見出し画像

意思決定論2/2

その意思決定の受益者は誰か

意思決定において大事なのは、その意思決定を「誰のために」「どれくらいの時間軸」を対象として、視野にいれながら実行するかということだと感じる。つまり、その意思決定による本当の受益者が誰になるかという問題である。何をもってその時の決断が正 しかったのかどうか、それをいつ判定するのか、やはりそこが一番大事なように思う。 この点について、映画「マネーボール」も視聴した上で、以下のような疑問を抱いた。


組織と個人の利害関係は一致するのか、という問題

例えば、サッカーの PK 戦の際に、あなたが PK のキッカーに指名されたとしよう。5 人目の後攻に選ば れ、いま相手チームの 5 人目が PK を決めたばかりだ。これまで全員が PK を決めており、ここであなた が PK に失敗したらチームは敗戦。PK に成功したら PK の延⻑戦に進むとする。 チームのデータ分析班によると、対戦相手のゴールキーパーのこれまでの公式戦データを分析したとこ ろ、相手キーパーは PK の 5 ラウンド目にはキッカーから見て左に飛ぶ確率が 60%、右に飛ぶ確率が 20%、飛ばずに正面で構えている確率が 10%だという。


スタジアムにいる 5 万人の聴衆と全世界に生中継されている数多くのカメラの注目が自分に一⻫に集まる中、どこに蹴るかいまだ決めきれず、ボールを所定の位置において審判からの合図を待つ。 この大会でチームは予想を超える戦いぶりで、この試合で仮に負けたとしても、監督もサポーターもマ スコミも非難はしないだろう。しかし、自分のサッカー選手としてのキャリアは今始まったばかりだ。この大一番で失敗したら、もっと大きな舞台に立つチャンスはなくなるかもしれない。小さい頃から夢を見てきた。自分1人じゃない、家族全員で掴んだチャンスによってこの場に立てている。家族のためにも、絶対にゴールを決めたい。自分のせいで負けたとは思わせたくない。

 コーチは右に蹴るべきだとアドバイスをくれた。もしその指示にしたがって外しても、チーム内では責 められないだろう。しかし世間からの評価は異なる。自分の今のコンディションを考えると、一番得意な 左に思いっきり蹴ったほうが成功するイメージが湧く。審判の笛がなった。相手キーパーと目が合う。お 互いの人生がかかっている。さあどちらに蹴るか。


チームは年間を通じて評価され、個人は 1 試合 1 試合で評価される。指示に従うか、従って失敗するくらいなら自分の直感を信じるか。この意思決定の結果による受益者は複数存在している。 評価される時間軸が異なる時、選手はどういった意思決定を行うべきなのだろうか。スポーツの場面だけではない。ビジネスマンも同じだ。組織で戦う人間であれば誰しもが実は抱えるジレンマが、大なり小なりこのような場面に集約され ていると思う。

勝敗


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?