医療業界の人材管理(物心両面の幸福を追求する)
はじめに
日本における労働人口の減少と医療介護職への需要の増加は、経営者が人材の管理を行う上で新たな課題をもたらしています。
令和4年度における有効求人倍率を見ると、介護サービス職業従事者で3.38倍、保健医療サービス従事者では2.95倍です(令和5年一般職業紹介状況)。職業別に見ても、TOP10に入る高さです。
離職率のデータは、全産業で13.9%(令和3年雇用動向調査結果)、介護職では14.1%(令和3年度 介護労働実態調査)、医療職全体はわかりませんが看護職では正規雇用看護職員で11.6%・新卒採用者で10.3%・既卒採用者で 16.8%(令和4年病院看護・助産実態調査)でした。医療介護職の有効求人倍率はその他の産業よりも高いが、離職率は変わらない。これはつまり、市場・需要が拡大しているが、働き手が足りないということです。だからこそ、自社に社員どう定着させ・集めるか、が勝負のポイントになります。
1. 働きやすい環境
経営者がまず取り組むべき課題は、いかにして自社に合った社員を定着させるかです。離職率が高い職場で採用するということは、スタッフが高回転するということです。採用コストと教育コストがかかる上に、サービスも標準化されず、患者さん利用者さんは「また別の人になった」と感じます。そのためまずは、スタッフの定着に向けて働きやすい環境を作ることです。しつこいですが、自社に合ったスタッフが対象です。これには、適切な労働時間、休息の機会、安全な作業環境、適切な機器と資源の提供などが含まれます。「物質的な安心感」と「心理的な安心感」という物心両面へのアプローチがポイントです。
2. 教育と研修
新しい技術や治療法、病態管理、衛生基準、緊急時の対応などの専門知識だけでなく、最新技術(チャットツールや生成AIツールなど)についても企画します。さらにコミュニケーションスキル、リーダーシップ、ストレス管理など、医療や介護業界で必要とされるソフトスキルの研修も重要です。これらを就業時間内に短時間(15分程度)で行うことが、スタッフの定着に向けたポイントです。
3. パフォーマンス管理(という名の人材育成)
経営者はスタッフのパフォーマンスを定期的に評価し、改善のための支援(フィードバック)を行います。目標設定、期間中の進捗確認、パフォーマンスの評価、そして成果に基づく報酬などを含む仕組みを設計し、実施します。最低でも1on1を実施します。スタッフを定着させる1on1のポイントは以下です。
・半年に1回60分するよりも、月1回10分実施する
・1on1の内容をきちんとメモして保管し、次回の話題にする
・こちらが話すのは2割(聞く、聴く、訊く)
スタッフが100人になるまでは、経営者が全スタッフと1on1をします。
4. 報酬と認識
経営者は、スタッフの貢献を報酬し、彼らの努力を評価します。給与、ボーナス、福利厚生プログラム、昇進機会などを通じてスタッフを報酬し、また、定期的にスタッフの成果を認識し、称えるイベントを開催します。これによりスタッフのモチベーションを維持し、彼らが自身の仕事に対する価値と満足感を感じることができます。
5. 採用・求人
最後が採用です。経営者は、医療や介護分野における具体的なスキルと共に、コミュニケーションスキル(対人関係スキル)や問題解決能力などの、重要なソフトスキルを持つスタッフを採用する必要があります。また組織の文化やビジョンを明確に伝え、その理念に共感する候補者を選びます。学歴や医療介護技術よりも、コミュニケーションや人柄などのソフトスキルを優先することが重要です。
代表的な求人方法は以下です。
・ハローワーク
・Web広告
・スカウト
・リファラル(職員による紹介)
・アルムナイ応募(退職者紹介)
・自社求人サイト
・人材紹介
・SNS
・就職説明会
・インターン
・その他、地域の情報サイトなど
働きやすい職場になればなるほど、リファラルやハローワーク、SNS、自社求人サイト、インターンといった、費用がかからず、しかも最初から会社への好意度が高い採用が可能になります。
おわりに
いかがでしたでしょうか。ポイントは採用の前に定着です。自社に合ったスタッフの定着です。自社の基準(理念・経営計画)を作り、自社に合ったスタッフに徹底的にサービスしていくことが、経営者に求められています。
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