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いつの間にか「大丈夫です=No, thank you」

「ハンバーガーひとつ、単品で」
「ポテトとドリンクのセットでいかがですか?」
「大丈夫です」
前に並ぶ若い女性が言った。

『単品で』とわざわざ付け足しているのにセットを押し売りするなよ……と思いつつ、むむ、この『大丈夫』用法、かなり広まっているなあ……『常套句辞典』に入れないと……と女性の後頭部を見つめる。
もちろん、後頭部ならば、セクハラには該当しないからだ。

振り返れば、この用法に初めて触れたのは、長女が高校生の頃、
「今週、学園祭なんだろ? オレも行ってみようかな」
との提案に、
「あ、大丈夫、大丈夫」
「はあ? 大丈夫……って?」
「来なくていいから」

もちろん、彼女が自分のテリトリーから私を遠ざけようとするのは小学生時代のエピソード以来、一貫している。

(うーむ……『大丈夫』とな?)
つまりはこの単語を、
『No, thank you=私は欲していない/要りません』
の意味で使っているわけだ。
その後、この用法に触れる頻度は増した。

『だいじょうぶでーす』
なんてのは、かなり、
『余計なお世話でーす=None of your business』
に近い状況で使われるらしい。

おかしな用法であーる!
おそらくは、当初、
『I am fine=私は大丈夫』
の意図で使われていた『大丈夫』が、
『I am fine without your offer/proposal=要らないっス』
のように変化してきたのだろうね。

まあ……こうして日本語は進化しているのだ……と考えることにしよう。

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