗したと思った。
もしすべてが、自分の思い通りになったら、映画なんてつくれるわけないわよね。

きっとね、神様はミュージカルが大好きなのよ。
思い通りにならないからこそ、魂全体の景色が動いて見える。

この世は、満ち足りていなくてね。

いつまで経っても、満ちることのないお月様みたいなもので、

だからこそ動きがあって美しいのよね。

ランダムな、そして、流れるような魂のダンスなのよ。

あなたもいつか、魂のミュージカルを観られる日が来るわ。

ではまたね。

2021年10月 Shu


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