【第三十一場…リンゴの実】

《E氏→えっ、食べられちゃうのか、と驚きの行動。アンパンマンを思い出して、二番煎じっぽさがにじみ、やや残念》

 秋になって、ようやくわたしは、たったひとつの実をつけました。青かったリンゴは、どんどん大きくなって、緋色(ひいろ)に変わっていきます。ちょうど熟れたときに、アンアッピが収穫してくれました。ふたつに割ると、黄色い蜜がたっぷり入っています。アンアッピは、一口食べると、
「うまい!」
 と、叫びました。わたしは、やっとアンアッピに恩返しができた気がして、うれしくて仕方ありません。すると、
「ん?」
 と、アンアッピが何かに気づいたみたいです。
「ひとりで食べてちゃもったいないや」
 と、言って小麦粉とタマゴと砂糖をこねはじめました。どうするのか見ていると、リンゴの実を薄く切っています。今度はかまどに火を入れました。
 しばらくすると、アンアッピは、わたしの前に立って、言いました。
「ありがとう。今年は一個だったから、仲間だけで食べるけど、来年はがんばって、たくさん実をならしてくれ。きっと、いいことあるから」
 わたしは、聞こえないとわかっていましたが、
『ありがとう』
 と伝えました。

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