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よにでし読書会 3月22日開催 解説①

 今月の書籍:『お金の向こうに人がいる』 
 開催日:2024年3月22日金曜日 20:00~21:30




●お金の向こうに人がいる

著者:田内学
出版年:2021年
出版社:ダイヤモンド社

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▼▼▼各章の冒頭の14のQuestionとその答えが秀逸▼▼▼

Q1:すべての人が日曜日に休もうとしている。そのための準備として、ふさわしくないのは次のうちどれだろうか?
 A 平日のうちに、学校の宿題や課題を終わらせておく
 B 平日のうちに、洗濯や掃除などの家事をしておく
 C 平日のうちに、バイトや仕事をして使うお金を貯めておく
 答え:C

Q2:日本中の人が紙幣を使い始めるようになったのは、どうしてだろうか?
 A 金(きん)に交換することができたから
 B 税金を払わないといけないから
 C 日本銀行がその価値を保証しているから
 答え:B

Q3:新国立競技場建設には1500億円かかった。では、エジプトのピラミッドの建設にかかったお金は、現在のお金に換算するといくらだろうか?
 A 4兆円
 B 1250億円
 C 0円
 答え:C (お金は必要なかった)

Q4:1万円の福袋を買ったら、高価そうなジャケットが入っていた。あなたは得をしたのだろうか、損をしたのだろうか?
 A ジャケットの定価による
 B ジャケットの原価による
 C ジャケットを気に入るかどうかによる
 答え:C

Q5:子どもが学校で勉強できるのは誰のおかげだろうか?
 A 保護者や政府など、お金を出してくれる人のおかげ
 B 学校の先生など、働いてくれる人のおかげ
 C AとBは経済の捉え方の違いで、どちらも正しい
 答え:C

Q6:社会全体のお金を増やすには、どうすればいいだろうか?
 A 銀行に預けて利息をもらう
 B みんなが働いてお金を稼ぐ
 C 基本的には増やすことはできない
 答え:C

Q7:社会全体の預金を増やすために必要なことは何だろうか?
 A たくさん働いてお金を稼ぐ
 B お金を投資に回さずに預金として銀行に眠らせておく
 C 誰かに借金してもらう
 答え:C

Q8:値上がりしそうな会社の株を10万円で購入した。その10万円は、主に、どこに流れるだろうか?
 A その会社の設備の購入や従業員の給料
 B その会社が銀行から借りているお金の返済
 C その会社とはまったく関係ない人々の生活
 答え:C

Q9:次の選択肢は、どれも僕たちの生活を豊かにしてくれる。このうち、「経済」を成長させるのはどれだろうか?
 A 生産技術を向上させて、大画面のテレビを安く売ること
 B 価格は上がるが、テレビに新しい機能をつけること
 C 品質管理を徹底して、テレビを壊れにくくすること
 答え:B

Q10:次のうち、政府が集めた税金で解決できる問題はどれだろうか?
 A 貧困問題
 B 年金問題
 C 政府の借金の問題
 答え:A

Q11:日本はアメリカとの貿易で毎年数兆円も稼いでいる。この貿易によって、生活をより豊かなものにしているのは、どちらの国の人々だろうか?
 A アメリカ
 B 日本
 C 同じくらい生活が豊かになっている
 答え:A

Q12:ハイパーインフレが起きているとき、人々の生活を苦しめている根本的な原因は次のうちどれだろうか?
 A お金の価値が下がること
 B 社会が混乱すること
 C 労働が足りなくなること
 答え:C

Q13:日本政府が借金を増やすことは、将来世代を苦しめるだろうか?
 A 当然、苦しめる
 B そのお金で何を作ったかによる
 C そのお金で誰に働いてもらったかによる
 答え:C

Q14:僕たちの抱える老後の不安を解消する方法は次のうちどれだろうか?
 A 他の人よりも多くのお金を貯めておく
 B 外国に頼れるように外貨を貯めておく
 C 社会全体で子どもを育てる
 答え:「僕たち」の定義次第で、正解は変わる


、、、Q1~14は導入の部分に書かれていて、
これが本書の「内容の予告」のような形になっています。
「お金とは何か」ということに関して、
私達の多くは「勘違い」しているという前提で田内学さんは語ります。

田内さんはもともと、
ゴールドマンサックスでトレーダーをしていて、
国債などの金融商品を取り扱っていました。
そのキャリアの中で、
「何かがおかしい」と感じ始めます。
そして「お金についての知識を、
この国の偉い人も教育者も親も子どもも、
誰もちゃんと持ってないんじゃないか」
という危機感を抱き、
トレーダーをやめて、
「お金についての知識を啓発する仕事」を始めます。

現在では全国の学校で講演をしたり、
テレビやラジオに出演したり、
本を執筆したりしています。
私は因みに「ビデオニュース」という、
月に550円課金して見ているネット番組で、
田内学さんの存在を知り本書を手に取りました。

ちなみに田内さんの言う「お金の教育」とは、
国が今進めている、
「金融教育」「新NISAについて」「S&P500を買え!」
などとはまったく違う話です。
真逆と言っても良い。
そういった「勘違い」を正すことが、
この本の目的です。

ではそもそもお金は何のためにあるのか?

一緒に学んで生きましょう。


▼▼▼社会はあなたの財布の外側に広がっている▼▼▼

→P24~26 
お金が生活を支えていると思うと、自分の財布の中のお金にしか興味を持てなくなる。しかし、僕が一日を過ごすために、数万人の人が働いている。たとえ一日中僕が家で過ごしていたとしてもだ。
 朝起きて蛇口をひねるだけで水を飲めるのは、水道代を払っているからではない。見えないところで多くの人が働いているからだ。
 水源地を管理する人、水質検査をする人、水道管を修繕する人。水を飲むことができるのは彼らのお陰だ。どんなにお金を払っても、誰も働いてくれない無人島で水を飲むことはできない。一日を過ごすだけで、無数の人々に支えられている。
 同じように、あなたが働くことは誰かを助けることでもある。家の中で家事をすれば家族を助けている。家の外では仕事を通じて見知らぬ誰かの生活を助けている。
 誰の役に立つのか実感しにくい仕事だって、どこかに必ず「お客さん」がいる。あなたがもらっているお金を辿っていけば、必ず誰かにたどり着く。あなたは必ず、誰かを助けている。

 社会は、あなたの財布の外側に広がっている。僕たち一人ひとりは助け合っている社会の一員だ。ところが、自分の財布の中のお金だけを見て暮らしていると、登場人物が自分だけになる。社会の話が、自分と切り離された話になる。だから「お金さえあれば生きていける」と錯覚してしまうのだ。
 老後の生活の不安をなくすためには、お金さえ蓄えておければ大丈夫だと多くの人が信じている。それは、お金だけ握りしめて樹海の中を1人でさまよっているようなものだ。しかしそのままでは、幸せな未来には辿り着けない。

 僕たちが樹海で迷っているのは、手元にある「経済の羅針盤」が正確ではないからだ。その羅針盤には今、「お金には価値がある」としか書かれていない。
 僕たちが知っているお金の話は、財布の中の話ばかりだ。
 どうやってお金を稼ぐのか。
 または、どうやってお金を増やすのか。
 そして、どうやってお金を貯めるのか。

 でも、「財布の外」の世界については、あまり考える機会がなかった。
 僕たち一人ひとりは別々の樹海を歩いているわけではない。同じ樹海を歩いている。そこで、支え合いながら生きている。正確な羅針盤を手に入れれば、樹海の木々が共に支え合う人々だと気付く。正しい羅針盤を手に入れれば、道に迷うこともない。

、、、「財布の中だけ見ていてもお金のことは分からない」。
と田内さんは言います。
「お金には価値がある」としか羅針盤には書いていません。
でも「財布の中」を凝視しても、
お金の本当の働きは分かりません。
「社会はお金の外に広がっている」のです。

この社会が社会であるために、
そしてみんなが幸せになるために、
人類は「お金」という大発明をしました。
ここから考えないと、お金のことは分かりません。

じゃあ、お金は何のため?

端的に言うと、
「人が人のために働く社会を実現するため」です。

田内さんはある「思考実験」を紹介しています。

引用します。


▼▼▼お金は「みんながみんなのために働く社会」をつくるという点において価値がある▼▼▼

→P42~46 
ここに両親と4兄弟で暮らす6人家族がいる。子ども達はスマートフォンばかりいじっていて、自発的に家事を手伝おうとしない。そこで両親は一計を講じ、家庭内で流通する紙幣を作って税金を徴収することにした。
 中央銀行の役割を担うお父さんは、「1マルク」とだけ紙に書いて自分の印鑑を押す。この1マルク紙幣を100枚用意した。
 政府であるお母さんは「100マルク借ります。1年後に返します」とだけ書いた借用書をお父さんに渡して、お父さんから1マルク紙幣を100枚受け取る。この借用書は、まさに国債(政府の借金の借用書)だ。
 お父さんは100マルク分の借用書を保有して、100マルク分の紙幣を発行した。これは、日本銀行が国債を保有して円の紙幣を発行しているのと同じ状況だ。
 お母さんの手元には100マルクあるが、借用書をお父さんに渡しているから100マルクの返済義務もある。紙幣発行によってお母さんが儲けているわけではない。この時点では、1マルクに価値を感じている人は誰もいない。
 これで準備完了だ。
 ある晩、4兄弟は夕食の準備を手伝わせられる。そのお駄賃として、4人それぞれに、1マルク紙幣が5枚ずつ、手渡された。
 「え、この紙は何?」とつぶやく長男。
 長男を横目に、お母さんが言う。
 「これからは、お父さんもお母さんも会社の仕事に専念します。みんなが自分たちで家事をして生活してください。その代わり報酬を出します。調理担当者には毎日10マルク支払います。食器洗い担当者には毎日5マルク。洗濯は1回につき10マルクです」
 きょとんとしている子ども達に向かって、最後にお母さんはこう宣言する。
 「そして今日から税金を払ってもらいます。税金を払わないとスマートフォンを取り上げます」
 「えーーーー!」
 スマートフォンが生活必需品の4兄弟にしてみれば、強制力のある徴税だ。この瞬間、4人の手元にあるただの紙切れが価値を持った。紙幣が誕生した瞬間だ。
 子ども達の視点でマルクは価値ある存在になった一方、一家全体の視点では価値が増えたようには思えない。100マルクという紙幣が作られただけでは、この家の生活が豊かになったわけではないからだ。
 しかし、新たな紙幣と税の導入で、4人は自発的に働くようになった。調理担当の長男と、食器洗い担当の次男は、みんなのために働く公務員だ。四男は洗濯という公共事業を、毎日1回受注している。
 家事が苦手な三男は、毎日四男から5マルクもらって勉強を教えることにした。三男は塾を経営しているようなものだ。これで4人全員が税金を払えるようになった。マルクの導入によって、みんなのためにみんなが働く社会が作り出されたのだ。
 しばらくすると、税金の支払い以外にもお金を使うことが増えていく。長男は5マルクを次男に払って自分の部屋の掃除をしてもらい、次男は、四男が摘んできた花を4マルクで買った。
 こうして、紙幣を使った貨幣経済は、公的サービスだけでなく民間サービスにも広がり、家庭内に通貨として普及する。これが僕たちの使っている紙幣だ。
 この家庭内紙幣の例で分かるように、紙幣自体に価値はない。税金というシステムを導入することで、一人ひとりにとっての価値が生まれる。そして、紙幣を手に入れるために、みんながお互いのために働くようになるのだ。


、、、ほとんどのすべての国家で、
「納税」を仮想通貨で行うことや、
外貨で行うことが認められていない理由は、
近代的な貨幣はそもそも、「納税」のために創られた、
という田内さんの理論に照らすとその理由が分かります。

明治以降日本の「納税方法」が「円」のみになりました。
農家が大根で納税をできた江戸時代には起きなかったことが起きます。
農家は大根を売って「円」に替える必要がでてくるのです。
それまで農家の屋根を葺いてあげることで、
大根と米をもらっていた職人もまた政府に「円」を納める必要があるので、
屋根を葺いた「代金」を円としてもらう必要があります。

最初の「円」はまず、
農家が町で大根を売るところから始まり、
その円の一部は納税に、
一部は職人に払われます。
職人は手にした円の一部を納税し、
一部をまた別のサービスやモノの購入に使います。
そのサービス業者や販売者はまた円を手にします。

どうでしょう。

「円」と「納税」というシステムを導入すると、
農家と職人という「閉じた社会」が、
町と社会に開かれました。
それによって社会は複雑化し、
「分業」が起きます。
かくして各人は「円」を稼ぐために必死に働いた結果、
有名な「見えざる手」が働き、
気付けば社会全体が豊かになっています。

そう。

田内さんの思考実験は、
古典『国富論』でアダム・スミスが言ったことをなぞっているに過ぎません。
デイヴィッド・リカードの「比較優位」の概念もここから発展します。

注目すべきは「お金」自体ではありません。
逆に誰かがお金を貯め込むこと自体を目的とすると、
「誰かが誰かのために働く」という社会がそこで目詰まりを起こします。
日本の個人の金融資産(特に預金)が世界最高クラスなのに、
先進国で圧倒的に経済がうまくいってないのって、
そういうことですよね。

「社会の潤滑油」というお金の役割を忘れ、
一斗缶に油をため込むことが豊かさだと勘違いした人が増えたから、
日本の経済は不調を来しているのです。

話はまだまだ終わりません。
次週に続きます。

この本を今月の第四週の金曜日に学んでいきます。
読書会のチケットは以下からご購入いただけます。
限定5枚なので、参加検討の方はお早めに!


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