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固有名詞の意味の深読み

下記の短編を読んだ知人からメールをもらいましたが、スーパー・やおいの《やおい》に関して、
「なぜ、この名を?」
「意味は《BL》のはずだが?」
と疑問を呈されました。

このシリーズを書き始めた時、懸念したのは、
(同じ名で実在の店があるといけないな……)
現存せずとも、因果関係なく発生するかもしれない。
『この話はフィクションであり、実在の人物・団体とは……』
と末尾に付けるのも何か『冷や水』のようだし……。
そこで、絶対に存在しないであろう名称を付けよう、と思ったわけです。

《Boy's Love(BL)》という言葉が知れ渡り、若者は知らないかもしれませんが、かつて《やおい》とは、主に女性向けのマンガや小説のジャンル名で、男性同性愛を指す言葉でした:

(うん、さすがにこんな名前のスーパーは存在しないだろう)
米国イリノイ州の田舎町に住んでいた頃、シカゴの『YAOHAN(ご存じ、かつて世界規模の小売チェーンであった日本発のスーパーです)』に時々日本製品を買い出しに行ったこともあり、
(ヤオ**って、スーパーマーケット名らしいじゃん!)
との個人的印象もありました。

これまでnoteでは《やおい=BL》に関するコメントは(たぶん)1度しかいただいたことがなかったのであまり気にしていませんでしたが、
《固有名詞に関する深読み》
は予想以上に多いかもしれない。

私自身、かつて書いた大学を舞台にした小説では、
「鈴本教授って、鈴木先生のことでしょ?」
会社を舞台にした小説では、
「広野っていう社員さ、大野くんがモデルなんだろ?」
などと《深読み》されたものです。

となると、《やおい》も実は作者が意図しない《深読み》をされているかもしれない……

(うーむ……たとえば、誰も質問してこないけど、主人公の歩美あゆみちゃんも、中島チーフも、他のレジ係も、実はみーんな男性で、『やおい系の社員で構成されているスーパー』と《超・深読み》している人がいるかもしれない!)

……まあ、そんなことはないだろうけど、タイトル中の《やおい》を見て、
「私、こういうのダメ!」
とアタマから拒否
されているかもしれない。

……後者はありそうだ。

あらぬ誤解を避けるため、歩美あゆみちゃん(女性です!)の働くスーパーマーケットを近々改称する予定です。

……といっても、なかなかいい名が思い付かない。
世の中の店名にはなく、深読みに耐え、しかも、意外な頓智トンチも効いている ── そんな名前ないかな、と首をひねる今日この頃です。


なお、実は《やおい》の語源は、もともとは雑誌投稿したマンガ原稿に対する編集担当からの《酷評》:
マがない」
チがない」
味がない」
の頭文字を続けたもののようで、こちらの方が知れ渡っていれば、それなりに面白い名のスーパーマーケットなのですが……。

いかんせん、《やおい=BL》が知られすぎていますよね……。

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