見出し画像

ま 「マキアート」


2009年に2か月、エチオピアに滞在した。その後も2度、エチオピアには行っている。その時の記憶は今も鮮明に焼き付いている。アジスアベバの砂埃、薄ら寒さ、標高2400メートルの酸素の薄さ、帰りがけに暗がりで見たハイエナ、昼間にひなたぼっこしてたら迷い込んできた猫ぐらいのサイズのリクガメ、主食のインジェラの酸っぱさと香辛料の香り、やたら早朝から人々が走っていて、「走る」が最大の娯楽のひとつであること、温水器が基本的に壊れているので寒い中冷水のシャワーを浴びる悲しさ、乗り合いバスの少年にの指の間に挟まれたブル紙幣の汚さ、同じく乗り合いバスで隣に座った人から移ったノミの影響でしばらく身体が痒かったこと。

今も僕の中に様々な「エチオピア」はあるのだけど、なかんずく思い出すのはマキアートの香りだ。エチオピアはコーヒー発祥の地で、「コーヒーセレモニー」といわれる、日本の茶道にも似たおもてなしの文化というか儀式があったりする。なぜかお茶請けは「塩味のポップコーン」なのが未だに謎なのだけど。加えてエチオピアはかつてイタリアに支配されかけたことがあって、その時の名残でイタリア文化が根付いている。だからインジェラ以外の外食のメニューはスパゲッティかラザニアになる。わりと美味い。さらに、これは現地で聞いたのだけど、イタリア支配時代に駐留した軍などのイタリア人が、払い下げのエスプレッソマシンと、「バール」といわれるエスプレッソやマキアートのショットを飲むコーヒースタンドの文化を残していった。

この文化のおかげで、アジスアベバには2分歩けばかならずコーヒースタンドがあって、朝ならばそこでドーナッツをつまみながら美味しいエスプレッソやマキアートが飲める。現地の人はそこで新聞を読んだりテレビでアルジャジーラのニュースを見たりしている。ドーナッツは正直美味しくないのだが笑、マキアートやエスプレッソはめちゃくちゃ美味い。コーヒーの味ってのは結局、豆の鮮度×マシンの性能で、エチオピアにはその両方がそろっているのだ。日本なら500円以上はとられると思われるマキアートが当時、30円以下で飲めた。今やエチオピアの物価が上がり、円の価値が下がったので、そんなに過激に安くはないと思うけれど、まだ100円台とかで飲めるんじゃないかな。またエチオピアに行きたくなってきた。


+++++++++++++++++++++
『800文字のあいうえ大喜利』最新記事は、
以下の無料メルマガを購読していただきますと、
毎週あなたにメールで届きます。
よろしければご登録ください!


NGOの活動と私塾「陣内義塾」の二足のわらじで生計を立てています。サポートは創作や情報発信の力になります。少額でも感謝です。よろしければサポートくださいましたら感謝です。