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防災士コーチの note④【二次避難の加速化まったなし】

1997年1月17日。阪神淡路大震災から27年。
様々な歴史の転換点ともなったあの日、あの時、あの人たちに思いを馳せながら、今日、あらためて note をアップしていきたいと思います。

☆二次避難を加速させていく為に

さて、阪神淡路大震災の当時は二次避難という概念はなく、一週間後の24日には避難者数が30万人を超えていきました。ここから約一ヶ月で2万人以上の子どもたちとその家族が親戚や友人達を頼って避難所を離れ、当時は「疎開」という言葉も使われていましたね。
 
今回の能登地震では、先週書きました上記③通り、行政対応としての二次避難に対する注力がはっきりと見えてきました。安全な場所で行われる故郷への思いか強制移住か等という二項対立の論争以前に、今は災害関連死という「命」そのものにフォーカスしていく必要がある状況ということです。

イノベーター理論より

人は変化を怖れる生き物でもありますので、誰でも多かれ少なかれ、二次避難への感情的な抵抗はあります。上図はマーケティングやイノベーター理論などでもお馴染みのものですが、現在のところ二次避難者は約8%とのことで、アーリーアダプターのゾーンに入ってきていると言えるでしょう。ここからマジョリティのゾーンへと入り、避難者の半数以上が二次避難による生命の安全、安心が確保されることを祈るばかりです。
 
今回の災害状況を鑑みれば*【多元的無知】を回避する意味でも、こうした動きをより加速させていくことは今も急務と言えます。

*多元的無知の実験
ある室内で、アンケート等を記入させていると室内に煙が入ってくるという実験が有名。1人だけで室内にいた場合は2分以内に55%が異常を報告。4分以内に75%が異常報告を行った。しかし、煙に動じないサクラを2人加えると、2分以内に異常を報告した人は12%まで減少し、その後もこの割合は変わらなかった。

その為には、不安な感情を誤って「移動したくない」と認識し、その認識を正当化させる「誰がいる」といった自己正当化バイアスをまず減らすことが肝要。その他で頻出する理由に対しては、行政として明快な約束(コミット)をして安心感を増やし、危機的状況から動かしていくこともまた重要です。この点で、集団心理を活用した組や常会といった小さな集団(コミュニティ)を一括で移動させることはもちろん、伴走する職員を役割として組み込むことも有効(応援してくれる一人がいるだけで動ける人の割合は、行政サイドの決定者達が思うよりずっと多い)。

☆期待される傾聴型人材

東日本大震災における宮城県の二次避難における記録からも

【二次避難については、想定外の災害規模による莫大な対象者、市町の極端な人員不足、災害救助法の理解不足、他の業務優先による優先度の低さ、人口流出への懸念、住民感情など様々な要因から取組が進まなかった】
 
という知見が前提としてまず記録されている。詳細はPDFをダウンロードして頂ければと思いますが、個人的には
 
【二次避難は保健福祉部局が担当すべきである。二次避難には高齢者や精
神疾患者、さまざまな障害や疾患を持った方の対応が必要であり、さらには生活支援も必要とされる。そのような状況の中、保健福祉部局の様々な課が持っているノウハウを結集して、二次避難にあたれば、市町村の説得、受入市町村への配慮、高齢者等への配慮、災害救助法の取り扱いがスムーズに行われ、住民に対しても満足とはいかないものの不安が大幅に軽減され、安心感を与えることができると考える】
 
という部分をここでは特に取り上げておきたいと思います。
東日本大震災では「保健福祉事務所や市町の保健師は、被災市町の現場で支援を行っていたこともあり、保健師の手配に難航し、メディカルチェックが計画通り行われず、予定の避難日に出発できないなど住民に無用の混乱を招いた。さらには、受入市町にも県の保健師が派遣できず、市町に負担をかけた」ことは僕自身も目の当たりにしており、またその大きな要因として

・避難所の維持、運営に一杯一杯で手が回らない
 
ことによる負の連鎖が大きかった。だからこそ南三陸町の町外避難所における1,300人以上の調査、対応が僕のような個人のボランティアに託されるような状況でもあったわけです。当時を思い出すなら栗原市の「負担ではなくお返しです。栗駒地震ではこちらがお世話になりました。今度は私たちの番。お任せください」と伝えてくれた職員さん達の暖かさは染みる思い出の一つ。
 
そして昨今の現地様相を聞くと、やはり同様の状態が繰り返されていると感じる部分もあります。逆に言えば、避難所負荷が軽減すれば、こうした保健福祉関連部署が適材適所の状態となり、二次避難がより加速されるということにもなるわけです。この負のループの解消を目的として、現地へ応援派遣を行う自治体とその職員においては、保健福祉関連のコミュニケーション人材を優先的対応でお願いしたいと思うところ。

感情に対して正論で命令指示をすると余計にこじれてしまうことが多いのは平時も有事も変わりません。対話の中で、被災者が本当に大事にしていることを言語化し、認知の歪みを修正してあげられる人材が、やはり鍵となるように感じます。
 
*長くなってきたので、このあとのステージチェンジに関しては次回へと思います。では。

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