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伊那市ダブル選用【ファクト考察 人口減少問題とは?②】


というわけで前回の続きから(前回は上記リンクです)。まずは前回字数的に細く出来なかった長野県ならではの特徴にも触れておきます。

☆経済圏とその衛星村の存在

長野県には優秀な村がいくつか存在します。震災前2010年の内閣府調査による経済指標で原村は偏差値70.3、南箕輪村は69.9を獲得しています。

これは同一経済圏の中で中心集積都市が職場になり、周辺の町村が住居拠点になるという現象が背景にあるわけです。山形村・朝日村と松本市もこの関係にありますし、御代田町も軽井沢町、佐久市、小諸市との距離関係から同様の状態を発生させています。長野以外では北海道(札幌、旭川、帯広周辺地域)にもみられますが、この事象はある意味で合併をしなかった長野らしさ(富山や静岡のように広大なエリア合併をするとこの事象がそもそも起こらない)、長野の経済圏としての特徴として捉えるべきで、特段の問題や課題としない方が良いでしょう。

伊那市としても、同一経済圏内の近隣自治体転出に対してナーバスになることは優先順位が低いと言えます。なぜなら、伊那市への転入もまた南箕輪村からというケースも多いからです。

ではどうするか?

ということを考える前提として、本当のパートナーとなる人々は「損得」ではなく「目的」によって育まれるということを見ていきましょう。

☆行政は「損得」という「思考」をやめる

以前からこの点は強く主張してきたところでもありますが、移住ボーナスといえるような待遇面で移住先を選ぶような人を地域に入れることは、実はデメリットの方が多いのです。

前回の資本による加熱競争という弊害もそうですし、何よりもこうした人々は定住する確率がとても低いのです。理由は簡単で、よりよい条件が提示されればそこにすぐに飛びついてしまう。そんな価値観も持ち主だからです。

こうした人々は地域との関係性を気づくことも「損」と考えて参加しませんし、こうした人々がこうした価値観で行動することによって、その地域コミュニティは大小の疲弊や損耗を受けてしまい、結果として地域の活力が損なわれ、地域経済が衰退していってしまいます。

ですので、頭数を目標にした移住政策は本当に「百害あって一利なし」ということです。

ということで「人口減少」とはただの事象であって、そのつじつまをあわせる行為は決して「目的の達成」にはならない。

そのことがお分かり頂けてきたかなと思います。

☆本当のパートナーは誰だ?

そのうえで、こうした移住政策で多くの自治体が間違えている原点とその仮説についても説明しておくとしましょう。

伊那市年齢別人口

伊那市の年齢別人口グラフがこちらで、日本全体のグラフとほぼ同じ形をしていますので、規模は違えど同じように考えていくことができます。

上のグラフを見て、多くの自治体が安易にもっとも数の少ない25~29歳世代の獲得を目指してしまいます。

しかし、今の行政にはこの世代。彼ら、彼女らの人生の土台となるキャリアの時間を有意義なものにすることはできません(希少例外を除く)。
この世代が人生の中でキャリアアップできる!と言えるだけの実践経験を積ませる環境を準備出来ていないからです。

20代の貴重な時間を無為に使わせてしまうことは、日本全体の未来。国そのものの将来の可能性を少なからず失わせることに直結しますので、この世代に対して「釣った魚に餌をやらない」とか「自己責任」といった施策は道義的にあってはならないものといえます。でも、出来ない自分達から逃げるためにそうやっちゃうことが多いですよね。

なので、もし自治体がこの世代の受け入れを目指すのであれば、連携パートナーとして地元の民間としっかりプログラムを組んで、その受け入れを支援していく必要があります。そしてこういう話をすると得てして地域の大きな会社に丸投げしようとするのですが、これも可能な限り回避した方が良いでしょう。

というのも、今の売り手市場と言える人不足の状況下では、いわゆる大会社や都会的ベンチャーでよい人はそもそも首都圏、都市圏で働きます。つまり、そうではない環境で輝く20代こそが地方のパートナーなのです。そして、その20代達を受け入れ、必要十分なキャリアを育んでいける受け入れ先は誰でどこ?という視点と答えが欠かせません。だから、地域の大きな会社ではない方が良いことが多いのです。

というわけで、こうした視点や準備がないままに20代を移住ターゲットにして、キャリアダウンさせるような失敗をしている。そんな自治体が枚挙ある。それが地方の今ということです。

☆手堅いのは30代~40代という現実

伊那市の地域おこし協力隊における定住100%の要因の一つでもあり、総務省のデータからも読み解けるのですが、現状のこうした地方自治体とマッチングする確率が高いのは30代~40代のセカンドキャリア、サードキャリア組です。

加えてこの世代は所得も高くなっていく傾向にありますので、自治体の歳入にもとても大きな影響を与えます。しかも、この世代が必要な収入と十分な時間と幸福なパートナーシップを持つと子供が生まれやすくなります。

実際に近年の国内「社会動態」をみても【子供の教育】というテーマは、テレワークというテーマとあわせ、人が移動する「大目的」となっています。それこそ長野県では今の社会情勢下でも風越学園、大日方小学校を目指して約1000人の移住が(軽井沢、佐久、佐久穂、御代田エリア)あったと推測されています。この点からも、この世代とのコラボレーションがいかに重要かということがわかると思います。もちろん、伊那市の社会動態も自然保育や伊那小の存在に支えられている部分は大きいでしょう。

そして、この世代の方々は首都圏で様々なキャリアを積んでいて、これまでの地方、地域にはない価値観や視点や人脈をもっていることが多いわけです。つまり、こうした人と地域の誰か、何かとの出会いは、イノベーションが生まれやすい条件を満たしているということです。

ここを意識的に支援していけば、これらの世代は、地域にこれまでにない仕事、仕組み、文化をもたらす可能性があり、これらの積み重ねや組み合わせがより大きな経済へと波及していくことになる・・ということ。

まさに新しい価値観の創造であり、この世代こそがメインパートナーと言える前提となることがわかります。

と、字数がまたいってしまいました。
続きはまた次回としておきましょう。

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