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運動機能は回復すんのか?

脳損傷後の機能回復機序

脳卒中後比較的早い時期に運動機能が回復するものの多くは、脳浮腫による錐体路の圧迫の改善や、神経線維に結ばれている影響された部位の血流や代謝の改善(Diaschisis)の改善である。

一方、神経系の可塑的変化は脳内に新しい神経ネットワークを作り、残された正常な組織がはたらくことでの機能回復で、長期にわたる。


健常者の錐体路と障害時の代償機能

錐体路が障害されると、廃用状態が無くても非麻痺側の筋力が健常者と比べて60%~90%であるとされ、左右へのアプローチが必要となる。

腹内側(主として網様体脊髄路)は

脊髄を下行し、主として近位筋、肩帯、腰帯、躯幹筋を両側に支配する。

ほとんどの症例で膝までの随意運動が可能になるのはこのためである。


脳の可塑的変化

可塑的変化の誘導には、機械やセラピストの他動的運動より、患者さん自身に動かそうとする意志を持たせた練習や目的動作の中での随意運動が重要である。


早期リハビリテーション開始の時期

急性期に無理な離床を行うとグルタミン酸などを介して病巣拡大の可能性はある。

ひとつの目安として疾病の増悪がないことと、起立時に非麻痺側での随意的収縮が可能であることである。


下肢装具の使用

一例であるが、SHBは足底接地となる上に、着地後に下腿の前方移動が起きず、膝の過伸展や通常は持続的に収縮しない底屈筋群の異常持続収縮が起きる。また、歩幅が狭くなることを代償して体幹、骨盤の健側での前方回転を誘発する。回復の可能性が残っている時点での足関節を固定した装具の使用はなるべく避けたい。


望ましい歩行練習

麻痺側への荷重が促せるように早期より長下肢装具による練習を開始し、ロッカー機能を装具の援助で促し、できるだけ多くの歩行練習を行うこと

背屈可動、底屈時に生理的制動がかかる装具の使用

前型の歩行

後方介助

フォアフットロッカー機能練習のために早期より階段昇降(特に下降)を行うこと


機能回復練習の限界

セラピストが他動で単純に反復させて動かすだけでは不十分。

随意的で意味のある目的を持った課題を達成するための動作が必要。

アルツハイマー病患者も練習の場で集中できていれば、手続き記憶での回復が見込める。


参考文献 運動機能回復を目的とした脳卒中リハビリテーションの脳科学を根拠とする理論とその実際 井上勲 相澤病院医学雑誌 第8巻 2010

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