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医療業界における財務管理:経営者にしかできない仕事

苦手意識が強い財務管理。税理士や会計士に任せっぱなしにしてはいないでしょうか。お金は経営状態を測るためのバイタルサインです。誰よりも財務諸表を読み込むことも、経営者の仕事です。

1. 財務計画の作成と管理

財務計画には、組織の売上と支出の予測、将来の投資計画、そして業績評価の基準となるもの(経常利益、現預金など)が含まれます。当然ながら計画は、事業の方向性(ビジョン)に基づいて作成されます。また計画と実際の支出を比較することにより、未達と超過を把握できるため、適切な判断につながります。この時、未達だけでなく、大幅な達成も問題視することがポイントです。また経営者や担当者が、目標値を頭に入れていることも確認します。頭に入っていない数字を達成できるはずがありません。 

2. 財務分析

経営者には、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書を理解し、それらから洞察を得る(組織の動きを想像する)ことが求められます。収益性、コスト構造、現預金などの財務体力、自己資本比率の健全性などから、組織内のどこにムリ・ムダ・ムラがあるかを想定し、現場に行って突合します。組織全体の動きとお金の動きを一致させることは、組織のパフォーマンスを評価し、意思決定を行う上で極めて重要です。

3. キャッシュフロー管理

事業を経営すると、日々の運営費や人件費、設備投資、借入の返済など、多くの現金が流出します。そのため現金の流入と流出を明確に、かつ最低でも翌月15日以内に把握します。その結果、組織の財務的な健全性を維持し、突発的な支出や収入の減少に対応できます。この時、月次はもちろんですが、月内における最低値(多くは給与支払い〜保険収入の間)を把握することが重要です。月次で見るとキャッシュアウトが3ヶ月先だと思っていても、月内の最低値を考慮すると翌月が危ない、ということもあります。現金の管理こそが王道(Cash is King)です。

4. コスト管理と削減

まず経営者は、医療や介護サービスの提供に関連するすべてのコストを把握します。一部のコストは自動化(デジタル等)や標準化(マニュアル等)により、削減することが可能です。またコスト削減はイベントではなく、常日頃からの習慣が功を奏します。ただし、コスト削減には長期的・全体的な視点が必要です。目の前のコストを削減するために職場環境を悪化させ(部屋が暗い、コピー枚数が制限されているなど)、その結果スタッフが離職し、採用にそれ以上のコストがかかってしまう。という本末転倒はよくある話です。コストを削減するが、顧客サービスやスタッフの満足度は変えない、むしろ上げていくと、「決める・思う」ことが不可欠です。

5. 資金調達戦略

組織が成長すると、新しい設備や技術の導入、新たなサービスの開始など、追加投資が必要になります。これには、銀行からの借入れ、投資家からの資本調達、政府からの補助金、または再投資など、様々な方法で対応します。資金調達戦略のポイントは大きく2つ。
過度な節税を行わずに現預金を多くすること
・銀行から借入を行い、関係性を作っておくこと
 無借金経営は悪であり、金利は保険料と思うことが大切です

6. 財務リスク管理

金利や為替レートの変動、信用リスク、流動性リスクなど、様々な財務リスクに注意を向けます。例えばウクライナでの軍事衝突が起こった時に、対岸の火事と思うのか、エネルギー価格の高騰(光熱費やガソリン代の上昇)を予想して対策に動くのか、経営状態が違ったものになるのは容易に想像できます。「人のせい・環境のせい」にせず、常に自分ごととして情報を得ること、そしてビクビク・オドオド準備することが、会社・社員・顧客・そして自分を守ることにつながります。

おわりに

これらのポイントを理解して適切に財務を管理することにより、組織は財務的な安定性を維持し、サービスの質を保つことが可能となります。専門家に任せっぱなしにせず、経営者自らが「お金の動き」を楽しみましょう!

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