見出し画像

海外で初対面の人を信じる?

先週バンコクで大きなモールの中をひとりで歩いていたら、50歳代ぐらい(もう少し上かな?)の白人女性に呼び止められました。
「英語が話せる? あなた、どこから来たの?」
「日本からだけど……」
てっきりナンパかと……いやいや、そうではなく ──

・オーストラリアからの旅行者だが、タイに来て、クレジット・カードが突然利用停止になり、使えなくなった。どうやら誰かにカード情報を勝手に使われ、限度額を超えたらしい。
・ATMで現金をおろすこともできなくなり、金がなくて困っている。家族と会う明日までの金がなく、ホテルにも帰れない。
・こんなことを人に頼むのはつらいが、現金をもらえないだろうか?

(日本人だったら「貸してもらえないだろうか」と表現するところだろう ── ホントにしてもウソにしても)

さて、あなたならどうするだろうか?
見た目は普通のオバサン旅行者である。
過度に演技している様子はなく、困った様子ではあるが、必死という感じでもない。

そのモールは Bangkok の繁華街Asokにある『ターミナル21』。このモールは各階ごとに世界の大都市をテーマにしており、1階(日本で言えば3階)は『Tokyo』で、フロアには怪しげな日本語だったり日本文化だったりが散りばめられられている。
(2階はロンドン、3階はイスタンブール、4階はサンフランシスコなど)

原宿、日暮里、乾杯、松、竹……なんだ、これは??
お相撲さんが柱に「てっぽう」……いやいや、どうみても「ハグ」でしょ?
赤い鳥居まで……
巨大な招き猫がウィンクしながら歓迎してます……

こりゃオモロイ、と写真を撮っていたら声をかけられたので、最初から日本人とわかっていた可能性もある。
( お金の件がホントにしてもウソにしても)

「警察に行って事情を話せば金が借りられるのではないか?」
そうアドバイスしたが、
「いや、この国の警察は相手にしてくれない。私は本当に困っている」
「……うーむ」

さて、皆さんはどう反応します?

「私はバーツを持っていない。買い物はクレジットカードで行うので」
そう答えると、
「そのクレジットカードでATMから現金を下ろせないか?」
「いや、下ろせないカードだ」
(実際、これまでそのカードで現金を下ろしたことはなく、暗証番号も知らない or 憶えていない)
「Japanse YENでもいいんだけど、持っていないの?」
「持っているが、ホテルの部屋に置いてある」
── これも事実である。
「そうなの……」
彼女は首を傾げ一瞬考えたが、残念そうに去って行った。

オバサンが私と一緒にホテルの部屋に行くのは危険だと思ったのか、単に面倒だと思ったのかはわからない。
もちろん、私がこのオバサンに対して妙なことを考えるようなマニアックなジジイでないことは強調しておきたい。

「じゃあ、部屋に行く」
と言われたら、少々困ったかもしれないが、その時はホテルのフロントに連れて行って相談するのかいいのかもしれない ── オーストラリア大使館に連絡して、トラブルを解決してやってくれないか? ── と下駄を預けるなど。

こうした懇願に、数千円ぐらいなら貸そうか(この場合は「あげようか」)と思う人はいるでしょうね。
私も ── どうだろう、25%くらい? ── そういう気持ちになった。
相手が流ちょうな日本語を話す自称日本人なら40%ぐらいに跳ね上がったかもしれない。

いやいや、ひょっとしたら ──
オバサンと話している間にも目に入って来る、

── 原宿、日暮里、乾杯、松、竹……

などという、それぞれの店舗で売っている商品とはまったく関係のない『日本の地名や単語の羅列』看板が、

「うさんくさい、うさんくさい、うさんくさい……」
と脳内で響いていたのかもしれない。

何せ、見上げれば、「しあわせ」とか「嬉嬉として」などと書かれた提灯や、フシギなカタカナの暖簾のれんがぶら下がっているのだから……

新しいカタカナ文字がどこかで考案され、私だけまだ知らないのかも……

この記事が参加している募集

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?