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路線バス車内で多かった忘れ物・珍しい忘れ物

 私は3年ほど路線バス会社の事務員として働きましたが、事務員の仕事の1つとして「乗客の忘れ物の処理」があります。バスはその日指定された運行をしますが、乗客は降りる時に忘れ物をする場合があります。運転士は随時車内をチェックをし、忘れ物があればそれを回収して、休憩時や退勤時に車庫に戻ったら営業所に預けます。事務員は1日で回収された忘れ物を紙の帳簿やExcelでリスト化し記録、物は保管されます。物自体にも回収されたバスの号車数、日付、時間帯、路線を記入した札を付けておきます。遺失物を営業所で保管する期間は、会社によって違ってきます(ちなみに私のいた会社は2週間でした)。期間を過ぎたら管轄内の警察署へ届け、やがて傘や衣類といった個人情報を識別できない日用品などは「忘れ物市」と呼ばれる競売に出されます。
 ちなみにバス車内で忘れ物をしたら、乗った路線を管轄している営業所に電話をし、乗った路線・乗降したバス停とその時刻を伝えます。これらが分かれば乗ったバスが何号車か特定できるので、営業所側で忘れ物の有無を確認します。営業所からは走行中の運転士宛てに短文メッセージを送ることができます。〇か×かで返事ができるので、「忘れ物があるかどうか」というメッセージを送れば、停止中に運転士は返事をします。運転士が忘れ物を回収済だったらそのことを乗客に電話で伝え、バスの走行予定を見て営業所まで取りに来るよう促します。

1. 回収されることが多かった忘れ物

 路線バスの忘れ物は、1日で10件ほどあります。勿論日によって多い日も少ない日もありますが、やはり雨の日に多いのが傘です。長傘と折り畳み傘を合わせると、雨天時は1日合計15本ほどは回収されます。傘専用の保管場所があるくらいでスペースも取りますが、乗客が取りに来る確率は低いというのも大きな特徴です。私も電車で傘を忘れたことはありますが、忘れやすいかつほとんどが安物なので、高級品だったり思い出深いもの以外は落とし主からの問い合わせは無く、残念ながら警察署へ送られます。
 買い物帰りで忘れられた食料品もよく回収されます。ビニール袋に入った野菜や果物・お菓子などその種類に偏りはありません。ただ、その日の夕飯に使う予定だったものもあるので、乗客が取りに来る確率は比較的高いです。ただ、生ものだったり日持ちしないものは24時間が経った段階で廃棄される可能性が高いです。保存が利くものでもいつまでも営業所の冷蔵庫に入れておくわけにはいかないので、問い合わせがない限りは食料品の長期保管はされない傾向にあります。ちなみに、入れていたビニール袋は廃棄する際に一緒に捨ててしまいますが、エコバッグの場合はバッグのみ保管しておきます。
 食料品に関連して、弁当箱や水筒の忘れ物も多かったです。これは弁当箱単体というよりも、夕方以降によくある学生カバンの忘れ物の中に入っているケースです。中身が入っている or 入っていた弁当箱は一晩放置しておくだけでも衛生上非常に良くないので、見つけたタイミングで営業所の方で中身を洗っておきます(中身が残っていたら廃棄)。これは水筒も同じです。
 季節限定のものとしては、冬季にはマフラーや手袋(片方のみ)がとても多いです。他にも小物系として鍵・書籍・メガネ・スマホ等が恒常的に回収されていました。

2. 印象的だった珍しい忘れ物

 忘れ物として回収されるものは大抵は納得のいくものですが、時々「何だこれ!?」と思うものはあります。
 強烈だったのはくさやです。どこで買ったかは分かりませんが乗客がバスに置き忘れ、運転士が嫌な顔で営業所に持ってきました。冷凍ものだったとはいえ確かに匂いはして、記録した後はすぐに冷凍庫に入れました。そのくさやは翌日購入者がやってきて無事に引き取られました。もし購入者からの問い合わせが無かったら回収翌日には廃棄になったと思いますが、捨て方も少し考えなければいけなかったかもしれません。
 2つ目はカブトムシです。虫籠に土とゼリーと一緒に入った生きたカブトムシが回収されたのです。「生き物」に関しては流石にどの事務員も未経験で、対応法を本社に仰いだのを覚えています。返答が来る前に小学生が取りに来たので事なきを得ましたが、あらゆる対処法にも当てはまらない代物だったので、落とし主が現れなかったらどうするべきだったのかは気になる所です。

 バス車内の忘れ物は無くなることはありません。バス会社としては大切に保管し、持ち主にしっかりと届くことを常に願っています。


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