「フィリップ・M・パーカー」化するホリエ本

 あなたは【フィリップ・M・パーカー】という人物をご存知だろうか?
 どんな人かと言うと…なんでも

「史上最も多くの本を出版した人」

 だそうだ。
 その執筆総数…20万冊以上
 これはギネス記録になっているとかいないとか…。
 (※Wikipediaでしか見てないので自信が持てない)

 「えっ?どうやってそんなに書くの? 無理でしょ?」と思うかもしれないが、(上記のサイトの通り)まずはコンピューターを使い”検索条件”を提示。
 するとプログラムが独自のアルゴリズムで情報を収集し始め、そうして集まったデータ(リサーチ結果)を決まった雛形に落とし込めば、あっという間に本が完成するのだという。
 出来た本は電子書籍オンデマンド出版(受注生産)なので、一般のリアル書店に並ぶことはまずなく、例え1冊しか売れなくても在庫が出ない仕組みになっている。
 まぁ、フィリップ氏の本をまとめたコーナーを作るとしたら書店も図書館も大迷惑だと思うけど(苦笑)。

 で…なんでこのフィリップ氏の話を出したかと言うと【同じ匂い】を堀江貴文さんの新刊に感じたからだ。

 こちらの書籍は今月11日に出たばかりの新作
 (Amazonに書かれていた)書籍の内容を紹介すると…

●買えるモノはすべて買え。
●メールに礼儀不要。「ひと言で即レス」だ。
●結婚しても女の子と遊び続ける。
●500円ランチしているヤツに人は集まらない。
あまたの事業を成功させてきた男、堀江貴文。 実現できたのは、莫大な資金や、特殊な才能があったからではない。 ただ、好きなことに「没頭」してきたからだ!
あえてレールから外れよ。 3歳児の気持ちで、のめり込め。 常識とか世間体なんか、ぜんぶ無視だ。
「自分の人生を取り戻す」ための、41の行動スキルを伝授する。 ホリエモン流「生き方改革」の決定版!

 とのこと。
 で、先日書店へ行った時に見つけたので現物を手に取って軽く中身を見てみたら…

「……なんか、ほとんどどこかで見聞きしたことある内容な気がするが?」

 というのが第1の感想。
 Amazonの内容説明欄にもある「3歳児の気持ちで…」というのも、別の書籍で「永遠の3歳児たれ」という見出しを見たことある。
 職人の修行(下働き)不要の話も、それこそ1冊の本になっちゃっているし。

 もともと、堀江さんはライブドア時代の頃からベンチマークしていた。
 「時代の寵児と言われている人だ。この人の生き方には何か俺の役に立つヒントがありそうだ」と、出版されるビジネス書を(宇宙ネタと薄〜いコラボとコンビニまとめ本以外)ほとんど買い揃えてきた。

 ところが近年に出版している書籍の内容を見ると、書かれていることが似通ってきていることに気付く。
 ミュージシャンで言うところの『ベスト盤』で、過去のヒット曲に新譜が1〜2曲のみ追加されている…そんなCDアルバムが発売されたみたいな感じ。
 医療とかの異業種コラボ本はともかく、唯一「あっ、これは違う」って感じたのは『東京改造計画』ぐらいかも。

 これは「ホリエモン、東京都知事選に出馬するの? しないの?」と噂されていた時に「公約」みたいな形で出版された書籍。
 「俺なら東京をこう改造していく!」というマニフェストのような提言が詰まっており、堀江さんのお得意分野である「お金」「礼儀」「仕事」みたいなところから少し離れていたので新鮮な内容であった。

 しかし『非常識に生きる』では、再び「貯金」「自粛」「礼儀」など、今まで散々述べてきた分野にだったため、話す内容がそれまでに語ってきたことと似通ってきてしまうように見えた。

 パラパラとめくって中身を確認した結果、全部読破して「今回はここの部分が追加されていたな!」と”ファン”に徹するお金と時間がもったいなく思えたため…今回は購入を辞退することに。

 この書籍、堀江さんを担当する編集者が「次は何をテーマにします?」と尋ね、どのような経緯を経てこのテーマに決定したのか…詳細は分からない。
 しかし、個人的には…

A : 職人に下働きは要らない
B : 大学は必要ない
C : スマホ1台で仕事出来る
D : 成功するまで粘ったから成功出来た
E : ……
F : ……

 みたいに【堀江貴文の考え方】が複数ラベリングされていて、今回は「仕事」がテーマだからAとDとWを入れ込んで…次は「教育」だからBとGを入れ込むか、みたいな感じで

テーマの組み合わせの妙技(アルゴリズム)

 で書籍が作られ、出版されているように感じている。
 ラベルの取り出し方次第と組み合わせ次第で無限に本が増産されていくわけだ。
 ゆえに、フィリップ・M・パーカー氏の本の作り方と似ているな…と思ってしまったわけで。
 ”言っていること”はあまりアップデートされていないまま。
 過去、SNSや別の本で言っていたことを単語の順番とキャッチコピーだけ変えて新刊に落とし込んでいるように見えた。

 もちろん、堀江さんは膨大な量の情報と体験をインプットし、それをオンラインサロンのメンバーにアウトプットし続けているのは知ってる。
 だが、その「再現性」みたいなベクトルが俺の求めているものとは違う方向に向き始めていると、最近は感じている。
 俺、フランチャイズ店を作ってカレーパンを売るつもりないし、堀江さんが磨いた高級和牛を買うつもりもないし、スノボもやる予定は無い。
 宇宙に賭ける思いを共有するつもりもないし。

 エンタメとしては、カルロス・ゴーン氏にインタビューを決行したのが「スゲー!」と思ったぐらいかな…最近では。
 あとは「ITひじかた」でおなじみ、寺田有希さんの成長具合をYouTubeチャンネルで見るっていう(笑)。

 そういう意味では、最近は『西野亮廣エンタメ研究所』の方が参考になるな…。
 顧客とファンの違いを説明していたり、作品を売らずストーリーを売るという時代に合ったコンテンツビジネス論を話していたり。
 まだソチラの方が自分の職業に落とし込める再現性がある。

 堀江さんがライブドアを買収して…『指名手配』で番組のホームページ(視聴者による投稿のシステム)を作ってもらったあたりから見てきたけど、そろそろ堀江さんを卒業する時期なのかも。

 俺がオヤジになる前に…

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