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僕は身体が弱い

自分の内外で起こっているすべてに人一倍気がつき、処理する人は、
精神的にかなりの負荷がかかり、
それゆえに体も人より早く疲労を感じます
―――エイレン・アーロン(『ひといちばい敏感な子』)


▼▼▼身体が弱いと気難しくなる?▼▼▼


僕は身体が弱い。
子どもの頃からずっと、
身体が弱い。

とても育てづらい子どもだったのだろうと思う。
気難しく繊細な人というのは身体も弱いのか、
それとも身体が弱いから気難しくなるのか。

統計学の基礎中の基礎によると、
「相関関係は因果関係を証明しない」わけだが、
身体が弱い人は、
心も繊細で、ゆえに「気難しい」人が多いように、
僕には思われるのだ。
繊細だとこだわりが強くなる。
僕の娘を見ているとよく分かるし、
僕自身を振り返っても当てはまる。

なんで「身体が弱いから気難しくなる」と考えるかというと、
仮に僕が身体の強い人間だったら、
もしかしたら今よりもおおらかで、
今よりも社交的で、
いや、外交的にすらなっていたかもしれないなぁ、
と類推するからだ。

僕は人混みが嫌いで、
人の多いところは堪えられないし、
「パーティ」なんてものは悪魔が考案したシステムだと思ってるのだが、
これは「身体が弱い」からなんじゃないかという仮説を立ててみる。
身体が弱い人間は、
小さな刺激が自分の中でハウリングして大音響に感じる。
だから音、匂い、人の気配、といった刺激が過剰に感じるだろう。
あと、身体が弱い僕は風邪を引きやすい。
年中小さな風邪を引いていて、
咳や鼻水や微熱や倦怠感と戦っている。
免疫力が弱いのだ。
これは筋トレしてもたいして変わらない。
本質的な身体の弱さというのは、
後天的な努力ではカバーできない。
ボディビル体型かつ身体が弱い、
ということもあるし、
中肉中背、痩せ気味、かつ身体が強い、
という状態だってあるわけだ。

じっさい、
僕の周囲にいる
「あの人身体が強いなぁ、羨ましいなぁ」
という人はたいてい中肉中背だったり、
ちょっと小太りだったり、
逆にガリガリだったりもする。

本質的な身体の弱さを、
「遺伝子ガチャ」に外れた結果引き当てた僕のような人間は、
すぐ風邪を引く。
身体というのは脳よりも頭が良いから、
僕の身体は「人が多いところに行くと、ウィルスや細菌をもらうぞ」
という警告音を発するようになったのではないか。
だからそういうところを避けるように、
身体が全力で警報を発しているのではないか。
脳が後で「僕は繊細な性格だから、HSPだから、内向的だから」
といった「後付けの理屈」をこねているのではないか。
そんな仮説を立てると面白い。

あなたのとなりにいる極度に繊細で、
それゆえに付き合いが悪く気難しい人は、
単に身体が弱いだけかもしれないのだ。

あなたのとなりにいるがさつでおおらかで、
細かいことは気にしない社交的な人は、
たまたま「身体が強い遺伝子」というガチャを引き当てた、
幸運な身体の持ち主なのであって、
「性格」はその結果でしかないのかもしれないのだ。

そうやって考えるとちょっと面白い。

「ちょっと何言ってるか分からない」
という人もいるだろうけど笑。

たぶんその人は、遺伝子ガチャに当たった人なのだろう。


▼▼▼身体が弱いと荷物が増える▼▼▼


僕は身体が弱いだけでなく、
小児ぜんそく持ちでもあった。
本当に辛かった。
5歳から12歳ぐらいまで、
本当に苦しんだ。
夜中、横になると呼吸ができないから、
椅子に座ってゼーゼーいいながら、
チアノーゼ気味になりながら、
「苦しい……苦しい……」と、
目に涙をためながら2時間、3時間、4時間、、、、
朝方までそうしていた。

特に携帯式吸引器が厚生省(現厚労省)に認可されるまでが地獄だった。
夜中僕の背中をさすりながら、
なぜか母の方が僕よりも泣いていて、
「できることなら身体を交換してあげたい」
という意味のことを言っていた。
親になった今ならばその気持ちが分かる。

ことほど作用に、
僕は親に迷惑をかけたわけだ。

1.身体が弱いことによって
2.身体の弱さから来る気難しさによって

本当に育てるのが難しかったと思う。
「もうええわ!!!」と投げ出さなかっただけでも、
僕の両親は(とりわけ母は)称賛に値する。

大人になっても、
身体の弱さと繊細さから来る気難しさは変わらない。
この2つを兼ね備えていると、
とかく荷物が増える。

「身体の弱さと荷物の量は比例する」
という仮説を僕は立てている。

今日は仮説がいっぱい登場する。

なぜ身体が弱いと荷物が増えるか。

単純に薬やサプリや、
人によっては枕やアイマスクや足をマッサージする機械や、
CPAPや耳栓や座るとき腰に当てる器具や注射器や、
そういった類いの医療やライフハックにまつわる道具が増える。

他にもある。

身体が弱いと、
気温や湿度の変化を、
身体が受け止められないのだ。
だから、今日は寒くなるかもしれないと思って、
カーディガンや上着やネックウォーマーや、
そういった類いの荷物が増える。

ビジネスホテルに泊まるのでも、
温泉旅館に泊まるのでも、
かならず上下スウェットとパジャマ用Tシャツと寝る時用の靴下を持って行く。
ビジネスホテルに置いてある、
人の形をした薄い布きれでは絶対に風邪を引くし、
温泉旅館の浴衣は寝てる間にはだけて風邪を引く。
春だろうが夏だろうが関係ない。
身体が弱い人間はいつだって風邪を引くのだ。

夏に旅行するにも秋の衣服が、
春に旅行するにも冬の衣服が必要だ。
それを着ることもあれば着ないこともあるが、
着る可能性があるというだけでもっていく。
持って行かなかった場合、
気温が下がったことで免疫が下がり、
旅先で風邪を引いて帰ってくる可能性が大なのだ。

ほら。

身体が弱いって大変でしょ。


▼▼▼身体が弱いことの良い点▼▼▼


でも、身体が弱いことにも良いことはある。
せっかく遺伝子ガチャに外れたのだ。
これを強みに変えてやらなきゃ、
損しっぱなしじゃねーか。
このままで終わってたまるか。

こういうしぶとさが、
僕にはある。

すべての短所は長所の裏返しで、
すべての長所は短所の裏返しなのだ。

だとすると、身体が弱いことの良さはなにか。

それは多分、
「身体が弱い人の気持ちが分かる」ことだ。

当メルマガによく登場するオードリーの若林さんは、
かつてラジオで春日に、
「お前、デリカシーがないよな。
 人の気持ちが分からないよな。
 身体が強いもんな。
 身体が強いやつって人の気持ちが分からないんだよな」
というような意味のことを言っていた。

パンツ一枚で寝ても風邪を引かず、
人混みの中に3時間いても疲れず、
めちゃくちゃな食生活をしても胃がもたれず、
ハードに仕事をしても週末に遊びに出かけられるエネルギーがある。
ビニール袋に現金とパスポートだけ入れて海外旅行に行っても、
別に支障はない。
路上で寝ても風邪引かないから。

そういう屈強な人は、
屈強じゃない人の気持ちが分からない。

3時間人混みの中にいたら、
その代償として9時間寝なければ回復しない人の気持ちが分からないし、
身体が弱いゆえに荷物が雪だるま式に増えていく人の気持ちも分からない。

身体が弱い人は、
お金で解決するのならお金を払う。
お金をケチって身体を壊すと、
最終的に収支はマイナスになると経験的に知っているから。

身体が強い人は、
お金をケチっても体力で乗り越えられるから、
無茶な移動や無茶な宿泊や、
無茶なやせ我慢で節約しても、
健康に何も影響がない。
だから身体が弱い人が身体を守るための出費(たとえば新幹線の指定席)を、
「贅沢だ」「甘えだ」と切り捨てる。

こういった意識の違いに、
若林さんはずっと傷ついてきて、
それを根に持っている。
芸人である若林さんはそれを笑いに昇華する。
身体は弱いが心はオラオラヤンキーの若林さんと、
身体は強いが心が若林さん以上の陰キャの春日さん、
というバランスがオードリーの持ち味だ。
見た目と内面が逆転している。

何の話?

オードリーの話がしたいんじゃない。
僕は身体が弱い、という話をしているのだ。

身体を強くするために、
いろんなことをしてきたし、
今もしている。
週5回筋トレをしてる人なんて、
たぶんこのメルマガ読者300人のなかにも僕以外いないだろう。
毎日8時間寝ている。
タンパク質をいっぱい取っている。
タバコは吸わない。
食事、運動、休息、生活リズム。
健康を扱った雑誌の特集号みたいな生活をしている。

それでも風邪を引きまくるし、
定期的に鬱病を発症する。

なんでやねん!!

と思う。

でも、きっとメリットはある。
それは身体が弱い人の気持ちが分かることだ。
「あの人はつらい思いをしているかもしれない」
といつも思えることだ。
「え?
 それは気合いが足りないからでしょ」みたいな、
絶望的な想像力の欠如に基づく無神経な発言で
人を傷つけずに済むことだ。
(クリスチャンの場合、
 後半が「信仰が足りないからでしょ」になる。
 勘弁してほしい)

そんなわけで、
身体が弱いことについて今日は考えてみた。

おわり。

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参考文献および資料
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『ひといちばい敏感な子』エイレン・アーロン


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