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機械仕掛けのコウノトリ

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【あなたの注ぐ愛は、子どもへの愛ですか?それともただの毒ですか?】 「優しさと自由は、時に残酷な未来を現実として人に叩きつけることがある」 次世代育成への注視と児童虐待の増加…
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#小説

左手に金の滝が打つ 14

第1話前話 齢一六にして真っ赤な絨毯の上を歩くことに慣れてしまったのは、自分でもいかがな…

しゅん
2年前
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機械仕掛けのコウノトリ 1

 赤子の声が聞こえた。 この場所で起こり得るはずはないと知りながら、私の耳には確かにその…

しゅん
2年前
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機械仕掛けのコウノトリ 2

前話 「明美さん。これ今日中にお願い」 上司が私の机に書類の束を投げ置いた。 その行為は…

しゅん
2年前
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機械仕掛けのコウノトリ 3

第1話前話  昼食は毎回一人で取ることにしていた。 以前は同僚と共にしていたが、今では相…

しゅん
2年前
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機械仕掛けのコウノトリ 4

第1話前話 そこそこ勉強をして、そこそこの高校に行って、そこそこの大学に行って、そこそこ…

しゅん
2年前
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機械仕掛けのコウノトリ 5

第1話前話 私たちにとって、種の保存という本能ですら、もはや政府の管理下に置かれている。…

しゅん
2年前
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機械仕掛けのコウノトリ 6

第1話前話 昔、祖母に聞いた話では、この法案が国会で通った時、大きな暴動やデモが起きたのだそうだ。 その姿は居もしない子供を守ろうと威嚇する想像の怪物であり、そこに参加するほとんどが自分のやっていることの意味を理解していない顔に見えたそうだ。 そして、彼ら彼女らを行動に起こすまで突き動かした理由はとてもシンプルで、持っていた自由を奪われることへの怒りだった。 それは生後二、三歳の子供が自分のおもちゃを取られて泣き叫ぶ本能と同じで、逆にその頭の悪さが政府にとっては法案の成

機械仕掛けのコウノトリ 7

 祖母自身はどう思っているのか?と私はその時聞いてみた。 返ってきた答えは 「抵抗感は確…

しゅん
2年前
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機械仕掛けのコウノトリ 8

当時の私にはこの言葉を理解することはできなかったが、それがとても大掛かりな響きに思えて、…

しゅん
2年前
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機械仕掛けのコウノトリ 9

 どれだけ仕事で疲れていようが、休日は必ず外出することにしている。 出来れば丸一日。二十…

しゅん
2年前
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機械仕掛けのコウノトリ 10

 私の後ろのテーブルに新しく女性が二人で座り、話を始めた。 その声だけがソロパートになっ…

しゅん
2年前

機械仕掛けのコウノトリ 11

「いやいや逆よ。逆。和也はそんな気全然ないから、今年中にプロポーズしてこなかったらもう一…

しゅん
2年前

機械仕掛けのコウノトリ 12

私には彼女たちが答えを探しているようには見えず、それはおろか本当に悩んでいるのかさえ疑問…

しゅん
2年前

機械仕掛けのコウノトリ 14

 アスファルトの整った平らな地面は不格好になだらかな凸凹の土に変わり、一歩足を進めるごとにその道は削れてゆく。 私が無数に踏みつけた砂はもう一粒でさえこの場所にはないのだろう。 と、かすかに残る理性は注意を促す。 それでも、私はなぜだか止まることはなかった。 少しだけ光の当たるベンチに腰をかける。 たった一つの街灯に得体の知れない虫が群がっている。 それは見たことのない景色だった。 光に惹かれて進むもそれは熱く焼かれた光のガラスに阻まれている。 何度ももがく羽音