デジタル教科書の要件に関する考察

はじめに

2022/1/24 に、デジタル教科書の要件に関する資料の提供お願いの旨の内容が公開されていました。
デジタル教科書についてシステム的な観点から共通化することを目的としています。

基本的な機能を備えたデジタル教科書の要件に関する資料提供

※リンク切れになっている場合は、
トップ > 教育 > 小学校、中学校、高等学校 > 教科書 > デジタル教科書
とたどると、たどり着けるかと思いますのでお試しください。

関連して、以下のデジタル教科書に関するガイドラインが記載された資料も公開されています。

学習者用デジタル教科書の効果的な活用の在り方等に関するガイドライン (PDF)

上記 2 つの資料から、デジタル教科書について、システム的な側面から考察しました。

内容

デジタル教科書に関するガイドラインを見ると、紙の教科書と同一の内容であることとするものの、紙の教科書を補助するものとしての位置づけとなっています。

また、p10 「(2)学習者用デジタル教科書・学習者用デジタル教材の主な学習方法等の例」やp12「(3)学習者用デジタル教科書の活用方法の例」の内容を鑑みると、デジタル教科書の利用場面は以下が想定されています。

・デジタル教科書に様々な書き込みを何度も繰り返して、試行錯誤する
・様々な種類のデジタル教科書の紙面を組み合わせて関連性を作り、情報を自分で書き込む
・デジタル教科書の写真や挿絵、地図、グラフなどを拡大して様々な角度から調べる。
・様々な種類のデジタル教科書の紙面を組み合わせて学習を行う
・グループ学習の際に、同じページに異なる様々な意見を書き込んで比較することができる。
 ⇒必要に応じてデジタル教科書に書き込みを行って自分で発表したり、他の人との比較ができる。
・文字読み上げ機能がある場合、音声学習が可能となる。

このように、紙の教科書では難しかった「何回も情報を書き込む」ことで学習をもっとやりやすくしていこうというものになっています。

そして、「基本的な機能を備えたデジタル教科書の要件に関する資料提供」のページでは要件のイメージとして 6 つが記載されています。

(抜粋)
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【要件を定義するデジタル教科書のイメージ】
 ・教科書の版下データ(PDF形式等)から容易に作成可能(作成コストが低廉)...(1)
 ・GIGA端末(※)の汎用ブラウザ(Chrome/Firefox/Safari/Edge)で閲覧できる...(2)
 ・シングルサインオン機能や仕様の統一化等により学習者の利便性の向上に資する...(3)
 ・データ保存場所(LRS:ラーニングレコードストア)に学習履歴等を保存でき、活用が可能...(4)
 ・市販されているデジタル教科書が有する基本的な機能(本文や図版の拡大、書き込み、ページめくり等の機能)を備えている...(5)
 ・クラウドベースの配信でもネットワーク負荷が大きくない...(6)
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考察

特に気になった (1), (4), (5), (6) について考察しました。

(1) は PDF 形式の教科書データから容易にデジタル教科書を作成できるようにするというものです。
PDF からデジタル教科書に変換できるようなプログラムが開発されれば問題なさそうです。
Word や Excel を PDF に変換したり、その逆もできるので、まったくできないものではないと考えています。

(4) は、ページごとの閲覧頻度や時間、書き込み状況を保存して、興味を持っている分野や苦手な分野が解析できるようなデータを保存・蓄積するというものかと思います。
何らかの形(ローカルのデータベースや CSV ファイルなど)で保存する必要がありますが、できるのではと考えます。

(5) は、ページへの自由書き込みができ、拡大表示などができるというものです。
実際に書き込めるデジタル教材を出している出版社がありましたので、特に問題なさそうです。

問題は (6) です。この項目は、ネットワーク負荷が大きくならないようなものであるというものです。
しかし、学校や家庭で利用する無線LAN は大容量回線ではないことが想定されるため、負荷がどのくらいになるかは実際に使ってみないと分からないものとなります。(実際は高負荷になる可能性大)

また、デジタル教科書に図や挿絵があること、(4), (5) を鑑みると、データ通信量が大きくなることが容易に想像できます。

考えてみた結果、以下のように使用する必要があるという結論(私見です)に至りました。

・クラウド上のデジタル教科書を児童が見に行くのではなく、ローカルに落として閲覧する。
・書き込んだデータの情報、学習履歴といったデータは、いったんローカルに自動保存する。
 ⇒手動だと保存を忘れることがありますし、充電が途中でなくなる可能性もあることから、自動保存がよいと考えます。
・児童の端末からクラウド上への保存は、無線のデータ通信量や負荷状況からシステム的に任意のタイミングでアップロードするようにする。
 ⇒システム的に適切なタイミングでアップロードできれば、ネットワークに大きな負荷をかけることはそうそうないと思います。
  元データはローカルにあるので、アップロードが途中で失敗しても心配はありません。

まとめ

デジタル教科書への書き込みができるようになることで、デジタル教科書での学習においてこれまで以上に思考を深めることができるようになることが狙いではないかと考えています。

ただ、無線LAN の性能がボトルネックになる可能性は高いので、高性能化を図ったり、高性能でなくても高負荷になりにくい仕組みを実装する必要がありそうです。

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