月はついて来る
そこに何かが存在してるみたいに、じっと一点を見つめるのが昔好きだった。
でもそこには何もないことに気づいてた。
だから霊感がある人がずっと羨ましかった。
最初はかまって欲しくて始めたことだと思う。
何もない所を見つめていたらきっと「どうしたの?」って心配してくれるから。
でも少なくともそうすることで自分で自分が特別だと錯覚することができると知ったし、これは意味のあることできっと特別な何かがそこにあるのだと、まだ想像力の乏しかった当時の自分はそう思い込むことができた。
昔からそうやって気を紛らわすことを無意識のうちにやっていたことをふと思い出した。
今は帰り道に歩きながら月を指と指で挟んだり、人差し指の上に乗っけたりしている。
あの頃とあまり変わっていないのかもしれない。
何もない空間をじっと見るみたいに、何か意味のある行為にも思えるし、何の意味もないようにも思える。
今でもただのかまってちゃんなのかもしれない。
それかただの厨二病なのかもしれない。
昔おばあちゃん家から自分の家に車で帰る時に、車が動いて場所が変わってるのに、月も一緒に動いていてそれが不思議でたまらなくて、車の窓の中からずっと月を目で追っていたことをよく覚えてる。
その時に思いついた言葉を今でも覚えてる。
月はついて来る