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ゴルフにおけるジェンダーギャップ

ほとんどの人が気がついていないのか、そのようなものは存在しないと思っているものに、ゴルフに大きなジェンダーギャップが存在することを。

現在、ジェンダーについていろいろな分野で注目されるようになったことはとても良いことでSDG'sでも取り上げられていることでも分かります。
ではゴルフに存在するジェンダーギャップにどのようなものがあるかと言えば私は特徴的なものが2つあると見ています。
その一つは女性用ゴルフクラブの存在で、もう一つは女性用と称するティーイングエリア(ティグランド)です。

女性は男性に比べて「小さく、力はなく、か弱い」という固定概念からきているものです。この概念はいつからきているのでしょうか?
おそらく概念化されていることから見ればかなり前から社会に根付いているもので違和感を感じないくらい普通に思われています。だから相当古くから存在するものでしょう。
確かに女性は平均して見れば男性に比べて小さく、力が弱い部分はあります。しかし、女性でも背が高く、力も強い人もかなりいます。ではなぜそのような概念が存在するのでしょうか? 

心の深い部分で、ひょっとしたら気がつかないところで男性は女性より優れている、という考えがあるからだと思います。なぜ、気がつかないかと言えば長い時間をかけて男性中心社会の仕組みの中でできあがり、いまでもそれが残っているからです。
レディファーストという表現や男子厨房に入らず、専業主婦と言う言葉も同じところからきています。これらは明らかなジェンダーギャップであり男女平等と言われている中の不平等が日常生活の中で普通に存在しています。

ゴルフが他のスポーツに比べて女性の参加率が低いのはそのような空気感があることを女性が感じているか、もしくは他にも理由があるのでしょうか。

「女性用」というゴルフクラブの存在
女性用ゴルフクラブという存在もジェンダーギャップの良い例です。
ゴルフクラブはゴルフをする道具です。道具はある目的を達成するために素手で行うよりも簡単に正確にそして確実にできるように人間が経験と知恵を働かせて考え、作ったものです。そこには男性用・女性用と区別する必要はなく、単にそれを使う人が目的を達成するための道具でしかないのです。
しかし、ゴルフクラブだけはどういうわけか女性用が存在し、それが当然のことのように作る側も使う側も全く気がついていないように思えるのです。

普段日常でよく使う道具を見ればよく分かります。例えば料理に使う包丁、フライパン、鍋など男性用・女性用と性別で分けて製造はしていません。用途に応じていろいろなサイズ、形、重さなどの種類があり使う人が目的に合わせて選択するだけです。
スポーツの道具ではどうでしょうか。テニスのラケット、バトミントンのラケット、スポーツ用自転車、アーチェリー、サーフボードやスノーボードなど例をあげればいくつもあります。どれも女性用と称して製造販売しているものはないのです。

どうしてゴルフクラブには「女性用」存在するのでしょうか? メーカーの人はこのように言います。「女性は男性に比べて小さく、力もないので男性用よりも軽くて振り切れるものが必要だからです」と答えます。一見、なるほど、と思うかもしれません。しかし、「他のスポーツ用品はどうなんですか」と聞けば返答に困るはずです。矛盾に気づくからです。
ではなぜ、ゴルフだけ「女性用」が存在するのでしょうか?

ゴルフを社交として位置づけ、普及してきた中での男性中心的な社会とそれに付随する思想がゴルフには強く現れているからです。だから「最初から女性はこうだ」と限定しています。確かに身長や力を比較すると平均的にはそうかもしれません。だとすれば非力で小さな人ほど最も飛ぶゴルフクラブが必要です。しかし、現実はどうでしょうか? なぜか逆なのです。
「女性用」と表示されれば女性は何の疑問も持たずにそれを使うことになります。最も飛距離が欲しい人たちが、飛ばないクラブを使っている矛盾があることを知って欲しいのです。

しかし、すでにその矛盾に気がついている女性たちがいます。競技ゴルファー特にプロゴルファーやトップレベルのアマチュアゴルファーの多くは男性用を使用しています。
彼女たちは女性ではないのでしょうか? そうではありません。彼女たちは女性用クラブが飛ばなくて自分たちには難しいクラブだから単に使用しないだけなのです。

女性用クラブとはどのようなものでしょうか。まず、男性用と称するクラブより2インチほど短く、重さも10g以上軽く、シャフトは柔らかいものが装着されています。
確かに軽いクラブはヘッドスピードを出せる可能性がありますが、軽いクラブでその効果を引き出せるのはむしろ力のあるプレイヤーなのです。軽いクラブは初期の段階でスピードを得られますが、トップスウィングの位置からスピードを上げながらインパクトを迎えるには非力な人には難しく、実は大きな力が必要なのです。非力な人はスピードが出せないままインパクトを迎えます。

わかりやすく説明すると、同じ径の2つのタイヤがありAはタイヤの太さが狭く重量も軽いもの、Bはタイヤの太さが太くAより重いとします。
これを10mくらいの坂道を同時に転がしたらどうなるでしょうか?
最初はAのタイヤが先に転がり始めますが、途中からBに抜かれて、平らなところに来たらBの方がはるかに遠くまで安定した転がりでかなり先の地点まで転がっていきます。AはBよりかなり後方で止まってしまいます。物体の重さが慣性力となって大な力を発揮するからです。
それに人間の体は対応能力に優れていて、軽い道具を持ち続けることで、それを機能させる必要最低限の力で動かそうとします。少し重い道具であればそれをしっかり機能させるためにより多くの筋肉を使って力を発揮させます。腕の長さも短く、軽い、しかも肩幅も小さい人は加速したクラブのスピードを維持できないのです。そこでクラブの重さと長さを利用し、その慣性力を利用して飛ばすべきです。軽いクラブのメリットを引き出すには唯一重いクラブで慣れている体で軽いクラブを振ることでヘッドスピードをあげることができるのです。

このような数式でも証明できます。
E=1/2MV2   
 E:インパクト時のエネルギー M:ヘッド重量 V:ヘッドスピード

インパクトでのクラブヘッドからボールに伝達されるエネルギーはヘッド重量が重く、ヘッドスピードが大きいほど飛ぶことになります。
女性用クラブはMが小さくVも大きくできません。力のある人はVを大きくできるので二乗の大きさでエネルギーを伝達できるから飛ばせるのです。

ゴルフをスポーツ、レジャーとして位置付けるなら「女性用」というカテゴリーは撤廃すべきであることはお分りいただけたのではないでしょうか?
ただ、スペックに関して言えばこのようなスペックは存在しても構わないのです。それが適切なゴルファーは存在するからです。
つまり「男性用」「女性用」という表現をやめるべきで他のスポーツ道具と同じに目的や使用頻度、体力などを考慮して選ぶだけで良いのです。

さて、どのメーカーが真っ先に「女性用」という表記をやめてジェンダーフリーのクラブまたはカテゴリーを作り始めるのでしょうか。
「女性用」として明確に存在が認められるのはファッション(着るもの)だけでGEAR(道具)には性別で区分けは不要なのです。

女性ゴルファーが増えない本当の理由
多くのゴルフ関係者はゴルフの普及に奔走しています。日本の人口減少の傾向以上にゴルフ人口の減少割合が大きく将来ゴルフ市場が縮小してしまうからです。
ゴルフが他のスポーツと比べても特異なのはゴルファーのコア層が60代であり男性がその80%以上も占めています。ゴルフ人口を増やすには女性と若い世代にゴルフをやってもらうのがもっとも効果的なのですがなかなか成果が出ていません。なぜなのでしょうか?

女性ゴルファーを増やそうと女性用のお風呂やアメニティの充実、食事やレディスデイの設定でプレイ料金を安くすることが行われていますが現在の女性ゴルファーにとっては効果があっても新規の女性ゴルファーを増やす効果はどうでしょうか。

むしろ根本的な問題がどこにあるのか掘り下げて考えてみれば、女性がゴルフをしたくなる、女性がゴルフ場や練習場に行きやすい環境を積極的に作り出すことが優先課題なのです。

ジェンダーギャップの解消こそが女性ゴルファーの増加につながる
現状、女性ゴルファーの年齢別人口は男性のそれと同じような分布ですがその数が極端に少ないのです。なぜでしょうか? 
男性のようにゴルフに行く環境が女性には整っていないからです。
一つは結婚して子育てに入るとゴルフができない状況が浮かび上がります。また、仕事を持っている女性は仕事でゴルフが必要な場合でもできにくい環境があり、男性に譲ってしまう、せっかくやり始めたゴルフを中断せざるを得ない環境が存在するのです。

女性が男性と同じようにゴルフを楽しむには男性の意識改革と行動が必要なのです。それがない限り女性ゴルファーは増えないと思います。
例えば、ゴルフに行きたい女性に対して男性が「私が子供を見たり家事をやっているからゴルフ行っておいで」という家庭がどれだけあるでしょうか? 仕事でゴルフに行く場合も家庭や職場でやるべきことをやってくれる人がいない限り安心してできないのが現状です。

ゴルフが男性中心であることが見えてきたと思います。
専業主婦ではなく専業主夫がいても、それは夫婦間の問題であり、どのような人生を歩むかは男性も女性も平等であれば誰かがやるか、一緒にやれば良いのではないでしょうか?
今、ゴルフを始めている女性は多くが男女カップルでゴルフを始めた方やリタイヤした夫に勧められゴルフを共通の趣味としてやっている方々で、30代から50代の人口の中核をなす女性はまだまだゴルフを男性のようにできる環境ではないのです。
「ゴルフは楽しい、やりましょう!」といくらキャンペーンを張っても、「やりたいけどできないのよ、なんとかしてくれる!」という女性の切ない声が聞こえてくるようです。
ゴルフ界に突きつけられた大きな、大きな課題です。
再度言います。女性ゴルファーを増やすには男性の意識改革とゴルフ場のプレイシステムの変更が急務なのです。
ゴルフ関係者はゴルフの普及を真剣に考えているなら、潜在的に存在するジェンダーギャップを無くして、誰もが楽しめるようなゴルフスタイルを構築するように男性の意識改革をして欲しいと思うからです。

男性は女性より優れているのではなく、女性にも男性より優れている点は多々あります。それを認めあって初めて平等と言えるのです。

このギャップの解消、日本から始めたいですね。世界に先駆けて…

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